大阪で行われている第42回日本脳卒中学会学術集会にて標題の講演を拝聴した.循環器内科および神経内科立場から,BNPについて検討するもので大変,勉強になった(講師は京都大学中川靖章先生,日本医科大学坂本悠記先生).エッセンスを以下にまとめたい.
【基本知識】
ナトリウム利尿ペプチドは,心臓や血管,体液量の恒常性維持に重要な役割を担う.
ナトリウム利尿ペプチドファミリーは3種類存在し,我が国の研究者により発見された.
ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)
CNP(C型ナトリウム利尿ペプチド)
ANPは主に心房から,BNPは心房,心室(心室>心房)から分泌される(心房からは10%程度,このため心房細動でも上昇する).
BNPは主に心室から,壁応力(伸展ストレス)に応じて遺伝子発現が亢進し,速やかに生成・分泌される.
BNP遺伝子から転写,翻訳後,BNP前駆体ができ,それが切断され,生理活性をもつBNP(成熟型)と,生理活性を持たないNT-proBNP(N末端型)が等モルで分泌される.
【心疾患とBNP】
心不全では心室からのANP,BNP分泌が増加するが,BNPのほうが変化の幅が大きく,左室機能の指標ともよく相関するため,心不全の診断のための良い指標となった.
日本心不全学会のステートメントでBNPの心不全診断へのカットオフ値が定められている(図).
18.4 pg/ml以上;心不全の可能性は低いが,可能なら経過観察
40 pg/ml以上;軽度の心不全の可能性があるので精査,経過観察
100 pg/ml以上;治療対象となる心不全の可能性があるので精査あるいは専門医に紹介
ある数値以下に維持しなければならないという絶対的な目標値はない.
しかし,同一症例における過去の数値との比較は有用である.
NT-proBNP値については,まだコンセンサスが得られていない.
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/c4/c058ed338d1b6bcdb1a3eed12b1ebbf2.jpg)
呼吸困難の原因診断も有用である(心疾患で上昇し,呼吸器疾患では上昇しない).
急性心筋梗塞後のBNPの経時変化は2峰性である.
弁膜症,心筋症(DCM,HCM)でも上昇する.
僧帽弁狭窄症では,DCMと比べてBNPは上昇しにくい.
HCMは心筋量が多いので著明に上昇しうる.
【心房細動とBNP】
心房細動では,発作性,および持続性のいずれも100 pg/ml前後まで上昇する.
発作性心房細動では,洞調律に戻るとBNPは低下する.
経時的にBNP値をフォローすることによって,発作性心房細動のイベントや,心房細動の慢性化を予測することができる(Tsuchida et al. J Cardiol 2004;44,1-11).
【BNP上昇に影響を与える心臓以外の因子】
・胸部Xpにおける肺うっ血の存在
・高齢
・腎機能障害(BNPは腎でクリアランスされるため)
・BMI低下(脂肪細胞はクリアランスに影響する,BNP遺伝子発現にも影響する)
・炎症反応(心筋炎で著増)
・その他(貧血,critical illness,細菌性敗血症,重症やけど等)
血中には生理活性の異なるProBNPも存在する.この存在割合も臨床像に影響をする可能性がある.
【脳梗塞とBNP】
脳梗塞急性期では入院時にBNPが上昇する症例が6割程度あり,発症4週後には低下する.BNPは脳梗塞後,経時的に変化しうる.
病型分類では,心原性脳塞栓症において明らかな上昇が見られる(カットオフ値は140 pg/ml程度).心原性脳塞栓症で上昇する理由は,心房細動の関与,もしくは器質的心疾患(心筋梗塞,DCMなどる)の関与の両者が考えられる. ➔ 心原性脳塞栓症の補助診断として有用である.
来院時に洞調律である患者さんにおいても,発作性心房細動を予測する因子となる.
心房細動とBNP高値をもつ症例はtPA療法で再開通しにくい ➔ 血管内治療を要する症例の予測に役立つ可能性がある.
BNP高値は脳梗塞患者の院内死亡と関連する(BNP高値は脳梗塞の重症度と相関し,また心不全を合併するため).
