Sightsong

自縄自縛日記

ユージン・チャドボーン『The Lost Eddie Chatterbox Session』

2017-11-23 22:28:29 | アヴァンギャルド・ジャズ

ユージン・チャドボーン『The Lost Eddie Chatterbox Session』(Corvett vs. Dempsey、1977年)を聴く。

Eugene Chadbourne (g)

1977年に録音されたギターソロであり、88年にカセットテープでのみ出されたという代物。

ジャズスタンダードの短い演奏を中心に30曲が収録されている。数えてみるとセロニアス・モンクが12曲、チャーリー・パーカーが3曲、デューク・エリントン、オーネット・コールマン、ジョン・コルトレーンが各1曲。ほかにも「As Time Goes by」とか「Smoke Gets in Your Eyes」のスタンダード。あとは自分のオリジナルである。

圧倒的にモンク曲であり、変態=天才は変態=天才を好むというところか。そのモンク曲にしても、「Brilliant Corners」、「Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are」とか飛び切りヘンな曲、しかも前者では「'Round Midnight」、後者では「Blue Monk」に化けていたりして壁がない。

演奏はもちろんゆがみよじくれ時間が飛ぶ。さすがチャドボーン。メアリー・ハルヴァーソンの先達としてチャドボーンを位置づけてみる。

●ユージン・チャドボーン
ハン・ベニンク+ユージン・チャドボーン『21 Years Later』(2000年)


スティーヴン・ガウチ(Basso Continuo)『Nidihiyasana』

2017-11-23 20:27:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

スティーヴン・ガウチ『Nidihiyasana』(clean feed、2007年)を聴く。グループ「Basso Continuo」による。

Stephen Gauci (ts)
Nate Wooley (tp)
Mike Bisio (b)
Ingebrict Haaker Flaten (b)

強力なコントラバス奏者ふたりを擁している点がまずはサウンドに大きな影響を与えている。定常的なビートにより構造を作り出すマイケル・ビシオ、より弦をはじくときの一音の強さがありその分ノイズも大きいインゲブリグト・ホーケル・フラーテン。左右で聴き分けているつもりが領域侵犯も頻繁にあり、ときおりどちらの音かわからなくなる。1曲目でノイズとともに「Someone to Watch over Me」を引用したのはフラーテンか。

ネイト・ウーリーは意外にもがっぷり四つに組んで熱くトランペットを吹いている。そして、ここでもスティーヴン・ガウチはさまざまな貌を見せる。

ガウチはなかなか一筋縄ではいかないカメレオンぶりであり、それでこそ、ブルックリンのBushwick Public Houseで毎週錚々たるインプロヴァイザーを呼んでセッションを続けられているのかもしれない。本盤が録音された場所はDowntown Music Galleryであり、やはり毎週CD棚をずらしては即興のギグを行っている。演奏の力は場の力でもある。

●スティーヴン・ガウチ
Bushwick improvised Music series @ Bushwick Public House(2017年)
スティーヴン・ガウチ+クリス・デイヴィス+マイケル・ビシオ『Three』(2008年)


スティーヴン・ガウチ+クリス・デイヴィス+マイケル・ビシオ『Three』

2017-11-23 10:01:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

スティーヴン・ガウチ+クリス・デイヴィス+マイケル・ビシオ『Three』(clean feed、2008年)を聴く。

Stephen Gauci (ts)
Kris Davis (p)
Michael Bisio (b)

先日はじめて観たスティーヴン・ガウチのテナープレイは、ひたすらに高音で攻め続けてサウンドのテンションを持ち上げるというものだった。ここでは少し違い、音域も音の長さも幅広く使っている。ちょっとエヴァン・パーカーを思わせるところがあり意外。

サウンド全体への貢献ということでいえば、ガウチは前面のトリックスター的であり、強度を創出するクリス・デイヴィスとマイケル・ビシオに威圧される。ビシオはコントラバスの細かな音を積み重ねることで構造を作っている。一方デイヴィスは構造を所与のものとして、というか、構造に自ら組み込まれて執拗に鍵盤を叩いている。いやこれは凄いな。

●スティーヴン・ガウチ
Bushwick improvised Music series @ Bushwick Public House(2017年)

