八月にドロミテでザイルを組む可能性の強い我がライヴァルと登った。一週間前の土曜日はトップロープを確保しただけで、組むのは四月の石切り場以来である。流石になんとかこなしてしまう実力は我がドイツ山岳協会のセクションで唯一だ。
今回は他の行き場所を予定していた。雨上がりの後に乾きやすくて、快適に登れそうな場所を考えていた。そして参加メムバーにあわせて、難易度三級から五級までが充実している岩場を考えていた。しかし前述のライヴァルが前夜から考えていた場所があり、自分自身ではあまり記憶がなく、他のメムバーも合意したので、そこに向かった。羊岩場である。
馴染みのある谷へ入る手前で右の谷へ入るとそこにある。ついてみると、下半部だけでなく、上部も影があって、迫る森で湿っぽい。そのような環境にふさわしく開かれているルートの数々も割れ目を伝わるルートで、手を入れるのも気分が悪い。ドイツの森の砂岩の割れ目なのだ。日本のクライマーは嘗て日本の岩場の湿り気と草木の生えた質の悪さを嘆いたが、このような岩場に比べると必ずしも悪くはない。その相違は岩の質だけであろう。
特にライヴァルの彼が前夜から考えていたのは、苔生えた割れ目から登っていくルートで、実際に蜘蛛の巣が大分掛かっていた。その核心部は、楔を入れて乗り越えていたが、それが用具無しでは回収できずに降り直して自分で回収して貰った。それを乗り越えた上の場所も苔が生えていて、なんともご苦労さんなことである。まるで滝場の横を遠巻きするような感じで湿っぽい。それでも困難度は、四級にしか至らなく、体力も使い神経も使い、更に危険度も備わっている。
だから彼に言ったのは、このような場所を登るよりも更に困難度を上げて、より明晰で美しく手入れの届いた安全なルートを試みるべきなのだ。勿論彼の技術的な限度を存在するのでそこを超えない範囲で選ぶということになと、どうしてもこうした隠れた存在に目が行きがちになるのも分るような気はする。ある意味、私自身が昨年起こした事故への状況の裏返しのものがそこにある。つまり自身の技術的な能力に確証があれば、その限界を超えないように上手に抑制できるということである。昨年の事故はまさにその時点での自己の限界が自身明確ではなく、恐ろしいところでそれを試してしまうところに原因があった。
その後にトップロープで登った割れ目は、オーヴァーハング超えが核心部で、立派な庇の下から見当を付けて手を伸ばすと割れ目の中の手掛かりにがっちりと手が掛かる。それを頼りに身体を乗り出して更に上の手を伸ばすと次の手掛かりに手が掛かる。だから五級にしかなっていないのだが、リードで登るとなる同時に中間支点を楔止めしなければいけないので、苦労である。その上にも一箇所入れるとするともはや苦しい。なるほど技術困難度は五級でしかないのだが、その苦労は少なくともそれ以上である。それだけの価値があるのかどうか?苦多くとも所詮五級なのだ!
