Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

土人に人気の卒寿指揮者

2017-11-07 | 歴史・時事
新聞一面の最初の小段にはトラムプの日本到着が第一声が書かれている ― これをドイツ連邦共和国の各界の殆どの指導層は皆一瞥する。正確には治外法権の横田基地での第一声だ。その演説の対象は米軍と日本の自衛隊となっていて、意味が分からなかった。そもそも横田から治外法権で他の軍属や諜報員のようにフリーパスで都内に入る、それだけでも国賓として象徴的に異常なのだが ― その途上のハワイでリメンバーパールハーバーを叫んでいる ―、それ以上に、なぜ自衛隊の最高司令官がトラムプなのか理解できなかった ― そのような暴力装置の自衛隊を憲法に明記するなどはあり得ないだろう。まさしく日米の地位協約というのはそういうことを意味するのだ。日本人の一部は琉球人を土人と嘲笑するが、日本人こそが土人であるということをこのことが示している。

ヘルベルト・ブロムシュテットがトーマスキルヘェでロ短調ミサを指揮した映像を観た。NHKの共同制作で今年6月18日に撮られたものである。NHKがつまらない制作を欧州で繰り広げて貴重な聴視料を浪費していることは知っていたが、これは素晴らしい。バッハ週間の最終日なのでMDRかどこかで流れていたかと思ったが、ライプツィッヒの制作会社のもののようだ。2005年の同じような制作がYOUTUBEに上がっているが、今回は合唱団がドレスデンの室内合唱団となっている。観客も恐らく教会の共同体の人が殆どなのだろう、慣れないミサ曲となると歌詞カードを捲っている。同じ意味でミサ曲となるとドレスデンから合唱団を呼ぶ方が歌い慣れているだけ正しく歌えるのだろう。

HD水準では難しかったので高水準で再生して適当に流していたが、12年前の演奏も比べたくなった。管弦楽団は間違いなくこの間シャイ―の薫陶でよくなっている筈で、小編成ながら、間違いなく若返りしているようで、コンサートマイスターもソリスツも先日のバーデン・バーデンの公演で見覚えのある顔が並んでいる ― さわりを聞いただけで全く別物の管弦楽団になっていた。

日本では有名で人気の指揮者と管弦楽団であるが、先日も書いたように西ドイツでは人気が無い。その理由は、西ドイツでは全く活躍していなくて東ドイツでしか仕事をしていなかったことが大きいのだろう。NDRでも東西統一後に僅か二年だけハムブルクでポストを得ている。名門ゲヴァントハウスの楽団が日本ほどには西ドイツでは人気が無いのと同じで、余所者感覚が強いからだろうか。そもそも我々のフランクフルトの会にもバッハ演奏でゲヴァントハウスの登場は記憶にない。その代わりヴェルサー・メストが美しいロ短調をスイスの現代楽器楽団と演奏した。

そして絶えずキャリアー上でも一流の裾ところで仕事をしていて、若い世代では同じように日本などで活躍しているヤルヴィとか、バーデンの音楽名門家族の御曹司マイスターとかに毛が生えた程度で、コンサート指揮者と歌劇場とのキャリアーは異なるが二流のギュンター・ヴァントとか、ヤノフスキーとかよりは少し上回ったぐらいだろうか ― 父親を知らないとあるヤノフスキーのインタヴューを聞くとなるほどポーランド訛りがない。日本でお馴染みのサヴァリッシュよりも少し落ちるぐらいだろうか。

それゆえにここに来ての活躍と進展は、同じゲヴァントハウスでもシャイ―のお陰で良くなった管弦楽団を振り、ベルリンやヴィーンで指揮することから楽譜を忠実に音化する可能性が増えてきていて、嘗てからのレパートリーにも完成度が高くなっているようだ。それでもそれゆえにもう一つ知名度が高くはないのは、一流管弦楽団との繋がりが限定的で ― 実際私も日本で有名なこの指揮者について詳しく知ったのはバイエルン放送のYouTube映像でここ数年のことだ、広報力が限られるということなのだろう。マーラーの交響曲も新たに再発見して、SWRなどで来年も弑することになっている。新たなレパートリー開発である。

そこに座付きか名門管弦楽団か分からないようなゲヴァントハウスがよくなったのは精々この十年で、その名前ではシュターツカペレドレスデンとは比較にならないということらしい。兎に角、ブロムシュテットが18代指揮者だったころの管弦楽団はそのレパートリーもプログラムもサウンドも売れるようなものではなかったということだろう。 

Mass in B minor BWV 232 (Thomaskirche 2005, Blomstedt) - 1/15



参照:
ライプチヒ・バッハ音楽祭2017「ミサ曲 ロ短調」 NHKプレミアムシアター 
新鮮な発見に溢れる卒寿 2017-10-27 | 雑感
いぶし銀のブルックナー音響 2017-10-31 | 音

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