「川柳歳事記」

なかだるみ
なかだるみした綱引きが引っ張られ
好きなようにせよと夫婦のなかだるみ
米寿祝う何度かあったなかだるみ

「川柳歳事記」

どくどく
二死満塁チャンスへ打者の血が滾る
乳搾り手の感触の至福感
車座へ一升瓶がヨイショする

「川柳歳事記」

電気
真夜中にふと目を合わす常夜灯
戦争に負けて電灯パッと点く
八十五歳ゲートボールで充電す

「老いて新鮮」松ひさし

勉強手当
半分の五千円は自由に使える
あとの半分は使い道が勉強に必要なことに限られる
ぼくは勉強手当と言っている
勉強手当は使い道を示す資料や領収書がないと
次の月に手当の額が減らされる

勉強手当はほしいけれど面倒だ
資料や領収書が手に入らないと
自分でつくってごまかしたくなる
おとなたちも役所や会社の手当の使い道のことで苦労があるらしい
先輩に相談する　史跡の見学に出かけることなどは
ぼくが勉強に必要なことと思っても
お父さんやお母さんはそう思わないことが多い

お父さんが言う
小遣いは勉強のことに全部使ってもいいが
遊ぶことばかりに使うのはいけない　しかし
勉強に必要なことかどうかは本人の考え次第になったり
領収書を得られない場合があってもむずかしいね
小遣いの半分は今までどうり勉強に役立てることとするが
領収書は無くてもいいことにしようか
お母さんが言う
小遣いを勉強のことに使わないで
遊びにばかり使うようにならないか心配です
ぼくが言う
小遣いはぼくよりうんと多い友達も少ない友達もいる
勉強をよくする友達も遊んでばかりの友達もいる
小遣いは僕らの生活費なのさ
きめられたとおりに使うことは無理だよ

（つづく）

「川柳歳事記」

継ぐ

正論にちょっと息継ぎしたくなる

引き継いだ慣例にまた縛られる

息継ぎが下手ねほらまた踠いてる

「川柳歳事記」

タオル

古タオル無くば寝られぬ児の形見

戦う気あるのにタオル投げられる

湯の宿で借りたタオルの国訛り

「川柳歳事記」

育つ

仮免もなしで子育てしています

スポーツ界ジュニア時代がもうそこに

大小の夢を育てて除夜の鐘

「川柳歳事記」

スポーツ

ピンポンのポンのあたりで息が合う

ゴルフ知らないが遼君知っている

全員を連れていきたい甲子園

「川柳歳事記」

スタート

少年剣士素足は非行寄せつけず

高砂の祝いに描く未来地図

幕明けに期待がこもるカウントダウン

近詠(雑詠)

巣ごもりが棚の古典に引きよせる

　　　　　　　　　　　美和山吹