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主に読んだ本の感想。日常のできごと。

奥田英朗の無理

2013年01月14日 16時48分40秒 | ミステリー/文芸
無理っておもわず言ってしまいそうな話だった。
なにをどうやっても無理。 ど~~んと暗くなること間違いなし。

3つの人口過疎の東北の町が、合体してゆめの市という新しい自治体になった。
市役所の福祉課につとめる相原友則。バツイチ。生活保護の不正受給者や独居老人の世話にほとほと嫌気をさす。
女子高生久保史江。複合商業施設ドリームタウンしか行くところのないゆめの市を嫌い、東京の大学に進学することを夢みてる。
老人相手に詐欺まがいに、漏電遮断器をおしうりする、加藤裕也。地元の暴走族あがり、バツイチ子持ち。
堀部妙子。派遣雇用でスーパーの万引き監視員。夫とは離婚、二人の成人した子からは音信不通。新興宗教にはまっている。
市議会議員、山本順一。2世議員で県議をねらっている。妻はアルコール中毒。

という五人五様にゆめの市に住んでいる人たちの日々の生活の話。とめどなくゆめの市で落ちていく5人。ふつうの生活、将来の夢など無理。ただ、この5人だけが特別なのではなく、多かれ少なかれこの5人の状況を共有しているであろう、ゆめの市民。
個人のだれが悪いというわけではなく、ある意味全ての状況がゆめの市に反して動いている。 しかも、ゆめの市は雪深い東北の地方都市。 季節は冬。それがいっそう、無理感をあおっている。 

読み終わったあと、思わず三浦しをんの”風がつよくふいている”を思い出してしまった。 青春とか目標とか夢とか希望とか若さとか爽やかとか感動などと真っ向から相殺する本であった。 
本自体はよくできているけれど、落ち込んでいるときには読まないほうがいいと思う。





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2 コメント

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うわっ! (Coo)
2013-01-16 06:24:47
それは、読めない、かも。。。
どんよりして、落ち込みそうですね。
この本を手に取られたきっかけはなんですか?

精神科の先生のシリーズは好きですが、これは…「無理」そうです。
対極にある「風が強く吹いている」を思い出されるあたり、面白いですね。
cooさんへ (renogoo)
2013-01-16 06:53:18
そうそう私も”空中ブランコ”とか伊良部先生シリーズは好きだったから、これもそんな感じかなって手にとったんです。ハードカバーだったから、どこにもあらすじとか書いてなくて。文庫みたいに書いてほしい。

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