DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

穂村(ホムラ)弘(1962-)「海へ来たのは」『求愛瞳孔反射』(2002年、40歳):“愛は、「他者がいること」あるいは「《ぼくら》がいること」が事実として不可欠である”との論理的命題の確認 

2016-10-02 18:24:25 | 日記
 海へ来たのは(※1-6連まであるが、変化するのは《》の部分のみ。各連の最初の「海へ来たのは」を省略。各連に1-6の数字を追加。)
1
《カモメにパンを投げる》ためではありません
だいいち《ここにはカモメはい》ない
2
《ヒトデを裏返す》ためではありません
だいいち《ここにはヒトデはい》ない
3
《夜の燈台に昇る》ためではありません
だいいち《ここには燈台は》ない
4
《潮風に目を閉じる》ためではありません
だいいち《潮の匂いはし》ない
5
《想い出の》ためではありません
だいいち《ここには想い出は》ない
6
《愛の》ためではありません
だいいち《ここにはぼくらはい》ない

《感想A》
1
①海へ来たのは《カモメにパンを投げる》ためというのは、十分ありうる。
①-2 しかし、《カモメ》がいない海は、珍しい。運が悪かったか、下調べ不足。
2
②海へ来たのは《ヒトデを裏返す》ためなら、変わった人である。こういう理由で海に来る人は少ない。
②-2 また《ヒトデ》が海にいないことは、ありえないので、もっとよく探すべきである。
3
③海へ来たのは《夜の燈台に昇る》ためというのは、物騒。
③-2 それはともかく、《ここには燈台は》ないなら、そもそも計画不備。
4
④ 海へ来たのは《潮風に目を閉じる》ためでないというのは、《潮風に目を開ける》ためかもしれない。
④-2 しかし《潮の匂いはし》ないから、(a)そこは海と思ったが実は湖だったか、あるいは(b)水質汚濁で《潮の匂い》が全くしないほど悪臭がしたのかもしれない。
④-3 そうであれば確かに《潮の匂いはし》ないから、《潮風に目を閉じる》にしろ《潮風に目を開ける》にしろ、そもそも《潮風》が存在しないので、いずれも不可能である。(詩人は《潮風に目を閉じる》ケースについてのみ、言及している。)
5
⑤ 「海へ来たのは《想い出の》ためでない、理由は《ここには想い出》がないから」と言う論述は、論理的に矛盾がない。
⑤-2 では、この場合、海へ来た理由は何か?それは、《想い出の》ため以外、無限個のあらゆる理由である。
6
⑥「海へ来たのは《愛の》ためではありません。その理由は《ここにはぼくらはい》ないから」と詩人は述べる。⑥-2 この理由は、事実的に真である。愛が、自己愛でなく他者への愛であるなら、「他者がいること」あるいは「《ぼくら》がいること」は事実として不可欠である。

《感想B》
⑦詩人は、この詩で、何を歌ったか?まず、各連についてみてみる。
(1)詩人は《カモメ》がいない海を夢想する。普通、《カモメ》はいるから。
(2)詩人は《ヒトデ》がいない海を夢想する。普通、《ヒトデ》はいるから。
(3)詩人は《燈台》がない海を夢想しない。事実として《燈台》がない海(海辺)想定する。その上で《夜の燈台に昇る》ことは論理的、事実的に不可能だと述べる。
(4) おそらく詩人は《潮の匂い》がしない海を夢想する。(詩人は(a)海と湖の錯誤のケース、(b)水質汚濁のケースまで考えていないように思えるので、単に、「詩人は《潮の匂い》がしない海を夢想する」とのみ述べておく。)
(5) 詩人は《想い出》がない海を事実として想定する。
(6)詩人は、海と《愛》との関係について、「海に《ぼくら》がいたら、海へ来たのは《愛の》ためだと言える」とする。ところが、そもそも「海に《ぼくら》がいないので、(他者への)《愛》が存在しえない」と詩人は言う。

《感想C》
⑧詩人は、この詩で、何を歌ったか?まとめ。
(ア)この詩人は、《カモメ》《ヒトデ》がいない海、また《潮の匂い》がしない海を夢想する。
(イ)さらに、事実として《燈台》がない海、事実として《想い出》がない海を、想定する
(ウ)詩人のこれらの夢想・想定のもとでは、《カモメ》《ヒトデ》《燈台》《潮の匂い》《想い出》は、「海へ来た」理由になりえない。
(エ)詩人は、「海に《ぼくら》がいたら、海へ来たのは《愛の》ためだと言える」、すなわち「海に《ぼくら》がいないので、《愛》が存在しえない」と歌う。
(エ)-2 詩人のテーマは、“愛は、(自己愛でなく他者への愛の場合)、「他者がいること」あるいは「《ぼくら》がいること」が事実として不可欠である”との論理的命題の確認である。

 Why I come to the sea?
1 Because I don’t come here in order to throw pieces of bread to seagulls. Abov all, here are no seagulls.
2 Because I don’t come here in order to turn starfishes upside down. Abov all, here are no starfishes.
3 Because I don’t come here in order to go up in a light house at night. Abov all, here is no light house.
4 Because I don’t come here in order to have your eyes shut in the sea breeze. Abov all, there is no smell of the sea.
5 Because I don’t come here in order to vitalize some memories. Abov all, I have no memories about here.
6 Because I don’t come here in order to love a person. Abov all, here is not any couple like ours.
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