Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

趣味の悪くない劇場指揮者

2017-12-08 | 文化一般
発表間近の次期バイエルン州音楽監督である、話題のユロウスキー指揮の中継録音を聞く。ロンドンフィルのオープニングコンサートの模様だった。既にコンセルトヘボウでの協奏曲の動画を見て分かっていたが、楽譜を片手にブルックナーの第五交響曲を聞いた。

結論からすると故テンシュテットなどが振っていたころよりも管弦楽が大分よくなっていて、流石に指揮技術では頂点にいる人の業だと感心する。その職人的技術で玄人評価が高いだけのことはある。問題はその音楽性である。先日のバイエルン放送協会の番組でも「デモーニッシュなどと言われている」と話しがあったが、その静的であり乍ら聴衆を揺り動かす音楽性に注視した。

基本的には、音楽をよく知っていて、流石に二代目の指揮者だけあって、破綻を来すようなことはしないでも十分効果を上げる実力を擁しているということのようだ。だからSWRに任命される指揮者テオドール・クレンツィスの様な非音楽的で恥さらしなことは全く無く、とても質も高く、それどころか風格すら感じさせる。同じような技能があっても如何に音楽に語らせるかどうかの相違だろう。この二人は年代こそ異なるが、音楽的にはとても良い対照関係になる。

とは言っても、ブルックナーの楽譜にアゴーギクなどをさり気無くしっかりと加えてマニエーレンをしている。それが気づかれないような形で、まるで音楽がそのように動いているかのような風情なのだ。所謂クラシックオタクのコンサートゴアーズには受けるだろうが、幅広くはどうだろうか?少なくとも上のブルックナーの場合は、なるほど素晴らしく鳴っていて、味わい深いのだが、この指揮者の演奏ではこうした名曲が特別な意味を放つことはないだろうと思われる ― 要するに比較対照の聞き比べでの対象の域を出ない。

最も期待されるレパートリーはルイジ・ノーノとかの20世紀の古典になるのだろうから、上の様な構成感などもあまり重要ではないかもしれない。そうした期待されるレパートリーとやや古風な演奏実践からすると、やはりこの人は典型的な劇場指揮者タイプだと感じた。劇場の奈落では、そもそも現実的な対応に迫られることからしても、前任者のキリル・ペトレンコ指揮の様な理想的な様式を追い求めるよりも、寧ろ音楽劇場としての最大限の効果が求められるからである。

その証拠にこの指揮者の協奏曲演奏は、ペトレンコのように合わせものであるよりも、表現の可能性を追及しているところがあり、立場は異なってもイゴール・レヴィットの様な音楽性の指揮者であり、共演を越えた演奏をしている。いい舞台を奈落から支えるのにこれ以上の指揮者はいないのではなかろうか?ソリスツが際立つだろう。早速身近でのコンサートを調べてみるとフランクフルトで三月にロンドンフィルを振って、チャイコフスキープロがあった。ネットで購入すると手数料を10ユーロほど取られて、40ユーロを超えた。これは高過ぎると思った。ノーノプロならば払ったかもしれないが、バーデンバーデンでのヴィーナーフィルハーモニカーやゲヴァントハウスよりはるかに高価だ。マネージメントも興業主も完全なマフィア組織である。そこまでの価値はない ― キリル・ペトレンコ指揮コンセルトヘボウよりも少し安いだけである!。

彼らの経歴から、容易にキリル・ペトレンコは劇場指揮者で、ウラディミール・ユロウスキーはコンサート指揮者と誤解している向きは世界中に少なくないが、少しだけでもその音楽の実践を分析すれば、そうした印象はただの蒙昧でしかないと直ぐに結論が下されて、事実は全く逆さまであることが証明される。

最終決定は、賞与などの交渉を終えてその金額などを入れた予算編成とその州議会での承認が必要となるので、体制が整ったキリスト教社会同盟の政治日程次第と書かれている。序ながら、ベルリンのコーミッシェオパーの監督バリー・コスキーが選から落ちてセルジュ・ドルニー支配人推挙となったのは、コスキーがそもそも軽歌劇の演出家であり ― 反吐が出ると悪態をつかれるほどに -、高尚な音楽劇場には向かないということでしかない。バイロイトは同様なカストルフで成功したのだが、こちらは東独のノスタルジーなどを掛け合わせていて、その方の共感も得ることが出来たが、コスキーの悪趣味に共感する聴衆がいるのだろうか?社会同盟でなくとも少なくともあのような悪趣味は受け入れられまい。バイロイト祝祭の趣味の悪いこと極まりない。



参照:
エポックメーキングなこと 2017-12-02 | 文化一般
ペトレンコにおける演奏実践環境 2017-03-30 | 文化一般

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