私の図書館

主に読んだ本の感想。日常のできごと。

柳広司のダブルジョーカー

2013年01月27日 16時46分52秒 | ハードボイルド
たまに帯や表紙におどらされて本を買ってしまうときがある。
このシリーズの前作も、表紙の絵がかっこいいって理由で買ったしだい。

残念ながら前作のジョーカーゲームはなぜか本棚からなくなっていたので(どうやら失くしたらしい)、前作を読み返すことができなかった。
2作目のダブル ジョウーカー、相変わらずミステリアスな結城中佐の昔がちょっと分かった。 短編のスパイ作品、太平洋戦争幕開け前の世界を舞台に活躍するD機関のスパイたち。 もちろん、スパイの名前やバックグランドなど分からないままに話は進んでいくのだけれど。 それもまた、かっこいいのです。本当、表紙の絵のイメージとおり。

3作目のパラダイスロストは単行本ででています。

佐々木 譲のエトロフ発緊急電

2011年04月10日 16時46分23秒 | ハードボイルド
真珠湾攻撃前を舞台にしたハードボイルドなスパイ小説。ちょっと納得いかないところもあったがなかなかおもしろかった。
佐々木譲といえば警察小説とおもっていたが、第二次世界大戦を舞台に3部作をかいている、これはその第2作目。

日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会賞ととっているので、よんでみた。 なんとなく日本のスパイ小説というと安っぽく、嘘くさくなってしまいがちだが、これは設定、プロットがしっかりしているのですんなり話にはいれた。

1946年、真珠湾攻撃を目前にして攻撃舞台が集結したエトロフ島のヒトカップ湾。アメリカのスパイとして日本に入国した主人公(日系人)は情報をもとにエトロフまでたどりつき、出撃目前の部隊を確認し最後の電報をエトロフから打つ。

著者のノートによると、フォックスというコードネームで1946年11月26日エトロフ島ヒトカップ湾から日本海軍機動部隊の出撃とその予想される目的地の報告が発信されているらしい。歴史的事実をもとに物語りをつくりあげ、おもしろいフィクションとなっている。

ただし、最後の最後で出会った主人公とロシア人とのハーフの女性ゆきをめぐる恋ものがたりは納得いかなかった。
よんでいる私でさえ、いったいいつそんな深い仲に???と驚いた。 最後はそんなつたない恋の話でやや鼻じろんだ。
あと、スパイを追跡するのが、なぜ中国からの因縁の憲兵ではなく脇役のそのまた脇の軍曹だったのかがなぞ。

こちらは古本屋でみかけたらどうぞ。

真山仁のハゲタカ

2009年09月07日 13時02分27秒 | ハードボイルド
NHKでドラマ化され、また今回映画化されたという社会派経済小説、評判がいいようなので借りてみた。

バブルがはじけ、どの企業、銀行も資金ぐりが苦しいく、破たんをまぬがれないとい中、それを商売とするファンドという外資の企業が現れる。 いきなり銀行の取り立てが厳しくなり、お金を返せなくなった企業。もっていても一銭の価値もなくなった借金の手形を莫大な数抱えている銀行。そして、そういう破たん寸前の企業を銀行から安値で買い漁るファンド。買い漁るといっても、一社ずつではなく、銀行が20ー100ほどの企業の借金を束にして、パッケージとして売る。借金が銀行からファンドに移行しても、払えないのは同じこと、そこで、旧経営陣は退き、ファンドがテコ入れして立て直し、高く売りつける。死に体の様相の企業を食いものにしているので、ハゲタカとよばれている。 そのハゲタカを率いるが鷲津。

銀行と鷲津との戦い。経営難でなんとか持ち直そうとする地方の中小企業と3点の視点からかかれている。経済のことがわからなくても、ドラマ仕立で分かり易くなっている。これが書かれた時はまだアメリカの企業がうかれていた時だったため、日本中心の話となっているが、まさか数年後まったく同じことがアメリカでも起こるとは。