それでも、それ以外に二箇所比較的マシなルートで二つの岩峰を登り記帳する。先の前衛の独立方と合わせると、三記帳である。とは言ってもも一つのそれのジャンダルムと呼ばれるそれは頂上がぐらぐらしているのため登頂禁止となっている。なんだかんだと資料を見ているうちに大分以前にここに連れて来てもらっている印象が浮かんできた。これもデジャヴではないはずだ。
夏至から知らぬうちに十日も過ぎてしまった。日曜日から再び暑くなるはずだったが、その日も終日薄曇のような按配だった。そして、もはや夏の太陽でないことに気がついた。晩夏が始まったようだ。夏のシーズンは中盤戦である。今年の夏はとても短そうである。
参照:
疲れが溜まる夏至のあと 2010-06-26 | 暦
火曜の夜の乱痴気 2007-02-21 | 暦
「聖なる朝の夢」の採点簿 2005-06-26 | 文化一般
知的スポーツへの触り 2013-06-26 | アウトドーア・環境
今回は他の行き場所を予定していた。雨上がりの後に乾きやすくて、快適に登れそうな場所を考えていた。そして参加メムバーにあわせて、難易度三級から五級までが充実している岩場を考えていた。しかし前述のライヴァルが前夜から考えていた場所があり、自分自身ではあまり記憶がなく、他のメムバーも合意したので、そこに向かった。羊岩場である。
馴染みのある谷へ入る手前で右の谷へ入るとそこにある。ついてみると、下半部だけでなく、上部も影があって、迫る森で湿っぽい。そのような環境にふさわしく開かれているルートの数々も割れ目を伝わるルートで、手を入れるのも気分が悪い。ドイツの森の砂岩の割れ目なのだ。日本のクライマーは嘗て日本の岩場の湿り気と草木の生えた質の悪さを嘆いたが、このような岩場に比べると必ずしも悪くはない。その相違は岩の質だけであろう。
特にライヴァルの彼が前夜から考えていたのは、苔生えた割れ目から登っていくルートで、実際に蜘蛛の巣が大分掛かっていた。その核心部は、楔を入れて乗り越えていたが、それが用具無しでは回収できずに降り直して自分で回収して貰った。それを乗り越えた上の場所も苔が生えていて、なんともご苦労さんなことである。まるで滝場の横を遠巻きするような感じで湿っぽい。それでも困難度は、四級にしか至らなく、体力も使い神経も使い、更に危険度も備わっている。
だから彼に言ったのは、このような場所を登るよりも更に困難度を上げて、より明晰で美しく手入れの届いた安全なルートを試みるべきなのだ。勿論彼の技術的な限度を存在するのでそこを超えない範囲で選ぶということになと、どうしてもこうした隠れた存在に目が行きがちになるのも分るような気はする。ある意味、私自身が昨年起こした事故への状況の裏返しのものがそこにある。つまり自身の技術的な能力に確証があれば、その限界を超えないように上手に抑制できるということである。昨年の事故はまさにその時点での自己の限界が自身明確ではなく、恐ろしいところでそれを試してしまうところに原因があった。
その後にトップロープで登った割れ目は、オーヴァーハング超えが核心部で、立派な庇の下から見当を付けて手を伸ばすと割れ目の中の手掛かりにがっちりと手が掛かる。それを頼りに身体を乗り出して更に上の手を伸ばすと次の手掛かりに手が掛かる。だから五級にしかなっていないのだが、リードで登るとなる同時に中間支点を楔止めしなければいけないので、苦労である。その上にも一箇所入れるとするともはや苦しい。なるほど技術困難度は五級でしかないのだが、その苦労は少なくともそれ以上である。それだけの価値があるのかどうか?苦多くとも所詮五級なのだ!
それでも、それ以外に二箇所比較的マシなルートで二つの岩峰を登り記帳する。先の前衛の独立方と合わせると、三記帳である。とは言ってもも一つのそれのジャンダルムと呼ばれるそれは頂上がぐらぐらしているのため登頂禁止となっている。なんだかんだと資料を見ているうちに大分以前にここに連れて来てもらっている印象が浮かんできた。これもデジャヴではないはずだ。
夏至から知らぬうちに十日も過ぎてしまった。日曜日から再び暑くなるはずだったが、その日も終日薄曇のような按配だった。そして、もはや夏の太陽でないことに気がついた。晩夏が始まったようだ。夏のシーズンは中盤戦である。今年の夏はとても短そうである。
参照:
疲れが溜まる夏至のあと 2010-06-26 | 暦
火曜の夜の乱痴気 2007-02-21 | 暦
「聖なる朝の夢」の採点簿 2005-06-26 | 文化一般
知的スポーツへの触り 2013-06-26 | アウトドーア・環境
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