DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

中原中也(1907-1937)「閑寂」

2017-01-22 20:21:52 | 日記
 閑寂

なんにも訪(オトナ)ふことのない、
私の心は閑寂だ。

    それは日曜日の渡り廊下、
    ――みんなは野原へ行つちやつた。

板は冷たい光沢(ツヤ)をもち、
小鳥は庭に啼いてゐる。

    締めの足りない水道の、
    蛇口の滴(シヅク)は、つと光り!

土は薔薇色、空には雲雀
空はきれいな四月です。

    なんにも訪ふことのない、
    私の心は閑寂だ。

《感想》
何にも訪れることがない私の心。その状態が「閑寂」と呼ばれる。
「日曜日の渡り廊下」は誰もいない。「みんなは野原へ行つちやつた」から。心の「閑寂」の比喩。
人気(ヒトケ)がなく静かなので、板は冷たく光る。庭の小鳥の啼き声が聞える。
蛇口を使う者が誰もいない。「蛇口の滴(シヅク)」が光る。
「土は薔薇色、空には雲雀/空はきれいな四月です。」詩人の心は、「閑寂」を愛する。

 QUIETNESS

Nothing visits me. My heart is quiet.
 It is an open corridor. All of them went to the field.
Wooden bords shine cooly. Small birds sing in the garden.
 From water tap turned off loosely comes a drip, and it shines abruptly.
The soil is rosy, and larks are in the sky. The sky is clear in April.
 Nothing visits me. My heart is quiet.
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