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朝霞駐屯地見学記~戦車と自走砲と装甲車

2014-07-24 | 自衛隊

地下指揮所の見学が終わり、朝霞駐屯地にある広報館、
通称「りっくんランド」の外庭に出ました。

ここには、陸自の現役戦車、榴弾砲、自走砲などが、
所狭しと展示され、しかも触り放題。

基地公開などで装備を見ることはあっても、大抵柵が周りに廻らされて、
それ以上は近づくことができません。

しかしここは、完璧に戦車たちが休業状態で展示されているので、
(動的展示は行うのかもしれません)

ぺたぺた撫でたりさすったりしようが、頬ずりしようが
—どうしてもしたければですが—、あなたの自由なのです。

前々から洞察しているように、多くの男性には、女性からは
理解の範疇を超える戦車と戦車的な装備への強い執着があるようなので、
もしこういうこと(頬ずり)ができるなら、わざわざ来てみよう、と
思う人ももしかしたら中にはいるかもしれません。

それはともかく、わたしたちはこの戦車的な装備群を、
陸自の現役自衛官のゴージャスな
案内付きで見学したのでした。




74式自走105mm榴弾砲

「自走式榴弾砲と戦車は、違うってご存知でしたか」

K1佐の問いに、わたしは黙っていましたが、TOは
知りませんでした、と素直に返答しました。


渡米して10日住んでいた町、フラミンガムのタウンホール前に
Howitzerと表記された銘板がついている「大砲」がありましたね。



息子と共に「ハウイッツァー」だと思い込んでいたところの(笑)
「ハウザー砲」であったわけですが、このハウザーとは、
榴弾砲の英語です。


榴弾砲、いう言葉の定義は、

「近いところに高く砲弾を撃ち上げる砲身の短い先込め砲」

となっています。

「しかしどう見てもこれは戦車ですよね」

とTO。
必ず牽引できるように車輪がついているのが榴弾砲だけど、
ただの榴弾砲が「自走」できるようになったものがこれなのだよTO。

自走させようとすると、どうしても形は
「戦車」と同じになってしまうってこと?

「戦車は自分で走り回って砲撃したり、動いている目標を撃ったりできますが、
自走式は遠くの目標に向けて砲弾を撃ちます」

さすがK1佐の説明はわかりやすい。
後方基地から狙うのが自走砲、前線を走り回るのが戦車ってことでいいですか。

しかし、74式は前線の部隊を支援するための小回りの聞く榴弾砲、
という観点で開発されているのだそうですね。

実は戦車と自走式の境界線は限りなく曖昧の模様。


 
中距離多目的誘導弾

このトラックが「誘導弾」つまり「弾」と称されている、
という法則は、つまり「自走砲」と同じで、

「車輪の部分は本体(砲)を動かすためにある補助」

ということから派生しているのだと思われます。
「89式」などの「式」という名前がついていないのは、これが
制式された装備ではなく、部隊承認で採用されるからだそうです。

この装備は「対船艇・戦車ミサイル」ですので、基本的には
自走砲のカテゴリに属するものなのですね。

 

誘導弾発射の瞬間(wiki)

誘導の方式は光波ホーミング誘導で、目標が発する光波を検知し、
その方向に向けて操舵することで目標を捉えるものです。

対船艇・戦車となっていますが、市街地のゲリラ戦も
想定しているので、目標は人間も可、だそうです。
 


ところで、この誘導弾の下にある説明プレートには、

「展示物の上に登らないで下さい」

と書いてあります。
当然と言えば当然ですが、逆に言うと、これは

「触っても舐めても頬ずりしてもOK」

ってことです・・・・よね。




87式自走高射機関砲
 
愛称「スカイシューター」と書いてあります。
これを見て わたしはかねがね疑問に思っていたことを
この際K1佐に聞いてみることにしました。

「スカイシューターという公式名称は部隊で使われているんですか?」 
「現場ではガンタンクと呼ばれています」
「どうして名称が一致しないんでしょうね」
「制式と同時に決めたというだけですからね」

やっぱり、愛称というのは最初から決めないで、
自然発生的に現場から生まれるものを採用する方がいいのではないかな。

しかし、この機関砲の場合、部隊でついたもう一つの愛称が

「ハエたたき」
(高射、即ち航空機を撃墜するものだから)

というものになってしまったらしいので、
なんでもかんでも現場主導というのもある程度考えものですが。



94式 水際地雷敷設装置

遠くから説明していたとき、K1佐は最初、

「あれは橋梁架設のための車両で・・・」

とおっしゃるので

「YouTubeでそれが仮設している課程を見ました!(以下略)」

と盛り上がりながら近づいていったら

「あ、すみません、橋梁架設車じゃなくて地雷敷設車でした」

案外陸自の佐官でも専門でなければ間違ったりするのね。

「船みたいですね」
「水陸両用車ですから」

こんなタイヤがついたものが浮かぶとはとても思えないのですが、
実際にも東日本大震災の際には、海上での行方不明者捜索に陸自から投入され、
その際には地雷の代わりにダイバーを乗せて出動したそうです。



