「川柳歳事記

弾む
空き缶の底で弾んでいる明日
平方根解けたら弾みだすロダン
大胆に一円玉がよく弾む

「川柳歳事記

鳴る
そろそろと終い支度の鐘が鳴る
ロボットが笛を鳴らしている工場
御機嫌が治ったらしいノブの音

「川柳歳事記

溶ける
高原の緑に溶けて気を洗う
溶け込んだつもり私の早合点
どう溶けてみてもわたしという匂い

「川柳歳事記

天狗
天狗になると男いつかは刻まれる
パソコンを覚え天狗は空を翔ぶ
天狗の鼻折れ夕焼けの色を知る

「川柳歳事記

摘む
花殻を摘む手に残照そっと乗せ
煩悩のほむらを摘んで数珠の彩
摘果する運命のいのち手に受ける

「川柳歳事記

直
直ぐできる散歩も三日続かない
ここ一番男を上げて見直され
譲られて素直に座る歳となる

「川柳歳事記

旅
仮の世の旅終点が見えぬまま
裏切りの旅から戻る蟹の泡
かかる世へ命旅立つ呱呱の声

「川柳歳事記

素粒子
素粒子が地球をのみこんだ
一句詠み閉じ込めておく大宇宙
一粒の宇宙の塵で生きている

「川柳歳事記

線
秋雨前線恐い豪雨を連れて来た
線引きは海へ尖閣諸島揉め
線引きで個性ある子の芽が摘まれ

Web句会 １２月

Web句会　１２月
ユーモア

不可解は生前葬の妻の笑み　　　　佳作　　　太田紀伊子選
　　　　　　　　　美和山吹