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「2010年代 ディストピアを超えて」(その14):吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(1937)!ディストピアな時代、文学はニヒリズムを気取っているだけが能ではない!(斎藤『同時代小説』6)

2022-06-13 12:22:39 | 日記
※斎藤美奈子(1956生)『日本の同時代小説』(2018年、62歳)岩波新書

(76)「ディストピアの向こうへ」:吉野源三郎(1899-1981)『君たちはどう生きるか』(1937、38歳)!
N 今後の日本文学に未来はあるのか?(266頁)
N-2  2017年から2018年にかけて、吉野源三郎(1899-1981)『君たちはどう生きるか』(1937、38歳)が爆発的にヒットした。戦前の旧制中学生の物語がなぜ200万部も売れたのか?(266頁)
N-3  『君たちはどう生きるか』は主人公のコペル君(本田潤一)とその3人の友人の友情の物語だ。北見君が上級生に睨まれており、北見君が殴られそうになったら「みんなで守る」と4人は約束する。ところがコペル君はこの約束を破る。(266頁)
N-3-2  昔の中学生はエリートだ。勇気がなく友達を助けられなかったコペル君は、「ヘタレな知識人予備軍」「ヤワなインテリ予備軍」そのものだ。(266-267頁)
N-3-3  コペル君は勇気をふりしぼり長い謝罪の手紙を書き、最終的には友情を取り戻す。最悪の状態から再生した少年の物語。(266-267頁)
N-3-4  なぜこの本がヒットしたかは、ここから理解可能だ。「ヤワでヘタレな子でも、絶望の淵に沈んでも、生還の道はある」というメッセージをこの本は示す。「ディストピアな時代」にこの本はマッチしていた。(267頁)

《書評1》大切な話ばかり。話題になってくれて新装版出してくれてよかった。 立派な人間になりたい。消費だけでなく何かできるように。そして弱さで善を潰されないように強く。
《書評2》古本屋に100円であったので購入。これは若いうちに是非とも読むべき本だ。学問を修める意味、正しいことを為す勇気、友情、社会階層・・・・、人として社会に生きていく上で考えなければならない様々な問題が、興味を引くエピソードと共に散りばめられている。
《書評3》漫画化され話題になった作品。 子供向けにやさしく書かれた哲学書・道徳書。 15歳のコペル君が主人公。 当時は中学に行ける子はエリート。彼もお金持ちのお坊ちゃま。 学校で上級生と揉めたり、上級生に殴られる友達を見て逃げ出したり、家が貧しい友達ができたり。 そんな彼へのおじさんの助言(説教)が間に挟まる。

(76)-2 「ディストピアな時代」、(日本)文学はニヒリズムを気取っているだけが能ではない!
N-4 『君たちはどう生きるか』は日中戦争開始の年(1937年)に、つまりファシズムに向かう時代に、知識人(吉野源三郎)が知識人予備軍の少年たち(旧制中学生)に向けて、「知識人いかに生くべきか」を説いた書だ。(267頁)
N-4-2  だから説教臭くて鼻持ちならない部分がある。(267頁)
N-4-3  だがここには、(日本)文学にとってひとつのヒントがある。純文学のDNAに縛られて、ニヒリズムを気取っているだけが能ではない。絶望をばらまくだけでは何も変わらない。せめて「一矢報いる姿勢」だけでも見せてほしいい。そのように読者たちは求めている。(267頁)
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