後ろのはしご段のような部分に敷設する地雷を仕込むのですが、
この写真に見える黄色い円盤形の物体は地雷で、
沈めて使う水際地雷I型がまだ搭載されているようです。
勿論万が一にも作動しないように展示してあるのでしょうが。

水際への地雷敷設、というのは取りも直さず専守防衛のこの国に

「敵が上陸してきた場合」

というのを想定しています。

国際社会には「対人地雷禁止条約」というものがありまして、これは

「いくら戦争でもターゲットが人間である武器はやめようや」

ということが決められた条約で、じゃあ普通の地雷は
ターゲットを船舶や車両と謳っている限りは人道的にOKなのか?
という矛盾を感じないわけにいかないのですが(笑)
とにかく、敵の着上陸侵攻阻止を防衛ドクトリンの骨子の一つとしている
我が日本においてもこれを粛々と批准したわけです。

問題は、国連参加国192カ国のうち批准国は151カ国で、
条約を拒否している国の中には

中国
韓国
北朝鮮

がきっちり含まれているということです。
因みに

アメリカ・ロシア・インド・ベトナム・インドネシア、

また中東の殆どの国が拒否しています。
対抗するために日本も拒否しろ!などとは全く思いませんが、
取りあえず日本に敵対している三か国が
すべてそういう姿勢でいることだけは認識しておくべきでしょう。 




89式装甲戦車

このフロントにある四角い4つのグリルのため、
機種を判別するのに少し手間取ってしまいました。

前にも書きましたが、これも防衛省の愛称は「ライトタイガー」、
現場では単に「FV」と呼ばれているようです。

よかれと思って決めたかっこいい愛称も、装備として日常的に使う隊員には

「いちいちそんな中2っぽい名前使ってられねー」

みたいな、つまり気恥ずかしさが使ってもらえない原因じゃないでしょうか。
この問題に深く取り組んでいるエリス中尉の私見ですが。

ところでこれは「装甲車」というわけですが、
キャタピラと砲身がついていたらとりあえず戦車、といってしまう
大抵の人間には、自走砲と戦車の違いがわからず、当然

「装甲車と戦車の違い」

も分からない思われます。
ついでに説明すると、「装甲車」はメインが「装甲」つまり
防御の意味が強い、即ち主目的は

「人員輸送」

にあるということだけ押さえればいいかと思います。
兵員輸送車に安全のために装甲したものであり、搭載している武器は
あくまでも自衛のためのもの、というのが基本です。

兵員輸送用ならばタイヤでもいいじゃないかと思われますが、
基本戦車と行動を共にし、一緒に戦地を走り回るので
キャタピラを装着しているわけです。

このFVは「歩兵戦闘車」ともいい、人員輸送だけでなく
積極的な戦闘参加を目的ともしており、搭載火砲も戦闘用です。

主砲である35mm機関砲だけでなく、7.62mm機関砲、そして
対戦車ミサイルも装備しているのです。




96式装輪装甲車

これはわかりやすい。
兵員を運ぶための装甲車で、機銃は自衛用です。


ところで、この装甲車(愛称クーガー、現場名称96)、
 大きな日本の旗がペイントされています。



アラビア語で書かれているのは「日本」。
そう、イラク派遣に使われた装甲車なのです。

こういうのを見ると、日の丸のアイキャッチャーとしての力は、
どんな国旗よりも強烈にアピールすることを実感します。 

ちなみにこの日お会いしたK1佐は、陸幕長の副官時代、
イラクに陸幕長とともに行っておられます。

わたし「ということは、あのときおられたんですね?
 ムバラク大統領に暗いうちにゴルフ場に連れて行かれたとき」
TO「松明を持った人が走っていって、そこに打てといわれて、
 明るくなって見たらコースの両側に銃を持った兵士がずらりと」
K1佐「もちろんあのときわたしも一緒でした。
 焦りましたよ。
 帰国の飛行機の時間がせまって気が気ではなくて」

ムバラク大統領なら飛行機の時間を遅らせることもできたとは思いますけど。



これがイラクに行っていたんだなあ・・・。

「一人でも自衛官がイラク派遣で殉職したら、
わたしは腹を切るつもりでした」

K1佐の上官だった元陸幕長の言葉がよみがえります。

戦車を撫でたりさすったりする趣味はありませんが、

思わず、白地に赤く描かれたあまりにも鮮やかな日の丸を手で触ってみました。

この装甲車に乗った自衛隊員が、この日の丸によって護られたことも
実際にあったのかもしれない、と思いながら。



続く。