Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

極めるとは鈍感になること

2007-07-21 | 試飲百景
階段を上がって玄関の呼び鈴を押す。午前中に電話をしておいたが、どうも自室へと戻って寛いでいたようだ。出てくるまでに五分ほどかかっただろうか。その間に、従業員と夫婦連れがやって来て、列を為して玄関の前に並ぶ。

入口を探したり、レストランの覗き込んだりしている。面倒な客と居合わせるのはあまり好まない。半ズボンにふてぶてしい態度はいかにも自営業者のような感じもするが、客商売をしているというよりも何とか師などかもしれない。いかがわしい。ワインの試飲に来て人の品定めはしたくないが、その雰囲気はあまり他所では見ない客層なのである。

さて、先代の親仁さんが出て来て、いつものように試飲室へと向かう。早速、約束していたように、2003年産のシュペートブルグンダーを試すが、古い瓶を置いて、新しいものを開けてくれた。

夫婦連れはここでの試飲は始めてのようであったが、座るなり白ワインにするのか赤ワインにするのかと、二人で話し出す。旦那は、赤ときっぱりと言う。

これまた、訳の分からないのに真似をされて手を出されると嬉しくないなと思いながら、試飲を続ける。

素晴らしい色をしている。香りは開けた早々でなかなか広がらない。味は、2002年に比べてタンニンが少なく酸味が高い。因みに、化学的分析値は6.1Gの酸、0.7Gの糖、糖比重106度とあり、それは酸の突出を示している。

あの記念碑的に暑かった夏に、この酸とそれに押さえられたタンニンと更に先日の格落ちのSCと比較しても薄い粘度は一体どういうことなのか?醸造で無く畑仕事の結果の特性なのだろう。するとどうしても、ビオ・デュナーミック栽培の 効 果 を考えてしまうのである。だから親仁さんに言わせると、効果は目に見えていると言うのである。

配合した下草は其々に必要な養分を準備して、ワインは嘗て以上に糖比重を上げていると言うのである。その評価をとやかく言うことは出来ないが、「信じる者は救われるのは真実」なのである。

このワインは、見本市でも史上最高のシュペートブルグンダーと呼ばれたそうだが、酸味が表に出ているのは必ずしも賞賛出来ない。もちろん特別な年のシュペートブルグンダーには相違ないが。包皮の生育や栽培が影響しているのだろうか?

木樽で二年間、瓶で二年間寝かしただけの価値はある。その割りに手ごろな価格であるとも言えるが、偉大なワインを期待する向けのものではない。その分、14.03度(注:換算表からすると糖比重に対してアルコール度が高過ぎる)と充分なアルコールは力強さであるが、反面その透明さに匹敵する繊細さに欠ける。

ふてぶてしい夫婦はこれを特に選んだようだ。力強さがポイントのようである。先日絶賛したものは弱すぎるかと聞いたのだが、どうも印象に薄いようである。そこで気がつくのが、感覚の鈍感である。つまり、極端を求めていくと必ずこれに陥る。そこに至らないものは物足りなくなるのである。すると、その両極にあるもの以外には気が付かなくなるのである。

ドイツの赤ワインは、そうした点からまだまだである。バランスの採れた透明感のある赤ワインはフランスのように作られていない。流石にアルコールが高いだけのものを美味いと言う者は少ないだろうが、土壌の良さと力強さのバランスの採れた偉大なシュペートブルグンダーはなかなか生まれないのである。

因みに、この醸造所のリースリングも、ギメルディンゲン産、ビエンガルテン、モイスヘーレが売り切れ、予約注文のグランクリュ・ホーヘンモルゲンも売り切れていたのである。まだ在庫のあるおかしな香りのリンツェンブッシュの成分分析は、残酸8G、残糖5.4G、糖比重96度と比較的穏やかなものである。

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