Sightsong

自縄自縛日記

ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン@バーバー富士

2017-07-25 22:52:26 | アヴァンギャルド・ジャズ

上尾市のバーバー富士に足を運び、ミシェル・ドネダとレ・クアン・ニンとのデュオを観る(2017/7/24)。何しろこのふたりの最後の演奏機会であり、遠いなどと言ってはいられないのだ。齋藤徹さんは大事を取って残念ながら不参加。

玄関からふたりが入り、ご主人の松本さんがシャッターを下ろす。ドネダさんはすかさず「いま火事がおきたら全員」と突っ込んでいる。

Michel Doneda (ss)
Le Quan Ninh (perc)

いきなりドネダが風になる。程なくしてニンは掌で円環、ドネダは循環呼吸でシンクロするが、それは崩れ止まる。アーチ状のふたりの音。

ふたりは破裂し、急に切り裂く。そしてニンの金属板による曲った音に対し、ドネダは逸脱。ニンが(珍しく)叩き、ドネダは叩くように吹く。このシンクロによりうなりが生じる。ドネダ急停止。

ニンは松ぼっくりを太鼓の上で転がし、ドネダは微分的な音を発する。ふたりの転がり、ニンの軋み、ドネダの濁り。静寂。泡立ち。

ドネダはソプラノを大きく旋回させた。そして大きな呼吸のように動と静を組み合わせた。ニンのシンバルによる苛烈、ドネダの破滅。ニンがシンバルと太鼓とを近づけて共鳴させることによって、音が連続的につながってゆき、さらに、シンバルの擦り、サックスの循環が連なる。ニンは小動物に化けてリズムを発し、ドネダは激しい微分音や、サックスを取り換えてボールをミュートとして電子音のような音を放つ。

ドネダはマウスピースを外してバードコールを装着したり、横笛のように吹いたりし、一方のニンも擦り擦る。ドネダの音には、まるでラジオの向こうから聞えてくるようなものも、震える魅力的な倍音もある。このときドネダはノイズにより、ニンは残響により、共有する意思にそれぞれ近づいていくように思えた。それは大いなる響きへと昇華してゆく。

ニンが豆を太鼓の上で跳躍させ、ドネダも音を散らした。収束。

今回の演奏は、すべてがシンクロし、デュオであることの必然性が明らかなものとして、眼前で繰り広げられた。

演奏後、打ち上げがあった(ごちそうさまでした)。せっかくなのでふたりにサインを貰ったところ、最初にニンさんが妙に丁寧に書き、次にドネダさんが書いているとニンさんが横から気合を入れ、スピード感が表現された。

ニンさんに、松ぼっくりについて訊いてみたところ、自宅の庭で取った、でも大きいものも必要だからフランスの西岸で拾ってきて蓄えてあるんだ、と。なんでも、ポレポレ座にも2個飾っているという。

ドネダさんには、2本のソプラノの違いについて訊いた。片方は、1927年アメリカ製(メーカーはよくわからなかった)。何とC管(現代のソプラノサックスはB♭管)。ボールを朝顔に詰めているのは、ああいう音が好きなんだ、と。マウスピースも2種類、片方は特注で作ってもらったという。また、片方にはリードを短めに装着して多彩な音が出るように訓練したそうである。

前日訊いて気になっていたことは、デイヴ・リーブマンとの共演。NYのCornelia Street Cafeにおいて、中谷達也、そしてドネダ、リーブマン、サム・ニューサムのソプラノ3人。あとで探してみるとなるほどあった。2015年12月20日、この日にコーネリアに居たかった。

>> Soprano Saxophone Colossus @ Cornelia Street Cafe 12-20-15 1/2

>> Soprano Saxophone Colossus @ Cornelia Street Cafe 12-20-15 2/2

打ち上げは次第にヒートアップし爆笑の渦。名残惜しいが遠いので、またすぐに来日してほしいと伝えて帰った。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●ミシェル・ドネダ
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+今井和雄@東松戸・旧齋藤邸(2017年)
ミシェル・ドネダ『Everybody Digs Michel Doneda』(2013年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
ロル・コクスヒル+ミシェル・ドネダ『Sitting on Your Stairs』(2011年)
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ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
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ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ミシェル・ドネダ『OGOOUE-OGOWAY』(1994年)
バール・フィリップス(Barre's Trio)『no pieces』(1992年)
ミシェル・ドネダ+エルヴィン・ジョーンズ(1991-92年)

●レ・クアン・ニン
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+今井和雄@東松戸・旧齋藤邸(2017年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)


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