蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

再び 若冲  (bon)

2024-03-10 | 日々雑感、散策、旅行

  伊藤若冲(1716年~1800年)は、江戸時代の画家で、拙ブログにもこれまで2016年に
2度、2021年に1度記事アップしていますが、今回は、去る3月5日に新しく野菜や果物を
色鮮やかに描いた絵巻物(縦30㎝、横2.8m)が見つかったとの発表がありましたので
取り上げました。

  昨年、西ヨーロッパの個人が所蔵していた当作品の真贋鑑定が行われた末、同年8月に
京都市の福田美術館がオークション経由で購入されたとあります。

 若冲の作品の中でも、巻物状で彩色が施されているものは、これまで栃木県の美術館
が所蔵し、国の重要文化財に指定されているものだけだったという珍しいもので、今回
の作品は「果蔬図巻」(かそずかん)と名付けられたとあります。

        果蔬図巻
         (時事通信より)

 巻絵の左端のところの署名から、1791年の数え76歳の作品であることが判明してい
ます。トウモロコシやナス、トウガラシなど約40種が美しい彩色のまま保存状態も大変
良いとのことです。

                

 遠い昔の話では、アメリカのジョー・プライスという人が、1953年にニューヨークで、
あの建築家F・ロイド・ライトのお供で東洋古美術商を訪問した時、若冲の名も知らぬ
ままに、若冲の「葡萄図」をスポーツカー購入資金をつぎ込んで、この絵を購入した
そうです。さらに、1960年代には若冲画「紫陽花双鶏図」を購入するなどの愛好家で、
プライス・コレクションとして海外での若冲展にも貢献しているそうです。

                

 ところで、若冲がここまでブームとなったのは、最近のことだそうです。
1970年に、辻惟雄氏が上奏した「奇想の系譜 又兵衛~国芳」(ちくま書房)に伊藤
若冲、岩佐又兵衛、歌川国芳らが紹介されたのがきっかけかもしれないようですが、
少なくともこの70年代には東京国立博物館に若冲の「鳥獣花木図屏風」は存在してい
にも拘らず取り上げられないまま、71年に開催された若冲展(東博にて)もそれほど
話題にならなかったようです。

 若冲人気の始まりは、2000年に京都国立博物館で開催された「没後二百年,若冲展」
だとあります。若冲初の本格的な回顧展で約9万人が来場したとあります。 その後、
2012年にはアメリカ、ワシントン・ナショナル・ギャラリーで欧米初の若冲展が開催
され、2016年には空前の若冲ブームが起き、東京都美術館で開催された「生誕三百年
若冲展」には何と45万人もの来館があり、入場待ち時間も最長5時間という状態だった
そうです。

        生誕三百年 若冲展(東京都美術館 2016年)
         (東京都御美術館より)

 2016年のこの時、なんとしてでも観たいと思いつつ、混雑ぶりを耳にするにつけても、
行きそびれ、とうとう最終日を見送ってしまったのでした。やはり、宮内庁三の丸に
収蔵されている全三十幅の「動植彩絵」を見たかったのでした。彼が40代の頃に10年
かけて仕上げた作品で、京都、相国寺に寄進されたものでしたが、廃仏毀釈で同寺が
窮乏した折に皇室に献上されたものです。

 折角の若冲展を観そびれて残念に思っていたところ、相国寺にて、上野の展示と同じ
展示があり、思い立って京都へ向かったのでした。晩秋の京都相国寺での「若冲展」は、
上野の混雑など嘘のように、静かなしっとりとした雰囲気の会場で、期待通りの満足を
得たのでした。上野ではありえない楽しいサプライズなどもあり充実した美術観賞で
した。

       相国寺入り口にて(2016年11月)
        

 その後、18年にはパリのプティ・パレ美術館で若冲展が開催され、マスコミにも大
きく取り上げられたそうで、多くの人が「動植彩絵」を鑑賞されたそうです。

                

 若冲は、京都錦市場の裕福な青物問屋の倅ですが、生涯独身で、40歳ころに家督も
弟に譲りひたすら絵に専念したそうです。しかし、ただ絵を描くということではなく、
最先端の顔料などを外国から取り寄せたり、独自の画法を編み出したり研究熱心な努力
家でもあったのでしょう。

 新しい一幅の巻絵の発見が、再びいろんなことを想い出させてくれたのでした。

 

 

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コメント (2)
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