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オークランド航空博物館~ショート・ソレントとインディアナ・ジョーンズ

2013-08-14 | 航空機


Short Solent Mk. III Flying Boat

このオークランド・アビエーション・ミュージアムは、アメリカのそこここにある
ハンガーを利用した小さな航空博物館の一つですが、そのなかでも
いくつかの「ウリ」というのがあります。

女性飛行家のアメリア・イヤハートが最後の飛行に飛び立ったのが
ここオークランド飛行場であったということから、彼女のトランクなどいくつかの資料があったり
(イヤハート機と同型のロッキード・エレクトラが何年か前まで展示されていた模様)
アラメダ海軍基地が近いことから流れてきた?いくつかの軍用機があったり。

しかし、「目玉」展示となっているのは、なんといってもこの「ショート・ソレント」です。

ハンガーから外に一歩出ると、最も巨大な機体がどおおお~ん、と擬音付きで現れ、
その威容にまず目を奪われるのですが、はっと気づけばこれがなんと飛行艇。

当ブログにおいて一時二式大艇とその子孫であるUS-2までの系譜について熱く()
語ったエリス中尉としては、思わず「おお」と声が出てしまいましたよ。

鹿屋基地で見た エミリーこと二式大艇も大きかったけど、こちらはさらに一回り巨大。
今まで見たことも聞いたこともないこの飛行艇の正体は?



このソレント、イギリスはロチェスターにあるショート・ブラザーズ社が1940年代から開発を始めました。
当初は太平洋に配備するためという計画で、名前も「シーフォードS‐45」という軍用機の予定でしたが
戦争が終わってしまい、1946年から民間利用に転向したのです。

他のシーフォード5機と共にベルファストのショート・ブラザーズ工場で改装作業を受け、
この水上艇は34人乗りのソレント マークIIIに生まれ変わります。


イギリスが統治していた植民地への移動のために使うことが当初の目的で、
取りあえずロンドンと南アフリカのヨハネスブルグ線が就航しました。

飛行するのは昼間だけ。
夜にはオーガスタ(シシリー)、カイロ(エジプト)そしてアフリカのヴィクトリア湖に
アンカーを下しながら5600マイル(9千km)のフライトを行いました。

旅客費は一人250ポンド。現在の1500ドル(15万円)であったそうです。
でもこれ、そんなに高いですか?
9千キロの距離を三泊して移動して15万円。

しかも、

  

こんな優雅な飛行機、いまどきの国際線のファーストクラス以上じゃないですか。
飛行機の中にこんな階段(しかも螺旋状)があるなんて。
外側も大きいけど、内部もとても広くゆったりし、しかも動揺も無いので
フライトは非常に快適だったと言われていますし。




しかし時代というのか、航空機の発達とともに、こういった図体のでかいものは
運用コストが合わないという理由で、生産そのものが中止になります。

その後、ソレントは1951年にオーストラリアのトランスオーシャン航空に売却され、
スター・オブ・パプア」という名前でフィジーと南洋諸島をつなぐ路線に利用されましたが、
一度事故があって、それ以来トランスオーシャンは手を引いてしまいました。

ここにある飛行艇は、1953年にサウス・パシフィック航空に売却され、名を「アイル・オブ・タヒチ」と変え、
ホノルルとタヒチ間の連絡船(機?)として利用されていたものです。

就航中たまたまオーバーホールとメンテナンスのためにここオークランドに飛行してきたのですが、
ちょうどそのころボーイング707旅客機が出現したため、タヒチ行きそのものが廃れてしまいました。
そのまま彼女は行き先を失ってしまったというわけです。

というわけで彼女の最後のフライトは、サンフランシスコベイを飛び立った1958年になりました。
その後ハワード・ヒューズ協会がこれらの機体を購入し、彼女と二人の姉妹はその管理下に置かれたため、
それ以来一度も空を飛んでいません。




飛行艇のお腹。
川西航空機が開発した「波消し装置」のようなものは全く見えません。
軍用機ではないので重量の点やスピードを出さないことが前提となり、
従ってそのような対処もそう必要ではなかったということでしょうか。



