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自衛隊広報の力〜呉地方総監部訪問記

2016-12-23 | 自衛隊

潜水艦シリーズの最後に「続く」と書いたので、
そうりゅう型潜水艦についてまだ書くのかと思われたかもしれませんが、
そのあと訪問した呉地方総監部での地方総監表敬訪問が終わるまでは
今回の呉訪問記は終わらないという意味です。

が、今日は少し寄り道します。 

潜水艦隊員たちの敬礼に送られて、わたしたちは桟橋をあとにしました。
呉地方総監部訪問の全行程を案内してくれたのは広報の三佐、
運転してくれていたのがやはり広報の二曹でした。

その間この三佐からは初めて伺うことも多く、勉強させていただき、
さらには恐縮してしまうくらいのお心遣いをいただきました。
というわけで、今日は自衛隊のイメージを広報するこのお仕事について書きます。

まず、冒頭写真は、この秋に参加した三井造船での「ちよだ」進水式のもの。
来賓のわたしたちは写真撮影をご遠慮ください、と言い渡されたものの、
周りが皆携帯で撮りまくっていても別に制止されていないので、
まるでスパイにでもなったつもりでドキドキしながら1枚だけ撮った、
とここでもご報告した、あの日に撮られたものです。

「後で写真をお送りしますから」

と写真係も務めていた随伴の広報の方に言われていたのですが、
進水式が終わっても一向にメールは送られてくる様子がありません。
たかがメールを添付するのに一体どれだけ時間がかかるのだろうと思っていたら、
ある日、TOの職場に、市ヶ谷から小包が送られてきました。

この立派なアルバムに、そのとき広報の方が撮ってくれた写真が収められていました。
電球色に写ってしまいましたが、本当はネイビーブルーの布張りの装丁です。

公式に撮られた潜水艦救難艦「ちよだ」が進水していくシーン、
そして、進水の瞬間、「こっちみてくださーい」と言われて撮った写真(右下)、
そして、沖に出てタグボートに押されている「ちよだ」をバックに一枚。

何人分のアルバムを装丁したのかはわかりませんが、この丁寧な仕事。
自衛隊広報の気配りとお心遣いに心から驚き感謝した次第です。

一つ一つの仕事は小さなものかもしれませんが、こういうのが積み重なって
自衛隊に対するイメージが形成されていくのだと思いました。

 

ところで、広報の仕事でもっとも表に出るのが、創作物への協力でしょう。

先日、黎明期の自衛隊映画、「激闘の地平線」を取り上げた時、

防衛庁と協力した映画会社の最初の衝突のあと、メディア協力に関する法整備がなされ、
その後今日に至るという話を取り上げたところですが、自衛隊広報はここ最近だけでも
「俺たちの大和」「永遠の0」「空飛ぶ広報室」「ガールズパンツァー」
そして最新は「シン・ゴジラ」などで創作物に協力してきました。

自衛隊の広報の目的が何かと言うと、一にも二にも自衛隊への理解を深め
入隊希望者の増加を図ることです。
これは自衛隊に限らず普通の会社でも
広報の役割の一端であります。

今回わたしたちをエスコートしてくれたのが広報担当であったというのも、
この訪問が一般人への自衛隊の理解を深めてもらうための広報活動である、
という位置付けの上に計画されたことだったからに他なりません。

 

さてところで、潜水艦の話は終わりですが、この広報活動と絡めて
皆さんに潜水艦の一般公開情報をお話ししておきましょうかね。

「広報活動の一環として潜水艦の中を見せる」

というのがいかに効果的であるかは、今回の当ブログにおける
「そうりゅう型潜水艦シリーズ」に
対する関心の深さにも表れていたと思うのですが、
それも潜水艦が一般には秘密の塊であり「鉄のカーテン」に隠された存在
であるからです。
隠されているからこそ見てみたい、それは人の持つ自然な欲求なのです。 

そこで!

