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米軍基地探訪記~耐Gスーツとコーヒーカップ

2014-01-27 | 航空機

岩国の海兵隊基地に、ホーネットのパイロットブラッドとアンジー(仮名)
の夫婦にご招待を受け、行って来た話の続きです。

実はこの後厳に写真を撮ることを禁じられたシュミレーター室に行きました。

自衛隊はどうか知りませんが、少なくともアメリカ海兵隊の装備している
ホーネットドライバー用のシュミレーターというのは恐ろしく精密で、
 当たり前ですがその操作は実物と「全く同じ」なのだそうです。

シミュレータールームに入ると、部屋はコクビットを模したシミュレーター部分と、
それを別のブースで監視するコーナーに別れています。
そちらにはいかにもIT系らしい眼鏡をかけたエンジニアが配備しており、
我々が入っていきブラッドが声を掛けると、前もって聴いていたらしく
我々に愛想良く挨拶をしました。

まず、シートには息子が座りました。
シートのまわりはパネルのようなもので囲まれており、
座ってからそのパネルを閉じると360度スクリーンとなります。

その空間に大人4人と(殆ど同じ大きさだけど)少年一人が入り込み、
一人のシュミレーター操縦を至近で鑑賞することになりました。 

アンジーに前もって「やったことある?」と聴いたところ、
「やったことあるけど、すぐに墜落した」という返事。
何となくわたしもすぐに墜落しそうな予感がしていたので少し安心しました。

息子の機はテイクオフ。
横でブラッドがあれこれ口頭で指示するのですが、さすが息子は
その指示をちゃんと聴いてその通りに操縦桿を操り、中々うまい。
墜落することなくちゃんと着地も決め、得意げにシートを降りました。

「じゃ、次」

ブラッドがわたしに座れ、といいます。
しかし、座ったとたんわたしにはかなり問題があることが自分で分かりました。
息子はブラッドの指示を瞬時に理解しその通り操縦する、
ということができる程度に英語を理解しますが、わたしの場合、
英語を日本語に頭で翻訳して、そのあとその通りに動かす、
という具合に命令が操縦に反映されるのに彼よりも確実に遅くなるのです。
しかも時々、普通にしゃべっていれば「パードン?」と聞き返すような状況でも
聞き返せず、そんなことをしているうちにホーネットはどんどん高度を下げ、という具合。

つまり英語力の無さが操縦のミスにつながり何度も墜落する始末。

山口湾?に浮かぶ船を攻撃するように指示が出たのですが、全くかすりもしませんでした。
まああれは民間船だから、攻撃しちゃいけないですけどね。

そのあとブラッドは「じゃ次」とTOに振ったのですが、TOは
「いや、いいです」となぜか遠慮モード。

わたしが墜落を繰り返したのを見て怖じ気をなしたのかもしれません。
するとブラッドは

「いいんですか?たぶんこんなチャンス一生に一度だけですよ」

うーん。そんなもんかな。そんなものかもしれない。
というか、結構貴重な体験をさせていただいたということなのね。
その一言で俄然やる気になったTO、わたしに続いて操縦席に。

息子ほどではないけど、なかなかやるではないの。
少なくともわたしよりブラッドの指示がちゃんと聴き取れているってことね。

皆で会話していると、一番よくしゃべるのがわたし、TO、息子の順で、
一見わたしが一番流暢なのですが、実は英語の理解力はこの反対。
シミュレーターの成績もきっちりその順番でした orz

さて、楽しくシュミレーター体験の後は、ブラッドのスコードロンルームなど、
本来ならば日本人の見学者には絶対に見せてもらえないところにご案内だ。
その目的というのが耐Gスーツを着てみること!