人の命を乗せている割には作りが雑な気が。
フロートのアップ写真を撮らなかったのが悔やまれます。
どうして上部にこれだけ穴が開いているのでしょうか。



飛行艇を支えている台車?
飛行艇の機体の端が、これにめり込んで潰れています(-_-)

世界でたった二機しか現存していないこの貴重な機体をこんなにぞんざいに・・・・・・・。
歴史的に貴重な機体であるからもっと大事に保存しろ!と折あらば
鹿屋の二式大艇保存方法の向上を訴えているエリス中尉ですが、
このようなものを見せられては、「航空機先進国のアメリカではどうこう」
などと口が裂けても言えなくなってしまうじゃないですかー。

さて、ハワード・ヒューズの所有として、どこかにしまいこまれていたこの飛行艇三姉妹。
10年ほど経った1969年に、三機まとめて1500ドル(かつての一人分の片道料金!)で売却され、
サンフランシスコとリッチモンドのあいだのはしけ(船代わり)として運行していました。

リッチモンドはサンフランシスコの半島太平洋側の地域で、
現在は中華系に乗っ取られて悲惨な眺めになっている地域ですがそれはともかく、
昔はともかくこの時代に、車で行った方が早そうなルートを
わざわざ海から行く意味が少しわたしにはわからないのですが・・・。

1973年には三姉妹のうち二機がスクラップにされ、一番状態の良かったこの機が生き残ります。

その後飛行機雑誌の広告に使われたりして、リッチモンドからオークランドまで
「トウイング(牽引)」され、このソレントは、1990年からここ、

ウェスタン・エアロスペース・ミュージアム(ここの正式名称)

に展示されているというわけです。

ところで、インディアナ・ジョーンズシリーズの「レイダーズ・オブ・ロスト・アーク」
この飛行艇が撮影に使われました。
インディがネパールに向けて出発するシーンです。

 

どうしてこんなにキレイなのかと思った。
これは、映画のロケのためにパラマウントが改装したのだそうです。
写真はインディの座った席。


このミュージアムのお知らせによると、なんと予約すればここでディナーが食べられるとのこと。
メインが2皿のフルコースでおひとりさま夏の特別価格125ドル。
これがお値打ちかどうかはディナーの内容にもよりますが、
万が一予約したのがたった一組で、サーブする給仕に一挙一動見守られながらの食事になっても
決してプレッシャーを感じない方であればぜひお試しください。
英語ですが、メニューを貼っておきます。

Poached Fresh Salmon
(layered with Dill & Baby Leek wrapped in Smoked Salmon 
served with a Fresh and Peppery Watercress Sauce)

Roasted Marinated Chicken Breast
(with Garlic and Herbs) 

Panache of Seasonal Vegetables 

Whole Minted Baby New Potatoes

Traditional Apple and Blackberry Crumble 
with Sauce Anglaise

Coffee & Mints

Selection of Continental Breads and Butter






現在、このソレント飛行艇は世界に二機が現存しています。
その一機が、ここ、アメリカのオークランド。
もう一機は、なんとニュージーランドのオークランドなのです。

しかし「同じじゃないか!」と思うのは我々日本人だけ。
なぜならここアメリカのオークランドは

OAKLAND

対してニュージーランドの方は

AUCKLAND

ええ、英語だとスペルはもちろん発音の違いは歴然なんですって。
日本では同じ表記&発音になってしまうので、区別のため、前者を
US オークランド、後者をNZ オークランドとするのだとか。

我々にとっては「偶然同じ!」だけど、イングリッシュピーポーには、
「え?何が同じなの?」と言われてしまうんですね。



ところで、この飛行艇。
ロンドンからちんたら飛んで、ナイルではワニなどを見たり、
途中ではヴィクトリア湖に浮かんでライオンの雄叫びを遠くに聞いたり・・・・。
ロンドンーケープタウン就航の際は一度も事故を起こしていないみたいですし。

インディアナ・ジョーンズも、さぞエキゾチックでゴージャスな飛行艇の旅を
楽しむことができたんじゃないでしょうか。


・・・あれ?

インディーの時代って、まだソレントってできてなかったんじゃなかったっけ。






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