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金子『ヘーゲルの精神現象学』Ⅱ本論(一)「意識(対象意識)」1「感覚」(その2):フォイエルバッハは「個別者」は「言葉」に現れなくても「実践的」に存在し、ヘーゲルを「観想的」だと批判!

2024-05-02 15:49:15 | 日記
※金子武蔵(カネコタケゾウ)『ヘーゲルの精神現象学』ちくま学芸文庫(1996)(Cf. 初刊1973)
Ⅱ本論(一)「意識(対象意識)」1「感覚」(その2)(94-96頁)
(15)-3 フォイエルバッハによるヘーゲル批判:ヘーゲルは「観想的」であって「実践的」でない!(94-95頁)
★ヘーゲルは、「このもの」を「言葉」で現わすなら「普遍的なもの」が付け加わるので、「純然たる個別的なもの」はないと述べた。ヘーゲルはこの論において「言葉」というものを強く押し出している。(94頁)
☆フォイエルバッハはヘーゲルが「言葉」を非常に重要な根拠としている点をとらえて。ヘーゲルの考えは「観想的」であって「実践的」でないと批判する。(94頁)
・「実践的」な立場をとれば、「このもの」は確かにある。Ex.1 「この女房」は自分の女房として「個別的」であり、「普遍的」ではない。(「普遍的」では問題が起こる。)Ex.2 「この田」は「個別的」であり「自分の田」だ。「この田」が「個別的」でなく「普遍的」であるなら、隣の畑の西瓜を勝手に取って食ってもよいことになる。(95頁)
☆本当に「実践的」なもの、例えば女房とか西瓜とかについて考えれば、純然たる「個別者」は、「『言葉』に現れなくても、あることはあるんだ」と、フォイエルバッハは述べている。(95頁)

(15)-3-2 しかしヘーゲルも、「個別者が全然ない」と言うのではない!ヘーゲルは「なにかある『普遍者』と関係を持った『個別者』しかない」と言っているのだ!(95-96頁)
★フォイエルバッハは確かにヘーゲルの弱点を突いている。「言葉」ヘーゲルが重要視している点は、フォイエルバッハの批評が当たっている。(95頁)
☆しかしヘーゲルも、「『個別者』が全然ない」というのではない。ヘーゲルは「なにかある『普遍者』と関係を持った『個別者』しかない」と言っている。(95頁)
☆主体の方向からいうと「このもの」は「この人」という「個別者」だが、「個別的主体」の存在は、「受肉 incarnation 」の教義を強調するヘーゲルにおいて相当強く認められ主張されている。ヘーゲルは決して「個別者」を全然否定しているのではない。(95頁)

《参考》キリスト教の「三位一体の教義」において、「神が自分のいとし子、最愛のひとり子を大工の子として、この世につかわす」ということは、「それぞれの《個別者》が、《個別者》であると同時に《絶対者》としての権威を持っている」ことを示す。(71頁)
☆人間は《神の子》であると同時に《人の子》でもある。つまり人間は「肉を負うたもの」、「罪を負うたもの」、「十字架を負うたもの」だ。それゆえ人間は「肉」に死ななければならない。(71頁)
☆人間は「肉に死する」ことによって「精神」として「霊」としてよみがえる。それによって人間は「父なる神」のもとに帰る。(71頁)
☆したがって「父なる神」はまず「裁きの神」、「超越的な神」にとどまるが、しかしその神も「超越的なもの」にとどまるならば、「実在性」あるいは「現実性」をもつことができない。そこで神自身が肉に宿り、即ち賤しい「大工の子」として生まれねばならない。神がそれぞれの「個別者」を「個別者」として存在せしめるゆえんがそこにある。(71頁)
☆「キリスト教」あるいは「三位一体の教義」を論理的に説明すれば、以上のように言える。(71頁)

★さらに「個別者」について「客体の方向」について言えば、「自分の女房 meine Frau」という場合、自分だけで勝手に「自分の女房」と決めていても成り立たない。「結婚式を行って披露する」とかその他なんらかのしかたで「慣習的」に誰々の奥さんであるということが「世間的に承認」されていて初めて成り立つ。Cf. 気狂いが自分だけで勝手に「これがおれの女房だ」と考えても成り立たない。(95-96頁)
☆またこれは「おれの田」だと言っても、「自分の田」であって「他人の田」でないということが村の「慣習」とかで村全体から「承認」を得ていて初めて成り立つ。その点からいっても「『普遍者』と全然関係のない『個別者』はありえない」。(96頁)
★こう考えると、フォイエルバッハの反省もまだ十分徹底したものでないと言える。(96頁)
☆しかし「『言葉』を理由にして、単なる『個別者』を否定する」点で、ヘーゲルの考えが「観想的」であるという限りでは、フォイエルバッハの批評は当たっている。(96頁)
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