心房細動患者でのBNP高値は,脳梗塞再発と関連する(心不全による心臓内血流うっ滞は血栓形成傾向を促す)
【基本知識】
ナトリウム利尿ペプチドは,心臓や血管,体液量の恒常性維持に重要な役割を担う.
ナトリウム利尿ペプチドファミリーは3種類存在し,我が国の研究者により発見された.
ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)
CNP(C型ナトリウム利尿ペプチド)
ANPは主に心房から,BNPは心房,心室(心室>心房)から分泌される(心房からは10%程度,このため心房細動でも上昇する).
BNPは主に心室から,壁応力(伸展ストレス)に応じて遺伝子発現が亢進し,速やかに生成・分泌される.
BNP遺伝子から転写,翻訳後,BNP前駆体ができ,それが切断され,生理活性をもつBNP(成熟型)と,生理活性を持たないNT-proBNP(N末端型)が等モルで分泌される.
【心疾患とBNP】
心不全では心室からのANP,BNP分泌が増加するが,BNPのほうが変化の幅が大きく,左室機能の指標ともよく相関するため,心不全の診断のための良い指標となった.
日本心不全学会のステートメントでBNPの心不全診断へのカットオフ値が定められている(図).
18.4 pg/ml以上;心不全の可能性は低いが,可能なら経過観察
40 pg/ml以上;軽度の心不全の可能性があるので精査,経過観察
100 pg/ml以上;治療対象となる心不全の可能性があるので精査あるいは専門医に紹介
ある数値以下に維持しなければならないという絶対的な目標値はない.
しかし,同一症例における過去の数値との比較は有用である.
NT-proBNP値については,まだコンセンサスが得られていない.
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/c4/c058ed338d1b6bcdb1a3eed12b1ebbf2.jpg)
呼吸困難の原因診断も有用である(心疾患で上昇し,呼吸器疾患では上昇しない).
急性心筋梗塞後のBNPの経時変化は2峰性である.
弁膜症,心筋症(DCM,HCM)でも上昇する.
僧帽弁狭窄症では,DCMと比べてBNPは上昇しにくい.
HCMは心筋量が多いので著明に上昇しうる.
【心房細動とBNP】
心房細動では,発作性,および持続性のいずれも100 pg/ml前後まで上昇する.
発作性心房細動では,洞調律に戻るとBNPは低下する.
経時的にBNP値をフォローすることによって,発作性心房細動のイベントや,心房細動の慢性化を予測することができる(Tsuchida et al. J Cardiol 2004;44,1-11).
【BNP上昇に影響を与える心臓以外の因子】
・胸部Xpにおける肺うっ血の存在
・高齢
・腎機能障害(BNPは腎でクリアランスされるため)
・BMI低下(脂肪細胞はクリアランスに影響する,BNP遺伝子発現にも影響する)
・炎症反応(心筋炎で著増)
・その他(貧血,critical illness,細菌性敗血症,重症やけど等)
血中には生理活性の異なるProBNPも存在する.この存在割合も臨床像に影響をする可能性がある.
【脳梗塞とBNP】
脳梗塞急性期では入院時にBNPが上昇する症例が6割程度あり,発症4週後には低下する.BNPは脳梗塞後,経時的に変化しうる.
病型分類では,心原性脳塞栓症において明らかな上昇が見られる(カットオフ値は140 pg/ml程度).心原性脳塞栓症で上昇する理由は,心房細動の関与,もしくは器質的心疾患(心筋梗塞,DCMなどる)の関与の両者が考えられる. ➔ 心原性脳塞栓症の補助診断として有用である.
来院時に洞調律である患者さんにおいても,発作性心房細動を予測する因子となる.
心房細動とBNP高値をもつ症例はtPA療法で再開通しにくい ➔ 血管内治療を要する症例の予測に役立つ可能性がある.
BNP高値は脳梗塞患者の院内死亡と関連する(BNP高値は脳梗塞の重症度と相関し,また心不全を合併するため).
心房細動患者でのBNP高値は,脳梗塞再発と関連する(心不全による心臓内血流うっ滞は血栓形成傾向を促す)