この次の作品はハゲタカ2とレッドゾーンとなっている。ライバルは中国企業。アメリカのサブプライローンをテーマにせず中国をもってくるとは、なかなかするどい。
840円とやや高めだが、文庫本読む価値あり。

柳広司のジョーカーゲーム

2009年05月04日 16時30分12秒 | ハードボイルド
今年の本屋大賞にもノミネートされたこの本、告白、のぼうの城に続き第3位を受賞した。これで、今年の本屋大賞1ー3位までの本は読み切った。
私がもし順位をつけるとしても、やはりこのとうりになっていたと思う。

湊かなえの"告白"と同じく短編小説をひとつにまとめたものだけれど、一つ一つ話が関連しているという構成になっている。だからというわけでは無いけれど、ちょっと物足りなかった。

時代は昭和の初期(太平洋戦争の直前まで)、拷問のけがによりスパイとして働けなくなった結城中佐はいままでにない本格的なスパイ養成学校を始める。 最初は陸軍から煙たがられ予算もないありさまだったけれど、得意のスパイ行為で陸軍のお偉方の弱みを握り、着実に幅をきかせていく。
この養成学校を卒業したものが主人公となり、1話ずつ話がすすめられていく。全部で5話あるのだが、やっぱり"野生時代"に掲載された第1話と第3話目がおもしろかった。残りは書下ろしとあるが、断然に質が下がる。でも、全体的にはまあまあ面白かった。でも、1500円払うほどではにので、文庫がでるまで待ったほうがいい。最後に私としてはもう少し結城中佐に軸をおいて話をすすめて欲しかった。

しかし、これが本屋大賞3位というのなら後の4ー10位はどうなのよ。

福井晴敏の亡国のイージス

2008年08月05日 11時04分23秒 | ハードボイルド

1999年に出版された時はかなり話題の本だった亡国のイージス、いまさらと思われるかもしれないけれどつい先週読破したばかり。なぜ今ごろといわれると、ただ図書館に上下そろってあったから。
結論からいうと上下巻で1460円の価値はあり。文庫本で買っても十分その元はとれる。

なるほど、たしかに日本人が好きそうな話になっている。やや右傾倒なところといい、都知事とか桜井良子とかが大きく頷きながら読んでいそうな本。そういうお約束みたいな部分をふくめても、やっぱりいい本だったとおもう。

イージス護衛艦の"いそかぜ"を舞台にした話。息子を政府によって暗殺された護衛艦の艦長宮津は北朝鮮のスパイと手を組みいそかぜを乗っ取り、日本政府を相手どり反乱を起こす。いそかぜの中にはスパイがアメリカ軍基地から盗んだ秘密兵器がつまれており、それをイージス艦のミサイルの弾頭に取り付け東京に向けて発射させるという計画の元イージス護衛艦の第一号のいそかぜをハイジャックする。それを阻止しようとする実直な同艦先任伍長仙石と自衛隊の諜報員の如月。ただのスパイ小説ではなく、いろいろと根深いテーマを入れ込んでいる。自衛隊の意味とか、日本の国防方針とか、自衛隊と憲法との矛盾とか。

かなり複雑なのでこのあらすじでは全然意味がつかめないと思うけれど、最初から最後までよくまとまっている。ひとつ難を言うなら、いくら息子が殺されたからといって、はたしてこの次元で復讐を企てるだろうか? あと、226事件の時のように、宮津にも自衛隊の青年幹部が共感をよせて宮津の計画に命を捧げるのだが、彼らのことが全然かかれていないため、その動機みたいなのが全然読み取れない。その一方で北朝鮮のスパイのほうは実によくかけているので、彼の動機みたいのには納得できる。

作者がこの本を書いた時はまさか、本当にイージス艦が世間を騒がすことになるとは思ってもいなかったろう。
自衛官によるイージス艦の情報流出、漁船との事故とイージス艦がお目見えしてからいろいろ新聞ネタになることが多い。特に情報流出の事件など、この本を読んだのか?と疑いたくなる。それだけ、作者に先見のめいがあったのだろう。

