始末書を幾度書いたか向う傷
退院をするスリッパは捨ててゆく
密約を食べて素知らぬシュレッダー
不満分子へ札束の鍵がある
あほらしい下戸な私が後始末
始末書を チャチャッと書ける ようになり
春の乱 無事に過ぎたら 後始末
華やかにあげた花火の後始末
ふるさとに遺る空き家の後始末
だまってする男料理の後始末
始末書の文字を社長に褒められる
悪戯が過ぎて後悔後始末
実印が拍子抜けする後始末
お茶がらの始末で今日を締めくくる
始末書で叱る社長の思いやり
石
龍安寺どの石ももの言いたそう
転がったとこに住みつく石一つ
ちぐはぐな個性で石が光りだす
いい雨が石の上にも降っている
千年を生きて漬物石と成り
晴れの日へじっと耐えてる土台石
石仏の壁 一介の僧で生き
花咲かす明日へ励む石を積む
石蹴って青のシグナル踏み切れず
夕日背に石もときどき偽装する
おじいさんが逝った庭石たいくつだ
叩いたら石橋割れて水の中
石頭川柳つくりやわらげる
華やかな時がなつかし薬指
石臼も老舗の蕎麦というリズム
原石を探す真夏の甲子園
石一つたった一つで禅の庭
渇き切る喉にゴクリと石清水
登山道命をもらう石清水
家族とはこんなものさと石をける
下積みの石を捨て石にはしない
石臼を飾って店の格を上げ
あめはだめ後に引けない石頭
ご利益へ石段這って奥の院
古代ロマン化石は詩人かもしれぬ
ひめゆりの涙化石にしてならぬ
抱き合ったままで化石になるもいい
身構えて落石注意無事通貨
大雨警報落石注意梅雨最中
砕石場発破合図に人が散る
やわらかい言葉で石も割れました
政治家の襟を正した戒石銘
子のために敷石となる父の汗
仏にも神にも見える丸い石
石仏秋風ふいて回帰する
もうよそう届かぬ石を投げるのは
捨石が効いて地獄を見ずにすみ
三陸で拾った石は文鎮に
石で打つ釘は掠れた音がする
シナリオは無いが打開の石を積む
宝石も拾ったバードウォッチング
躓いた石を積み上げあと一里
意地通す花は石をも割って咲く
母の海抱かれて石も丸くなる
転んでも蹴っても丸くならぬ石
棚田から化石のような息が漏れ
石が音を上げるまで打つ雨雫
少しづつまあるくなって老いる石
土葬がいい化石になれるかも知れぬ
超ミニに見惚れて石に蹴つまづき
たくし上げ両の掌に盛る石清水
気(十四字詩)
(あまりにも多いので、空気、電気、元気などはほとんどカットしました。)
水仙のアピール気品ある香り
まだ燃える意気地が終章遠ざける
茶摘みごろ気の向くままの旅に出る
綿入れに快気祈った介護の日
一杯のお茶に元気をもらう朝
暑気払いこれでと投げた皮財布
向日葵と熱気を競う蝉時雨
時過ぎてもパンダ人気かげりなし
なでしこの花が被災地勇気付け
横槍が入り会議の乱気流
世話女房気配り過ぎて気が重い
ユニクロで少し気取っているくらし
湯豆腐の湯気が話の穂を繋ぎ
風は気配木枯らしもそよ風も
どぎまぎの気配善人なのだろう
書初めも意気込む腕に向かい風
信号は三色四つ目は気持
女医さんと聞いて行く気になった祖父
生きがいを求め気ままな暮らし向き
ぼちぼちの余生気楽な方選ぶ
十指みな覇気が漲る手話の冴え
脂気も粘り気もありまだ八十路
遺言に父の夢継ぐ子の気迫
胃薬を飲んで承諾する弱気
スケジュール母の気合いが埋めてある
細かいこと言うなと土佐の男意気
無邪気さを装っている水中花
素っ気無いレシピで生きる血糖値
気配りはとうに忘れた皮下脂肪
気障な奴へびのベルトでめかしこみ
気取らずに吞めて喋れる友がいい
気配りをいつも忘れぬ妻と居る
朝靄の峰から英気享受する
茶柱で気合の入る朝の靴
まだ生きる気力一枚葉を残し
気晴らしに立つ屋上に緑地あり
気くばりは万全で靴下の穴
気苦労を避けてゆったり家に居る
気前よくみやげを買って旅疲れ
集中
優子さん 集中砲火 浴びててね
三方良し 集中緩和 西栄え
頭の体操 集中ちゅう 耳にカギ
組んだ腕 肘に意識は 集中し
集中力欠けたところで赤い月
*句の中に集中という単語が入った句は少ないので、ある意味チャンスかも)
太い
遅咲きの花です根っ子から太る
苦言そのまま消化吸収して太る
骨太で昭和を生きた父の傘
頼られていよいよ太くなる大樹
激流へさおさす父の太い眉
農に生き土を愛した太い指
イケメンも良いが太めも温かい
まだ太る元気があって高齢者
骨太の指が自慢の耕耘機
大空へあなたが好きと太く描く
螺旋を描く象と出会って太くかく
がんばれよたった一言太い文字
逆境に耐えた背骨は太くなる
パソコンの進化へ拗ねる太い指
勝った日の対戦記録太く書く
金づるの太いパイプが駄々こねる
人間の幹を苦労が太くする
口笛を吹く少年の太い眉
達人は静かで太いなと思う
シルエットだけから言えば狢です
お寺さんと太いパイプを持っている
悲しみをいっぱい抱いて太ってる
太巻きの寿司の具でいるいい仲間
その中の一字が太い通り雨