「川柳歳事記

パーティ
パーティと聞けば政治家走り出す
スロースロー老いの優雅なダンス会
震災の前で良かったウエディング

「川柳歳事記

野
野に下りやっと政治が見えてくる
嫌われてあわだち草が元気いい
古の原から続く道標

「川柳歳事記

値打ち
今さらに夫の値打ち思い知る
捨てられた種が見事な花咲かす
真心に太刀打ちできる武器がない

「川柳歳事記

縫い目
縫い目からサタンが覗く二十五時
きっちり縫っておかないからフォッサマグナ
大空の縫い目から太郎爆発だ

「川柳歳事記

匂う
正露丸僕の胃腸を任せきる
遅咲きが匂う物静かな背中
線香の中の回顧が虚し過ぎ

映像川柳

サイレンに飛び出す顔も疲れ顔　　　　美和山吹

「川柳歳事記

内定
組織図はもうできている下克上
内定書いずれひとりになる枯野
定年後田舎暮らしの地図を見る

「川柳歳事記

動
首の皮一枚下手に動けない
タレ込みの電話に空気動き出す
動かない証拠があると脅す妻

「川柳歳事記

デジタル
デジタルの向こうに何があるのだろ
デジタルの風に吹き飛ばされている
風の道デジタル時計掛けてある

「川柳歳事記

通知
食卓に威張ったような通知表
転居通知もこれが最後と出す安堵
吉報は時計の進み遅らせる