私の図書館

主に読んだ本の感想。日常のできごと。

山崎豊子の沈まぬ太陽(御巣鷹山編)

2008年08月12日 11時48分26秒 | ミステリー/文芸
沈まぬ太陽1ー2巻と読んできたが、3巻目がなんといってもハイライトだと思う。
1ー2巻で登場した恩地が主役のようになっているけれど、やはり事故のことを追っているので国民航空の悪質な会社体質,遺族たちの状況などがこの本のテーマになっている。

この本、遺族が置かれた状況、事故後向き合わねばならなかった状況などをつぶさに語ってくれるのだが、遺族側の話だけではなく日本航空じゃなかった国民航空につとめている普通の社員の側にも重点をおいている。

例えば、事故後"遺族お世話係"なるものを勤めなければならなくなった普通の平社員。自分のせいではないのに、人殺しとののしられ、唾をはきかけられる。それでも、"お世話係"なので毎日遺族の人々と顔を合わせなければならい。もちろん、この"お世話係"をいいつけられたのは左遷組の人たち。組合に参加していたり会社に批判的だったり、つまり空の安全について事故前から懸念していた恩地のような人達がこの役をおおせつけられた。その一方で事故後すぐに現地入りした重役たちは、現場での自分の不利な立場をみてとるとすぐに東京に逃げ戻る。そのお世話係の中にはノイローゼになり自殺した社員もいる。もちろん重役ならびに天下りの社長はピンシャンしている。

事故以後、事故原因を究明、空の安全をチェック、2度と繰り返さない、誠意ある対応、などなどお決まりの文句がでてくるが、一向に変わらない日本航空じゃなかった国民航空。それは今でもそうなのかなとちょっとおもう。

御巣鷹山の事故が起きた時私はまだ小学生だったので、一体どれほどの大惨事だったのか分からなかった。でも、あの山の映像と犠牲者の遺書がでてきた話は今でも覚えている。

この本、史実にもとずいているので正確にその時のことをかかれているらしい。ちなみに下記のリンクでもっと詳しくこの作中の登場人物とモデルとなった実在の人物とを照らし合せて紹介されている。

ウィキペディア

前巻を読んでいなくても、話の筋は分かるので3巻だけでもどうぞ。
今年で23年目となった御巣鷹山の慰霊祭、その当時まだ小学生でその当時の模様を細かに理解していなかった人にぜひ読んでもらいたい本。

小畑健のDEATHNOTE

2008年08月06日 12時36分27秒 | マンガ

DEATHNOTEを近所の図書館で発見。映画化などけっこう話題になっていたので、何気なく1巻だけかりてみた。
おもしろかった。

少年ジャンプに連載されていたらしいが、内容はモーニング系だなと思った。ドランゴンボールなどの子供っぽさから見ると全然完成度が違う。また、ジャンプにありがちな永遠に続く話なわけでもなく、人気があってもちゃんと終わるべきところで終わっているのもよい。ドラゴンボールなど一体何巻あるのだろう? 続々と強い敵がでてきて、下手をするとカメハメハを投げるだけで1週間分のジャンプを使ってしまうし。そういう、惰性さはなくちゃんと作者が終わりを見据えて書いているようにみえる。 とは言っても、まだ6巻目だけど。

あまりによかったので、2巻目は日本語のを借りてみた。そこで、気付いたのだが日本語で読んでいる時と英語で読んでいる時では頭のなかで聞こえる人物の声が違う。おもしろ発見だった。どちらかというと、日本語で読んでいる時に聞こえる声のほうがしっくりくる。
3ー6巻とまた英語版しかなかったので仕方なかったけど。

最後にDEATHNOTEの使い方ルール毎回増えていって困る。
このまんが、大人買いしてもOK。 さいきん私が読むマンガがおもしろいものばかりでついているので、花ざかりの君たちへで受けた精神的打撃を回復中。

福井晴敏の亡国のイージス

2008年08月05日 11時04分23秒 | ハードボイルド

1999年に出版された時はかなり話題の本だった亡国のイージス、いまさらと思われるかもしれないけれどつい先週読破したばかり。なぜ今ごろといわれると、ただ図書館に上下そろってあったから。
結論からいうと上下巻で1460円の価値はあり。文庫本で買っても十分その元はとれる。

なるほど、たしかに日本人が好きそうな話になっている。やや右傾倒なところといい、都知事とか桜井良子とかが大きく頷きながら読んでいそうな本。そういうお約束みたいな部分をふくめても、やっぱりいい本だったとおもう。