最後になったが、さてこの話では一体だれが最後に笑うのでしょう?
A、宮津 B、如月と仙石 C、青年自衛隊幹部 D、アメリカ C、日本の総理大臣

百舌鳥の叫ぶ夜

2008年07月16日 11時46分01秒 | ハードボイルド
いろいろ忙しくてこの本を読み終わるのに5週間ほどもかかってしまった。あとがきを読むとこの本を書くのに4年かかったと作者がいっていたので、これくらい時間をかけるのが礼儀だろう。別にすごい量なのではなく400ページほどの普通の単行本なんだけどね。 なんとなくこんなに時間がかかってしまった。感想から言うとまあまあおもしろかった。
話の前後が入れ替わり、作者的には構成を複雑にしようとしているのだけど、あんまり効果的ではなくただ読みずらいだけだった。
図書館でみかけたらどうぞ。

桐野夏生の天使に見捨てられた夜

2008年02月12日 06時16分54秒 | ハードボイルド
シリーズ2作品目だとは気付かず借りたこの本、女版の大沢在昌の小説のようだった。ハードボイルドといわれるジャンルになると思う。
主人公が女の探偵で失踪したAV女優を捜す依頼を受けるところから話が始まる。しかし、大沢在昌の主人公とは違い、いわゆる"かっこいい"探偵ではなく、かなり素人くさく個人的にも危なっかしいキャラクターで、そういった意味で桐野夏生らしさが出ていたとおもう。ミステリー的にもまあまあだったし。でも、最後30ページがかなり慌ただしく"はいおしまい"という感があり、いまいち。
わざわざ、買うほどではないとおもう。これを、買うなら、ぜひ"OUT"を買っていただきたい。まず、この作家が一体どれだけの物を書けるのか読んでから、あまり期待せずにこの本を読むのが順当だと思う。OUTが長すぎると思う方には短編集の"錆びる心"がおすすめ。これは結構ダークな作品。


今、読んでいる本

浅田次郎の短編集。まあまあ、感想かくほどでもない。つい2ー3日前に気付いたのだけれど"蒼穹の昴"はこの人が書いた本だったらしい。これはよかった。

山崎豊子の"沈まぬ太陽" いつ、いっても貸し出し中なので、もーあきらめた。

久しぶりに"本格ミステリー"を読もうともって、島田荘次の御手洗シリーズをたのんだ。これは楽しみ。館シリーズに続き好きなもの。

乃南アサの"交番おまわり"さんシリーズ。いまから、借りるよてい。私の好きな作家のひとりで、直木賞作家。文句なしの直木賞受表作家。


高村薫の黄金を抱いて翔べ

2007年11月11日 03時56分06秒 | ハードボイルド
まあまあだった。というのが感想。
後半はハラハラさせられる展開でおもしろかったけど、前半とのアンバランスさを浮き彫りにさせスムーズさに欠ける作品だった。
6人の男たちが黄金を奪う話だけど、彼らのお互いの関係に焦点があてられている。でも、その登場人物もいまいち前半と後半で性格がちがくなっている感があり、違和感をかんじた。例えば北川、リーダー的存在で黄金計画を主案した人物だけれど、一体彼のカリスマはどこからきているのかさっぱりわからない。北川のカリスマ性を表すエピソードもなければ、経歴も明かされず、でもなぜか主人公の幸田が一目置いている。せめてもう少し彼らの性格をはっきりさせるためのエピソードか過去の話をいれてほしかった。

結果をいうなら、文庫本でも買う必要なし。
"マークスの山"のほうがおすすめ。

大沢在昌の"ジョーカー"

2007年07月30日 07時22分50秒 | ハードボイルド
大沢在昌らしいハードボイルドな作品。6編のショートストーリーが入っていて、手軽に読める本。この6編どれをとっても十分に単行本1冊にのばせる話なのにあえて(もしくは面倒で)短編になっている。でも、下手な短編につきまとう尻切れ蜻蛉の様相はなく、よくまとまっている。
この本"ジョーカー"シリーズとなっているけど、でているのはこの1冊のみ。せめて、2冊目でてから、シリーズ化するべき。おもわずインターネットでジョーカーシリーズ第2弾をさがしてしまった。

