Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

健康・環境被害とは風評なのか?

2011-03-19 | アウトドーア・環境
放射能物質拡散による環境・健康被害の最新の国連部会の報告原稿の内容紹介が新聞に載っている。私自身大分寝れるようになり、ここ暫く福島の方も落ち着いているようなのでやっとそれを紹介する気持ちの余裕が出来た。これは避難地域や福島周辺、関東一円の住民にとっては最も関心のあるところだろう。少なくとも私自身にとっては、今回の福島の事故は環境汚染、健康被害の面では既に起きてしまったので、気持ちが落ち着いている。この後の最悪のシナリオは、再臨界やメルトダウンの進行から二号機などの釜の爆発的破損による都内での大パニックの発生や冷却プールの更なる強い放射能発散や溶解によって、敷地内から退却を余儀無くされ、手をつけられなくなり、全ての炉から強い放射線が発散し続ける状態が続くか、もしくは幾らか対症療法的に冷却を管理していても先数ヶ月のうちに再び強いマグニチュード8程度の余震が千葉沖ぐらいで発生して再び強い放射能が発生する状態が考えられるだけである。

また、発電所自体の閉鎖が決断されたようだから、ある程度処置された時点で、炉心を大量の砂で埋めてしまう遺棄隔離も検討されているようであるが、少なくとも其処へ行くまでの過程が永く当分は風向きなどによって関東一円も放射能をもった塵などが蓄積していくことには変わりない。前代未聞な不可逆な事象が展開している。だから、その程度の放射線量で一体どのような環境、健康被害が起こるかと言うことに人々の関心が集まる。そこで、燃えた黒鉛の塵としても放射性物質が北半球を廻ったチェルノブイリ原発事故の最新の報告書が最も参考になるだろう。最新と言っても四週間後に開かれるキエフでの発表原稿なので、その最終内容は少し変わるかもしれないと新聞は書く。

つまり冒頭の挨拶である1986年の史上最悪の民間原子力事故の字句が変わるかもしれないというのである。しかし、これも今回は世界に塵を撒き散らすことはないと言われており、仮に再臨界となっても東北関東一円のローカルな事故で納まるだろうとするシュミレーションを信じたい。場合によっては、中部・関西方面へも一時渡航禁止のような最悪の状況もパニックや被災者難民の扱い方によっては起きないとも限らない。もっとも恐れる悪夢の情景である。しかしこれは、刑事訴追や行政訴訟や民事裁判の責任を恐れた東電、管轄官公庁の秘密主義がなければ防げた大惨事なのである。

さて、チェルノブイリ事故では核分裂過程で暴走したために鎮火に時間が掛かり、その作業中に急性の被爆障害で二人の即死、134人の強い被爆のうち38人が死亡、さらに2006年までに19人が死亡した。それ以外のものも白内障や皮膚病、運動障害などに多くの者が苦しんでいる。その数字は決して新しいことはないが、しかし今回の発表では調査対象を従来の三十八万人に対して五十一万人と広げている。同様に環境被害の対象も十五万キロ㎡と、五百万人の居住地域が対象となっている。つまり炉心から480KM半径の地域となる。放射能被害の影響は半径600KM以上を考えるのが通常であるからだ。今回の福島の事故でもその距離以上となれば今後とも平常以上の放射能が検出されないに違いない。しかし、水蒸気爆発による放射能を含んだ塵は風向きだけでなく地形などの影響を受けるので、海岸線と平行する山並みの裾などに集まり、南へ北へとそれが沈潜、浮遊するに違いないから、全方位型の距離の二乗に反比例した放射能の低下ではなくむしろ集中が予想される。

さて、こうした環境被害はチェルノブイリの場合は多くの場所で現在も続いており、其々放射性物質の半減期などを待つしかないのである。例えば30KM圏内の立ち入り禁止地区においては、ヘルムホルツ研究所のヤコブ氏の調査によれば多くの地域で健康被害の基準値となる限度である年間一ミリシーベルト以上の汚染箇所が今でも広く残っていると報告している。チェルノブイリ原発ツアーなどが企画されているようだが、氏に言わせると「これは全く馬鹿げた話」だとなる。また、汚染された地域においても土地の改良や耕すなどして環境を好転されることが大切だと指摘している。要するに農業などを考えれば何世代にも渡って再生していくほかないということであろう。

健康被害に関すると、長い半減期を持つセシウム137は骨に溜まり、ストロンチウムやプルトニウム同位体も注視しなければいけない放射線物質となる。さらに比較的短命で過渡的なヨード131による甲状腺障害は、ミルクの汚染により、当初五百万人とされていたが一千万人に影響が及んでいることが新たに報告された。つまり当初の「暑いヨード」と言われるものの摂取ではない食物連鎖の中での放射線障害となる。

結果として、低年齢での原発事故の影響は甲状腺癌の多発として注目されて、それだけで新たに六千人の健康被害が確認されたと言うのである。以前は、癌によって死亡した人数が二千人だけであったから、こうした若い疾病の数が隠されていたというのである。

その反面、五十万人に及ぶ事故救助人員の状況は、僅かな白血病や白内障の増加だけであったとして、これで多くのチェルノブイリ被害に慄く市民を、そしてまた日本の市民を落ちつかせることが出来ようかとの記事は、まさに玉音放送以降初めて事故に際してメッセージを出した明仁天皇の言葉の効果に似たものを其処に見るのである。


参照:水や牛乳、当然ながら野菜で放射性物質が検出されたようだ。牛乳のキロ300ベクレルはドイツの一部の20の「許容値」に比べれば遥かに大きいが、医学的な見解は様々なようである。しかし今後関東平野の各地で異常な数値が検出されるのは想定内である。



参照:
Der nukleare Ernstfall, Wie viele Opfer?, Joachim Müller-Jung, FAZ vom 16.März.2011
パニックの裏側の集団心理 2011-03-16 | 歴史・時事

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