イージス護衛艦の"いそかぜ"を舞台にした話。息子を政府によって暗殺された護衛艦の艦長宮津は北朝鮮のスパイと手を組みいそかぜを乗っ取り、日本政府を相手どり反乱を起こす。いそかぜの中にはスパイがアメリカ軍基地から盗んだ秘密兵器がつまれており、それをイージス艦のミサイルの弾頭に取り付け東京に向けて発射させるという計画の元イージス護衛艦の第一号のいそかぜをハイジャックする。それを阻止しようとする実直な同艦先任伍長仙石と自衛隊の諜報員の如月。ただのスパイ小説ではなく、いろいろと根深いテーマを入れ込んでいる。自衛隊の意味とか、日本の国防方針とか、自衛隊と憲法との矛盾とか。

かなり複雑なのでこのあらすじでは全然意味がつかめないと思うけれど、最初から最後までよくまとまっている。ひとつ難を言うなら、いくら息子が殺されたからといって、はたしてこの次元で復讐を企てるだろうか? あと、226事件の時のように、宮津にも自衛隊の青年幹部が共感をよせて宮津の計画に命を捧げるのだが、彼らのことが全然かかれていないため、その動機みたいなのが全然読み取れない。その一方で北朝鮮のスパイのほうは実によくかけているので、彼の動機みたいのには納得できる。

作者がこの本を書いた時はまさか、本当にイージス艦が世間を騒がすことになるとは思ってもいなかったろう。
自衛官によるイージス艦の情報流出、漁船との事故とイージス艦がお目見えしてからいろいろ新聞ネタになることが多い。特に情報流出の事件など、この本を読んだのか?と疑いたくなる。それだけ、作者に先見のめいがあったのだろう。

最後になったが、さてこの話では一体だれが最後に笑うのでしょう?
A、宮津 B、如月と仙石 C、青年自衛隊幹部 D、アメリカ C、日本の総理大臣

雫井脩介の火の粉

2008年08月04日 14時46分13秒 | ミステリー


なかなか面白かった。話的にもよくまとまっているし、尻切れトンボではないし、作中の人物にも無理がない設定だし、
題名やテーマも一環性があるし。でも、大絶賛というほどではない。
他の書評を読んでみると"非常によかった"とか"すごい本"とか書いてあるけど、正直それ程でも無いといのが感想。他の書評が意味するところはよく分かるのだけれど、イマイチ賛成できない理由はこの手の話を前にどこかで読んでいるから。雫井脩介の火の粉が出版されたのが2004年、私はこのような話その前に読んでいる。題名とか作者とかぜんぜん思い出せないけど、夏樹静子だったような気もする。それゆえに、点数半減。

とりあえずあらすじを言うと、退職をまえにした裁判官が最後の裁判で冤罪の疑いありのため無罪判決を武内に言い渡すところから始まる。冤罪の罪にとわれた無実の人を救ったような気でいる裁判官。上から他人の火事をながめているような性格の裁判官たちを揶揄してお公家気質と検事にいわれるが、裁判官として正しいことをしたと満足して退職していく。その2年後、この武内が偶然を装ってこの裁判官と隣に引っ越してくる。それから、だんだんとこの裁判官一家のまわりで不可解の事件が起こり、少しずつ家族が崩壊していく。だんだんとこの武内に家族を乗っ取られていくのだが、この裁判官どこまでもこのお公家さん気質で自分の家族に振りかっかた火の粉をみて見ないふりをする。でも最後には。。。。という感じのはなし。こういうと裁判官が主人公のようだけど、実際は同居している嫁が活躍する。

この手の話を読んだことがない人は800円で文庫本買ってもいいかも。


中村光の"聖おにいさん"

2008年08月03日 10時42分14秒 | マンガ
久しぶりに大ヒットなマンガを読んだ。 のだめカンタービレ以来、いや私的にはのだめを超えたと思う。
中村光の"聖おにいさん"は実に面白かった、声を出して笑うほど面白かった。ギャグマンガとは違うコミカルな感じ、ユニークな発想から出たプロット。とてもざん新なおもしろさ、その上ちょっとほのぼの感。これは絶対おすすめ。

あらすじをいうと、主人公のお兄さん2人は天界からやってきたイエスとブッダ。世紀末に働き過ぎた2人東京の立川でルームシェアをしながら休暇を楽しむことにした。この意外な組み合わせと東京という土地柄がなぜかしっくりくる。
バカンス中といえども仏と神の子、そのはめの外し具合も絶妙。

実はカナズチなので気合で湖面を歩いたと告白するイエス、下界にきてから(というより、日本にきてから)手塚治虫のまんが"ブッダ"にはまり全巻一気買いしてしまったブッダ、地元の御神輿を担いでハイテンションになり思わず"わっしょいワッショイ"ではなく"アーメンアーメン"と掛け声をかけてしまうイエス、ジェットコースターに乗り恐怖のあまり思わすお経を唱えるブッダ。

宗教的にあまりこだわりをもたない日本人にしか分からないツボをおさえた、実に冴えるマンガ。
552円で1巻と2巻発売中。私なら900円でも買うな。