いや、わたしじゃございません。

息子にこれを着せてあげる、と案内のブラッド大尉の大盤振る舞い。
航空隊のロッカールームにまず案内してもらいました。



まずカーキ色の、釣りのときにすっぽりと履くようなズボンを一番下に。
このズボンは、背中のところに大きなベルクロがあるのでそこで固定。
これなら瞬時に脱ぎ着できて便利です。
太ってもサイズフリーだし。



ポケットやらなにやら、いろいろ付いているものを
まず床において、



脚を入れ上に立ち、



一気に肩まで引き上げる・・・・・と。
これはベストの部分だったのか。





お尻に耐Gを加える必要はないんでしょうか。
それともトイレとか、そういう関係でこの部分はオープンになっているんでしょうか。
・・・・たぶんそうだろうな。
これをトイレの度にいちいち外したり降ろしたりは、絶対に無理。



ネックの後ろには衝撃で膨らむ救命クッションが出そうな感じですね。





ヘルメットとゴーグルもつけてフル装備。
部屋が狭かったのでかっこよくアオリで撮ってやれなくてごめんよ息子。
ヘルメットも迷彩のカバーが付いていました。



ヘルメットには変な落書きをしている隊員もいます。
わたしが

「洗濯って、する?」

と聴いたら、よっぽど意外なことを聴いたのかブラッドは

「え?」

と聞き返し、その後笑って、

「No・・・匂い嗅がない方がいいよ」



映画に出てきそうなブリーフィング・ルーム。
飛行機のシートそっくりのチェアのカバーには、
偉い人だけ?名前が刺繍されて専用席になっています。 



ホワイトボードの下にはブリーフィングで使う模型に棒が付いたもの。
うーん、これミッションの説明なんかのとき便利そうですね。 


そして、さすがはアメリカの航空隊だなあと思ったのが、これ。



なんとポプコーン製造機が。
アメリカではホテルや、洗車場の待合室にこういうのが置いてあり、
自分で勝手にすくって食べるようになっていますが、
航空隊のブリーフィングルームにまであるとは知りませんでした。

どうも機械の下には瓶詰めの調味料やなんかが装備してある模様。

ケースの表面になにか貼ってあるので見たら・・・



警告!

「怒りのコーン」は、内出血や他の深刻な症状を引き起こします



いやー、わたしはアメリカ人のこういう

「どんなときにもジョークを言っていないと死ぬ体質」

って結構好きですね。
ハリウッド映画でよくぎりぎりの場面、冗談をかましているのを見るけど、
あれは決して映画的な表現だけでもないみたいです。

このどでかいポスター、どこに在ったと思います?
ブリーフィングルームの隣には会議室が二つあるのですが、
その一つ「中国の間」に飾ってありました。

「これ、意味わかる?」

とブラッドに尋ねると知らない、というので

「American invaders must lose」

と翻訳して差し上げると、ブラッドは

「Oh・・・・」



これは説明する自信がなかったので黙っていましたが、
「越南」はベトナム、美帝はアメリカ政府?
右側はアメリカに対抗するために軍部の力を支持しましょう、
ということを言っている・・・・のかもしれません。

漢字だから中国のものかと思いましたが、どうやら
全てベトナムの作ったものであるようです。
しかし、少なくともここのアメリカ人たちはこれを中国製だと思っているようでした。

その証拠。



とほほ。
二つある会議室の一つが「チャイナルーム」。
ドアに巨大な五☆旗が・・・・。

「米国侵略者は必ず負ける」


って、ベトナム戦争ではその通りになったからなあ・・・。
知らないでやっているんだとすれば痛い。

と思ったらもう一つの部屋は・・・ 

「イラクの間」

・・・・・・・・・・・・・・・・。

わざわざこんなジョークをかますために、こんな大きな
敵国?の旗をドアに貼り付けられるアメリカ人に嫉妬。

自衛隊では100年経ってもおそらく見られないジョークでしょう。
嫌味をいうわけではないけど、

「敵国から日本の島を奪還するという模擬訓練」

ですら、日本の旗を出せなかったくらいですからね・・・。
こんなダイレクトすぎて逆に三回転捻りで元の位置みたいなジョークは、
おそらく日本人、とくに自衛隊には逆立ちしても、無理。

