Sightsong

自縄自縛日記

キム・ソンス『アシュラ』

2017-03-26 23:51:02 | 韓国・朝鮮

エドワード・ヤン『クーリンチェ少年殺人事件』を目当てに出かけたのだが、1時間前なのに早々と満員御礼。どうでもよくなって、同じ新宿武蔵野館にて、キム・ソンス『アシュラ』(2016年)を観る。

不正まみれの市長一派と、かれの悪事を暴こうとする検事一派との激しい抗争物語。暴力描写がひどすぎてもうウンザリだ。

それはそれとして、俳優陣はなかなか。主役の暴力刑事チョン・ウソンは、『グッド・バッド・ウィアード』や『レイン・オブ・アサシン』のイケメンよりもこのくらいの汚れ役のほうがスクリーンに映える。検事役のクァク・ドウォンは『弁護人』の軍人と同様にひたすら憎たらしい。

よく考えたらバイオレンス物は苦手なのだった。


ヨハネス・バウアー+ペーター・ブロッツマン『Blue City』

2017-03-26 09:27:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

ヨハネス・バウアー+ペーター・ブロッツマン『Blue City』(Trost、1997年)を聴く。

Peter Brotzmann (tarogato, as, ts, b-flat cl)
Johannes Bauer (tb)

1997年、大阪でのライヴ録音。同じ年の来日時に、御茶ノ水のディスクユニオンの売り場の上、たぶん4階でのインストアライヴを観た。(いまのJazz Tokyoとは違い、駿河台下に通じる坂の途中・明大の向かい側にあった。ロリンズの『Saxophone Colossus』が大きな看板になっていた。)

当時は「ブレッツマン」表記も多く(Brotzmannの「o」にウムラウトが付いているため)、チラシもそうだったような気がする。

ブロッツマンのCDを聴いてはいたがナマで観るのははじめて、ヨハネス・バウアーにいたっては名前も初耳という状況。よくわからずそこに行き、ヨーロッパのエネルギー・ミュージックに圧倒されてしまった。実は地獄の一丁目だったのかもしれぬ。

本盤を聴きながら、20年前の記録であってもその魅力はまったく失われていないと感じる。バウアーは顔を真っ赤にしてひたすら愉しそうにトロンボーンを吹き、かれを動だとすれば、静のブロッツマンはわけのわからないカオティックな辻説法。何が驚いたかと言えば、かたちの整備への拘泥や、感情の吐露に対するバリアといったものを、かれらが、ものの見事に棄て去っていることなのだった。

ところで、本盤の音源テープは、ブロッツマンの「カオス・ボックス」から、日付と場所とが付された形で偶然見つかったそうである。ディスクユニオンの演奏も、誰かがヴィデオカメラで撮っていた記憶がある。それも「カオス・ボックス」にはないか。

●ヨハネス・バウアー
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』(2011年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』
(2008年)

●ペーター・ブロッツマン
ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男@新宿ピットイン(2014年)
ペーター・ブロッツマン@新宿ピットイン(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』(2011年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』(2011年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
バーグマン+ブロッツマン+シリル『Exhilaration』(1996年)
『Vier Tiere』(1994年)
ペーター・ブロッツマン+羽野昌二+山内テツ+郷津晴彦『Dare Devil』(1991年)
ペーター・ブロッツマン+フレッド・ホプキンス+ラシッド・アリ『Songlines』(1991年)
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
『BROTZM/FMPのレコードジャケット 1969-1989』
ペーター・ブロッツマン
セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(1979-86年) 


ポール・ボウルズ『孤独の洗礼/無の近傍』

2017-03-26 08:37:44 | 中東・アフリカ

ポール・ボウルズ『孤独の洗礼/無の近傍』(白水社、原著1957、63、72、81年)を読む。

これはボウルズが中東・北アフリカを旅し、移り住んだときに書かれたエッセイである。スリランカの記録もある。

当時(1950年代)、ボウルズはアメリカで予算を得て、モロッコ音楽の録音収集を行うという仕事を遂行していた。実はそれは簡単なことではなかったことがわかる。目当ての村にたどり着いてみても交流の電気がない。モロッコ政府の許可が得られない。すさまじくひどい宿。民族音楽を近代化の敵のように扱う官僚。ボウルズの活動の成果は『Music of Morocco』という4枚組CD・解説という立派な形となっているのだが、その価値は思った以上に大きなものだった。

サハラ砂漠という孤絶の地について、詩的とも言える文章で綴った「孤独の洗礼」は特に素晴らしい。

「ほかのどんな環境も、絶対的なものの真ん中にいるという最高の満足感を与えてはくれない。どんなに安楽な暮らしと金を失っても、旅行者はどうしてもここに戻ってくる。絶対には値段がないのだから。」

●参照
ポール・ボウルズが採集したモロッコ音楽集『Music of Morocco』
(1959年)


川下直広カルテット@なってるハウス

2017-03-26 08:00:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウスにて、川下直広カルテット(2017/3/26)。

Naohiro Kawashita 川下直広 (ts, harmonica)
Daisuke Fuwa 不破大輔 (b)
Futoshi Okamura 岡村太 (ds)
Koichi Yamaguchi 山口コーイチ (p)

「What a Wonderful World」からはじまる発酵食品のような2ステージ。チャーリー・ヘイデンの「First Song」での悠然としたブロウに聴き惚れてしまった。「The End of the World」のテナーも、「生活の柄」のハーモニカも素晴らしかった。

この日はJOEさんzu-jaさんとジャズ馬鹿話で盛り上がりながら一緒に観たのだが、皆口をそろえて、山口コーイチさんのピアノが異色でひたすら面白い、と。確かに4ビートのリズムで並走するというよりも、大きな円環を描きながらスピルアウトし、要所要所で合流してくるような・・・。石垣の仲宗根“サンデー”哲の太鼓を観て、山下洋輔がまるでエルヴィン・ジョーンズだと仰天したという話を思い出した。

●川下直広
川下直広@ナベサン(2016年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2016年)
渡辺勝+川下直広@なってるハウス(2015年)
川下直広『漂浪者の肖像』(2005年)
『RAdIO』(1996, 99年)
『RAdIO』カセットテープ版(1994年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(1988年)