私の図書館

主に読んだ本の感想。日常のできごと。

桜庭一樹の私の男

2008年07月04日 12時13分18秒 | ミステリー/文芸


なんとも重い本だった。1日に一章読むのがやっとだったので一周間ほどもかかってしまった。
背徳的で排他的な本だった。 なんども読み返しながらページを進めた。
話は主人公の花が24歳養父の淳吾が40歳、花の結婚式の前日から始まる。その後1話ずつこの2人に関係する人々がかれらの視点からこの2人の関係を描写していく。例えば、第2話は花の結婚相手の美郎が花とその養父との出会いについて語っている。それとともに、年月がさかのぼっていく。最終話では1993年、2人が出会って一緒に住むところで終わっている。とても効果的な構造だと思った。

文章も実によく書けていると思った。斜め読みさせないすごさがある。私はよくとばし読みや斜め読みをするのだけれど、この本は一語一語がもったいなくてそういう読み方ができなかった。なんども味わうように読む文章だと思った。ただきれいなだけなく、細かく計算されつくした文章。

最後の章を読むまで、私はこの二人の破壊的な関係を応援していた。応援というのも変かもしれないけど、その関係を理解でき共感できていた。不道徳かもしれないけれど、それはそれでいいのではと思った。しかし、最後の話を読むと、淳吾の身勝手さに気づきなんとも嫌な後味が残った。娘の花にたいする異常な愛情とかをいっているのではなく、その始まりがあまりに愛情がないのに嫌悪感がおこる。淳吾が花のことを"人形"といったのは本当にそういう意味で言っていたのだ。自分の焦燥感の癒しのために、大きなぬいぐるみを抱くように花を抱く淳吾、とても自己本位な男だった。


なんか作者の思いどうリになった感がある。よすぎて2度と読みたくない本かな。

桜庭一樹はこの本で直木賞をとった。他の候補作を読んでないので分からないけど、納得した。