Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

アイゼナッハの谷からの風景

2017-07-17 | 
承前)相変わらず新制作「タンホイザー」の六日目の録音を流している。しかし細かに楽譜に当たっての時間的精神的余裕はない。しかし一小節については楽譜を見ないでも確認している。つまり既に言及した第二幕のフィナーレのアッチェランドである。ここをがどのようになるかで全体のテムポ感が変わると思っている。

初日、私が聞いた二日目、そして六日目を比較可能である。結論からすると二日目だけが例外で、初日と六日目は最小のテムポアップが慎重になされている。二日目が事故という訳ではなくて、明らかに生放送には「安全運転」を心掛けたので間違いなさそうだ。当然のことながら、二日目のような急激なアッチェランドを掛けた方がフィナーレ効果は高い。それはテムポアップ以上の内容の強調となるので、圧倒的な意味合いがあった。しかし、アムサムブルが壊れるようなことを敢えてしないことをこの天才指揮者は歌劇場でのキャリアーで学んだようで、瞬時の判断が絶えず働くような職人的な修業がなされていると見た方が正しいのかもしれない。元来の天与の瞬発的な対応力に磨きが掛かっているということになる。

それでは楽譜にはどうなっているかというと、確かにテムポアップの幅はそれほど大きくなく、鮮やかにアチェランドを掛けるかどうかということになるのだろう。楽匠がそのように書いているのだ。しかしここではソリスツの重唱だけでなく合唱団とのアンサムブルがあるので安全運転で「放送事故」を起こさない配慮は当然だろう。この辺りが何回か繰り返すことが可能な制作録音と実況放送との最も異なる顕著なところである。制作録音ならば何通りか録り直して繋ぎ合わせられる。

その反面、この日の演奏では、一つの主要テーマでもある巡礼の歌の重要性が第一幕三場から増している。音楽的には最初は牧童の歌からト調のモデラート84で始まる。伴奏もイングリッシュホルンの一鎖を低弦のピッチカートで支えているだけなのだが、これがとても効果的で、第二幕のフィナーレを経験した耳にはとても印象深い。

この景のト書きには、アイゼナッハの谷から左に眺めたヘルゼルベルクと右のヴァルトブルクとあり、背景にカウベルが流れるとあるが、ここでは教会の鐘が鳴り響く。それが三層の狩りのホルンに導かれた次景へと進むのである。ここにおける演出は背景の日蝕と共に全体の鍵になる。しかしそれは音楽的に整理されて来ているからこそ言えることであり、演出だけを感覚的に判断していてもよく分からないだろう。(続く)

来週20日木曜日正午から放送がある。昨年末に聞き逃したトリノでのキリル・ペトレンコ指揮のチャイコフスキー「悲愴交響曲」の録音が流れる。お昼休みの放送らしい。残念ながら前半のモーツァルトは知らなかったので再放送を聞き逃した。先週の水曜日だった。ベルリンのフィルハーモニカ―で演奏する前のもので生放送を聞いておきたかったものだ。しかし今、後先になるとそれ以下の演奏は聞きたくないと思う反面、ある程度時間が経ったので客観的に比較対象出来るだろうかという気持ちもある。この放送交響楽団もドイツのそれのような技術は無いが、今後も同じように同じプログラムの演奏会を先行して開いていくような様子もあり、気になる演奏団体である。自前の放送があるのが何といってもありがたい。

バーデン・バーデンの次期支配人のことが新聞にあった。現在ドルトムントのコンツェルトハウスの支配人であるベネディクト・スタムパという人だが、そこでピーター・セラーズやラトル指揮「ルグランマカーブル」、昨年のミュンヘンの座付き管弦楽団のツアーなどを執り行っていて、その活動に注目していた。ハムブルクで音楽学も習っている人なので少なくとも現在の支配人よりも芸術的な判断を下すようだ。現在の支配人のマネージメント能力、特にここまで経済的破綻から立て直した手腕は得難いが、引退するその人との協力関係を保ちながら、今後の芸術的な飛躍が期待される。変わりどころでは日本で人気のエサペッカ・サロネンとの関係からバーデン・バーデンでも、夏のゲルギーエフやヘンゲルブロックの両指揮者との関係もさらに深めつつ、新たな枠組みも出来そうで、日本からの観光客にも期待出来そうだ。なによりも、復活祭音楽祭の美学的な枠組みが本格的になるのを希求したい。



参照:
延々と続く乳房祭り 2017-07-10 | 文化一般
母体より出でて死に始める芸術 2017-05-30 | 音
呵責・容赦無い保守主義 2007-11-19 | 文学・思想
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