「川柳歳事記

縋る
縋ってた影はもう一人の私
縋るもの一本二本と減っていく
神様をピンチの時だけ思い出す

「川柳歳事記

仕上げ
ベテランの空き巣戸締りして帰り
植木屋は最後の掃除手を抜かず
親方の無口仕上げに程遠い

「川柳歳事記

歳
歳ですと決め付けないで聴診器
この渋み歳経て分かる旨いお茶
まだまだと思ってるのは自分だけ

「川柳歳事記

鯉のぼり
クールビズ先陣を切る鯉のぼり
少子化に鯉が踊って五月晴れ
復興の風にふくらむ鯉のぼり

「川柳歳事記

景色
夏の陽へパッチワークの岡光る
景勝の松島被災地力づけ
地デジから世界くまなく観る景色

「川柳歳事記

楔
しがらみのひとつ楔のかたちして
正座できるうちは楔が効いている
一分の塚か楔は打ち込まれ

「川柳歳事記

記憶
抜群の記憶を持った妻の勘
いざなぎ景気なんていうのもあったなあ
飢餓の日の芋のうまさが忘られぬ

「川柳歳事記

開港
開港で世界の地図が狭くなる
新空港バッグに詰める国訛
開港へ世界に向ける竜馬の目

「川柳歳事記

追う
追いついてひとつになった影法師
歴代の記録つぎつぎ綱の意地
亀でいい追い付く夢に明日が見え

Web句会 ９月

Web句会　９月

ユーモア
サイレンに飛び出す方も疲れ顔　　　佳作
美和山吹