「映像川柳」

現実を利かぬ体が受け入れる

　　　　　　　　　　　美和山吹

「川柳歳事記」

エース

人知れぬ汗と涙をエース抱き

エース登板スタンドが沸き返る

好きな道ゆく幸せというエース

「川柳歳事記」

鋭

研ぎ澄まし聞く幻聴の夫の声

寂聴の語調鋭く人を切り

スピーチで春樹鋭く核を突き

「老いて新鮮」松ひさし

変な言葉

ワカモノ　君

とりあえず結果が出て最高です

 

メクジラ　さん

変な言葉だね　言い方がおかしい

とりあえずでは場当たり的で真剣さがない

結果は良いか悪か必ず出るもの

最高にどうなのか分からない

 

ドンカン　さん

くどくど言わず

若者らしくて気持ちが分かる

 

オオラカ　さん

ともかく良い結果が出て最高にうれしいです

と言えば分かりやすい

言葉やアクセントも時代によって変わるらしい

以前からの言い方が正しくて今の言い方が誤りと決めつけられない

と学者先生から聞いた

とりあえずではなく　ともかく

若者言葉でも年寄語でもなかよく会話しまよう

「繰り言」

「川柳歳事記」

嘘

針千本とっくに飲んだ大人達

嘘ついていると知ってて母は聞き

嘘一つ抱いてこの世を渡り切る

「川柳歳事記」

印鑑

印押せば他人　夫婦って何だろう

印鑑は押すが魂は売らぬ

落款をもらう色紙が目を開く

「川柳歳事記」

いらいら

約束の待てど暮らせど来ない人

寒空に来ない電車を待たされる

東電と政府いらつく嘘ばかり

「雑詠」

自慢にも出来ぬ乗ったと救急車

                                 美和山吹

「川柳歳事記」

イメージ

唄を聴くひとそれぞれに湧く景色

手の中で世界が動く文庫本

この人は魚と思うさかなクン

「川柳歳事記」

勢い

勢いに押されて夢の底にいる

風も抜いたか放射線の終わるころ

勢いのいい人だった　夏に逝く