さて、中国とイラクの間の外には、コーヒーを飲まないと
これまた死んでしまう体質のアメリカ人のために、会議のときに
使用する「マイカップ」置き場がありました、



皆でお揃いのカップを作ったらしく微笑ましいのですが、
一つづつ名前が入っているので「マイカップ」です。

コンソールの上に置いてあるのはおつまみのストリングチーズ。

全く会議とか大学の授業とか、アンタらアメリカ人はちょっとの間くらい
ものを飲み食いするのを我慢することができんのか。

しかも、このカップですが、信じられんことに皆「洗わない」ようなのです。
コーヒーを飲み干したらどうもそのまま掛けてしまうようなのです。



証拠写真。

「げー、汚い~」

内心わたしはつぶやきましたが、アンジーもこの光景にあきれかえって

「Boys・・・・・・」

ブラッドは

「いやぼくはちゃんと洗ってますよ」

と一生懸命言い訳しておりました。
アメリカ人、若い男、飛行機乗り。
とくればそういうことに構わなさそうなタイプ役満ってかんじです。

我が自衛隊の皆さんは世界でも傑出してキレイ好きな軍隊として有名なので、
まずこんなことにはならないと思いますが。 




もう一度ブリーフィングルームを通って外に出ました。



コクピットと同じシートがありました。

これもブリーフィングで必要になるのかもしれません。



廊下に飾ってあったコウモリの標本。
ブラッドのスコードロンはコウモリがトレードマーク。
彼らは自分たちのことを「Bats」と称します。
この標本には「Hairless bat」と種類が書かれています。 



そのコウモリを使ったスコードロンマークのグッズが廊下に並んでいました。

ここで購入することができるようです。
なんとわたしたちのためにブラッドはTシャツやカップホルダー、メダルなどと
ここでたくさん購入してお土産にくれました。



掲示板に見える様々なお知らせの中に


substance abuse

というポスターが。
何かと思ったらこれは「薬物乱用」を意味します。
そういえば「ひゅうが」に乗ったときに、食堂で薬物乱用に付いて
注意を促すポスターがあったな。

軍隊という組織の中では色々とストレスや鬱屈も在り、
こういった薬物の誘惑に抗し難い状況も、
人によっては数多く在るのかもしれません。



ところで、シミュレ−ターを我々が一通り体験し終わってから、

ぜひプロのシミュレーター操縦を見たいと思い、ブラッドに

「やってみせて」

と頼みました。
すると、モニター室にいたナビゲーターが出て来て、

「キンタイキョウ・ブリッジをくぐってよ」

とブラッドにリクエスト。

リアルな映像なので、錦帯橋に近づくと皆が息を飲み込んで見守ります。
一航過目・・・・・・失敗。

「やっぱり橋の下をくぐるって難しいんだね」
「複葉機でニューヨークのブルックリンブリッジの下をくぐった
女流飛行家がいたよ。名前は・・・エリノア・スミスとか」
「良く知ってるね~」

そのときエリノア・スミスについて書いたばかリ(未公開エントリ)だったんですよね。

しかし、見事に二航過目、三航過目とブラッドは錦帯橋の下をくぐることに成功。

「すごい!さすがは現役ドライバー」
「ブラッド、次はこのフネ攻撃して!」

民間船だから攻撃しちゃいけないんじゃなかったのかよ。


最初にも書きましたが、このシミュレーターはほぼ実物と同じリアクションなので、
錦帯橋の下を通る操作に成功したというのは本当にくぐれたということらしいです。
しかし実際に錦帯橋の写真を見る限り、橋桁が特殊で、桁と桁の間が狭いので 
おそらく実際にくぐるとなればブルックリンブリッジより難易度が高いのは間違いありません。 

にしても、ブラッド、すげー。



(続く)