●クリス・デイヴィス
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)(レイニー参加)
マックス・ジョンソン『In the West』(JazzTokyo)(2014年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
トム・レイニー『Obbligato』(2013年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、2012年)

●マイケル・ビシオ
トーマス・ヘルトン+マイケル・ビシオ@Downtown Music Gallery(2017年)
マシュー・シップ『Piano Song』
(2016年)
ルイ・ベロジナス『Tiresias』(2008年)

 


鳥の未来のための螺旋の試み@ひかりのうま

2017-11-23 09:05:45 | アヴァンギャルド・ジャズ

大久保のひかりのうまに足を運び、4夜連続「鳥の未来のための螺旋の試み」、第2夜(2017/11/21)。笛のベルナデット・ツァイリンガー(オーストリア)、ギターのディエゴ・ムーン(アルゼンチン)、コントラバスのMaresukeの3名によるツアーでもある。

 

1.
鈴木ちほ (bandoneon)
Maresuke (b)
Margatica (朗読)

2.
Bernadette Zeilinger (笛)
Diego Mune (g)

ツァイリンガーは大きな縦笛を横笛のように使い、声を吹き込む。ムーンのギターはいきなり独特なものであり、鳥の翼のように手を使って大きなタッピングを行う。次にエフェクターを使い、小さなハコの中であるかのように反響させる(実際にそうなのだが)。またキーボードのような音を創ったりもして飽きない。透明感、抽象的な抒情、突然の破壊の欲求が混在している。

3.
Bernadette Zeilinger (笛)
森順治 (as, fl)
鈴木ちほ (bandoneon)

笛とサックスの息遣いと、バンドネオンの蛇腹による風とがまずは同じ流れを作り出す。ちほさんの、途中の振幅によりバンドネオンの中にとどめておけないように漏れ出てくる音が印象的だった。

4.
橋本英樹 (tp)
Diego Mune (g)
Maresuke (b)

コントラバスとギターとが現に弓や棒をはさみ、音を同調させる。ここに刺激剤として介入する橋本さんのトランペット。Maresukeさんのコントラバスは、楽器ごと音を自分のほうに引き寄せるという面白さがあるのかな。ムーンがギターをこすり、まるでガラスコップ演奏のような効果を出した。

5.
JanMah 嶋村泰 (g)
Diego Mune (g)

変態的アクティヴなギターデュオ。これは素晴らしかった。みんな興奮しながら聴いていたが、それは演奏者ふたりもそうだったようで、終わってからがっちりと握手を交わしていた。

6.
森下雄介 (tp)
橋本英樹 (tp)
Bernadette Zeilinger (笛)

まるで突っつきあうような分散型サウンド。敢えて凝集を選ばず分散のまま最後まで走る面白さがあった。

7.
Miki Hasegawa (p)
森順治 (bcl, fl)
鈴木ちほ (bandoneon)

森さんのバスクラには、シームレスに横に広がるアルトとはまた違った魅力があって、音が核を作って耳に食い込んでくる。しばらく三者とも模索を続けていたが、後半になり、ピアノがリズムを取り主導権を握った。曲に収斂してゆく過程も面白いものである。

8.
Maresuke (b)
Bernadette Zeilinger (笛)
Diego Mune (g)

ようやくツアーの主役によるトリオ。Maresukeさんは実に柔らかい弓でコントラバスを鳴らしていたのだが、ほどなくして、それを1本の繊維に絞り、震えて切れそうで切れない音を創出した。ムーンさんもギターの弦を指で持ち上げそれに応じた。

ところでMaresukeさんはFMRからCDを出すそうである。どのように独特さが録音されているのか興味津々。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●Maresuke
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)

●鈴木ちほ
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)
りら@七針(2017年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年) 

●森順治
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
松風M.A.S.H.@なってるハウス(2017年)
林ライガ vs. のなか悟空@なってるハウス(2017年)
リアル・タイム・オーケストレイション@Ftarri(2016年)
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO(2016年)
本多滋世@阿佐ヶ谷天(2016年)
M.A.S.H.@七針(2016年)
森順治+橋本英樹@Ftarri(2016年)
M.A.S.H.@七針(2015年)

●橋本英樹
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
M.A.S.H.@七針(2016年)
森順治+橋本英樹@Ftarri(2016年)
M.A.S.H.@七針(2015年)