自衛隊広報に成り代わり、不肖このわたくしめがここで宣伝してしまうのですが、
近々、岡山で潜水艦の中を見学できる計画があります。


岡山というのは呉と阪神基地隊の谷間のようなところにあって、
海上自衛隊のプレゼンスがイマイチ強くないというお土地柄です。
ここだけの話、左翼思想の盛んであった歴史があり、(古くは岡山大事件とか)
自衛隊リクルートに関しては、なかなか大変な場所でもあるらしいのですが、
今回、岡山強化策として?呉地方総監部が打ち出した広報イベントというのは、
わたしが見学した、このそうりゅう型潜水艦を岡山に持ってきて、
招待された一般の方に向けて内部を公開するというものです。

しかも、この企画、大変画期的。
岸壁ではなく沖のポンツーンに潜水艦を繋留して、そこまで見学者を
ボートで連れて行くという今までにない企画なのです。

わたしごときがなぜそんなことを知っているのかというと、
ただその話を企画の段階で聞いたからですが、あまりそこは追求しないでください。

さて、それではその参加者をどうやって集めるかです。

「一般公募しますと、いわゆる”マニア”が詰めかけてしまいますので、
やはり優先順序としては地本が厳選した、自衛隊入隊を考えている青少年になります」

あーわかる。
わかりますよー。

前述の映画などへの協力も、自衛隊側としては自衛隊に対する理解を深めること、
というのがもちろん期待するところなのですが、自衛隊イベントで必ず見る
ハイスペックカメラ持参の熱心すぎる「マニア」たちは、はっきり言って
自衛隊入隊とは関係なさそうな人の方が多いんですよね。

 

ところで話は変わるようですが、自衛隊の映画やゲームに対する協力が、
一般の自衛隊に対する関心を呼ぶことは十分認めながらも、
それはあくまで関心であって理解ではない!と言い張る人たちがいます。

 

たとえば、ハフィントンポストの記事、

自衛隊の広報が軟派傾向に 「永遠の0」や「ガルパン」に協力

では、

大衆文化でソフトにくるむ宣伝手法には、軍隊という自衛隊本来の姿が
正確に伝わらない、と冷ややかな反応も少なくない。 

などと、業界ではおなじみ反日左傾記者がこれらに疑問を呈しています。
ちなみにこの下線部分は

=〜とわたしは冷ややかにこれを見ている

という意味ですからね。念のため。
この記事では、わざわざ記者はアメリカの一学者の意見を取り上げて、 

「あいまいでかわいいイメージは、若い世代の共感を得やすい」が、
それが国防の強化という理解につながるかというと「ノー」だ。
「評価が高まっているのはあくまで震災の影響。
米国と違い日本には、自衛隊を戦うための組織と肯定的に受け止めるような考え方はない。

と無情にも言い切っております。

そういえば、最近たまたま元中の人からいただいたメールに、

「自衛隊を支持する方の割合が98%を超えるというアンケート結果があるものの、
それは決して国を守るということがいかなることを意味するのかまで
理解した結果ではありません。」

防衛=人殺し=悪、という幼稚でステレオタイプな思考が、
わが国では大手を振ってまかり通るのです。」

という文がありました。
書き手の立場の彼我は違うものの、この意見とハフポストの記事は、
奇しくも同じ日本の自衛隊に対する意見の一端を言い表しています。 


それは現実として認めるものの、この考え方がなぜか

「自衛隊のサブカルを取り込んだ広報活動は無駄」

という結論にウルトラCでなってしまうあたりがわたしは気に入りません(笑) 
ハフィントンポストというのが実は、

「外人様がこういってるぞ!という書き方で日本を非難する名前を変えた朝日新聞」

であることを踏まえながら、このあたりにこまめに突っ込んでおきましょう。



この計画について伺った席で、同席の地元財界の大物氏がこんな風に言いました。

「若い時、特に子供が持つ感受性を大事にして欲しいですね」

この方は中学生の時に地元の港にアメリカ海軍の駆逐艦が入港し、

「ギブミーチョコレートをしに行った」(笑)

