境内に咲く彼岸花。
赤の彼岸花
白の彼岸花
寒暖ではなく、日照時間によって咲くようで、秋の彼岸の時期に花開くことからその名がつけられたそうです。
この彼岸花には、【曼珠沙華(まんじゅしゃげ)】という別称もあります。
曼珠沙華とは、もともと経典に登場する花であり、実際に存在する花ではありません。
『法華経』には、お釈迦さまの説法に感動した梵天と帝釈天が、「曼陀羅華」・「摩訶曼陀羅華」・「曼珠沙華」・「摩訶曼珠沙華」の四華をふらして讃嘆したという記述があり、その他の経典に出てくる記述も、曼珠沙華は瑞兆として天からふる華として登場します。
そして、見る者の固い心を柔軟にすることから【柔軟花(にゅうなんか)】とも漢訳されています。
経典に登場する曼珠沙華は、彼岸花から感じる物悲しい雰囲気とは大違いの花のようです。
実際の彼岸花は、葉があるときには花はなく、花があるときには葉はないという特徴があり、互いにその姿を見ることが叶わないことから、【ハミズ】【ハナミズ】という別称もあります。
互いに互いを見ることができなくても、同じ根によって、同じいのちを生きている。
それは彼岸花だけではなくて、生きとし生ける、全ての繋がり合ういのちに言えること。
そして、彼岸という悟りの世界に渡られた仏さまとの繋がる縁にも言えること。
たとえ姿が見えなくても、関わり合いながら生きるということは、一つのいのちを、一緒に生きているということなのでしょう。
ちなみに、根に毒があるようで、【痺れ花】という異名もあるらしいです。
けれど、毒は水で流すことができ、良質の澱粉を含む球根は、飢饉の際の食料となることから、昔は備えとして植えられていたといいます。
経典の曼珠沙華は赤い花とされており、仏教伝来と前後して、中国から日本に渡ってきた外来種の赤花に、その名がつけられたとしても不思議ではありません。
実際に、人を援ける花に、お釈迦さまを讃嘆する瑞兆の華の名がつけられたのだから、素晴らしい命名なのかもしれませんね。
さらにちなみに、私は山口百恵の『曼珠沙華』という歌は知りませんでした(笑)