内容を簡単に説明すると、ジョーカーというなんでも屋が依頼人に会うところから話がはじまり、いろいろ事件やトラブルに巻き込まれ最後は一件落着で終わるという単純な話。文庫本で648円。ちょっと高いな。新刊で買うほどのものではないけど、古本屋で見かけたらお買い得な一品。通勤電車などで読むのに最適。

大沢在昌の作品に出てくる主人公はほとんど同じタイプ、職業が警察かなんでもやか探偵かにがしやか。多分こういう人物にあこがれているからか、こういうハードボイルドを書かせると本当にうまい。しかも、こういうタイプの主人公ほとんどが中年とよばれる35ー40歳ほどの独身男性。新宿鮫の鮫島など丁寧にちゃんと年をとっている。これは私だけかもしれないが、自分より年上=大人、自分より年下=子供という感覚があって、作品の主人公が自分より年上だと安心してよめる。"大人"だからこういうこともありだろうとなんか変に納得できるから。この図式でいくとかなりの人口が"子供"ということになってしまい、これから先"子供"の比率は伸びるばかり。
私がこれに気付いたのは漫画の"有閑倶楽部"をよんでいたとき。私はこれをまだ当時"りぼん"で連載していたころから読んでいた。小学生の私にはこの6人の高校生は"大人"であんな事やこんな事がおきても"大人"だから対処できるのだろうと素直に読めた。18ー19歳のときも違和感なくよめていたとおもう。ところが10年後読んでみるとセッテイングが不自然なほど稚拙で話に集中できない。ちっとも面白いとかんじられなかった。たぶん、これはある日きずいてみたら高校球児が年下だったときのショックと似ているとおもう。たぶん、気付いていたら水戸黄門と同い年とか、一体その時どうかんじるのであろう。もしかしたら、格さん助さんとはもう同い年かもしれない。これは、こわいな。
そんなこをいっていたら、世の中の本のほどんどが年下の主人公という日もちかいかも。ドラマはもうほとんどが年下の年齢だろうし。
とりあえず、大沢在昌の本はこの点では大丈夫。なんといっても、主人公が60歳のハードボイルドのシリーズもあるから。

大沢在昌の"狼花"

2007年06月29日 05時28分36秒 | ハードボイルド
今日は、大沢在昌の"狼花" これは、新宿鮫シリーズの最も新しい作品。
実は、新宿鮫シリーズはしっていたけど、あまり読む気がせずこの本は、去年本屋でみたときはじめて、新宿鮫シリーズトライしてみようか、と思って購入したもの。この本の帯に"このミステリーがすごい。。。"とあり手に取ってみた。いつも、帯をバカにしていたけど、結構宣伝こうかあり、とひっかかってから思った。

ハードボイルドがすきな人はたぶん、すーーごくファンなんだと思う。私はどちらかというとハードボイルドな本は避けてきた。キザとかくさいとかいう言葉が頭にうかぶから。でも、ただ単に、食わず嫌いだったらしい。恥ずかしながら、かなりはっまってしまった。さっそく古本屋で新宿鮫1ー8を買ってのぞんだ"狼花"、一言で感想を言うなら"ウーーーんいいネ" って感じ。安心してよめるのだけど、ちゃんと内容もあり。シリーズにつきまとう、マンネリ感もないし(例: 内O康OのXXXX殺人事件シリーズ。あの内容で文庫本が660円で売っているという事実がおどろき)。たぶん登場人物のキャラクターとセッテイングがしっかりしているからだと思う。たぶん、次がでたらハードカバーでも躊躇せずすぐ買うと思う。内O康Oの本を660円だして買うなら、その660円で新宿鮫を買うべき。古本屋だと100円ほどで売っているので、なおお得。

知らなかったけど、大沢はこの新宿鮫シリーズの"無間人形"で直木賞を取っている。私としては、これはピンとこなかった。"これで直木賞?"というのが率直な意見。

長くなったけどあともー1つ。大沢在昌の本は、面白いものと最高つまらないものの差がはげしいので要注意。