というのは多分嘘で、学校の先生が英語の勉強になるから行ってみなさい、
と生徒たちに勧めたので公開された軍艦に乗ったのだそうです。

「アメリカなんか、とそれまで思っていたのに、その日1日の経験で
すっかりアメリカが好きになってしまいましたね」

なんでも、駆逐艦の乗員は皆陽気でフレンドリーで、実際にお菓子もくれ、
こんな友好的な人たちを嫌う理由などないと思ったとか。

つまり自衛隊への理解を深めるためには、年寄りやマニアはほっといて、
(とはおっしゃってませんが)できるだけ若い層の直感に訴えかけることが大事、
というのが、この方の自衛隊広報に対するアドバイスでした。

自衛隊広報が力を入れているのがまさにこういうことです。
サブカルに参入するのも、装備の萌え化に快く協力するのも、
それが年若い人々が支持する文化であり、ターゲットは彼らだからです。

 

ハフィントンポストに寄稿したロイターの記者は、改憲反対の立場から
自衛隊の存在を否定するためにこの記事を書いているにすぎません。 

「いかにイメージをよくしても軍隊は軍隊、理解など得られない」

と人の言葉を借りて力強く言い切っていますが、これが彼の言いたいことの全てです。

 

ところで繰り返すようですが、自衛隊の広報の目的は一般の理解を深め、
自衛隊に対するこの記者の持っているような頑なな意見を世間から払拭し、
青少年の入隊につなげることであって、この記者が言うように、

自衛隊が戦争ができる軍隊であることを理解させるためではないのです。

もそも、彼らの言うところの「戦争ができるようにする」というのは、
(かなりこの一言にも突っ込みどころはありますが今はさておき)
政治に関与しないことを旨とする自衛隊が決めることではありません。

記者は自衛隊の広報戦略をその存在否定の立場から無駄と決めつけますが、
その目的とするところの認識においてまず大いにピントがずれているのです。

わたしがこのハフポスト記事をことわざで表すならそれは

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」

というところでしょうか。(ちょっと違う?)


それにこの記事のタイトルもかなり変です。

「自衛隊の広報が軟派傾向に」

意味もはっきりした定義もなく、決めつけてレッテル貼りをする手法は、
古色蒼然たる左翼のやり方で相変わらずブレてないなあと思ってしまうわけですが、 
そもそも自衛隊の広報が「硬派」だったことが一度でもあったのかと(略)

記者はこの言葉を非難の意味合いで選択しているようですが、
官公庁のポスターが普通に萌え絵を採用し、自治体のゆるキャラは
経済活性化の担い手を務め、次期オリンピックのプレゼンテーションでは
首相がゲームの主人公に扮する国で、今更軟派硬派とは何を言うやら。でございます。
 

ところで、自衛官の自衛隊入隊の動機として案外多いのが
(当ブログ読者のご子息にもおられますが)「自衛官に憧れて」です。

二次的キャラでのイメージもさることながら、青少年の憧れを誘う
実際の自衛官のかっこよさをアピールすることも広報の大きな仕事です。

そういう意味で多大な貢献をしているのが自衛隊音楽隊であることは
一度でも音楽まつりを実際にみたことがある方なら賛同していただけるでしょう。


そこで!

呉地方総監部では、岡山での大々的な呉音楽隊のコンサート
(もちろん岡山出身の三宅由香莉三曹の参加予定あり)を
来年中には実施することを予定しております。

岡山近郊の方、ぜひその時には脚をお運びください!

 

いったいあんたは何の立場で宣伝しているのだと言われそうですが、
その会議の時に現場にいた関係上、この呉音楽隊コンサートについても

我が事のように成功を祈念する次第です。

とりあえずは、本ブログが自衛隊広報のささやかなる一助となればいいなと思いつつ。
 

 続く。