風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

『神・ゴジラ』 ~一応の結論めいたもの~

2016-08-18 10:34:54 | ゴジラ










『シン・ゴジラ』大ヒット驀進中のようですね。素晴らしいです。


やはり「良い」作品は、ジャンルをも超えるんですねえ。



で、結局、『シン・ゴジラ』とはなんのか?


この問いは、御覧になった一人一人が「思考」し「考察」するべきことで、その答えが一人一人違っていたとしても構わないものだと思う。

何度もいいますが、「良い」アートとは、そういうものだと思いますので。




私が思う、『シン・ゴジラ』とは、一言でいえば


【神話】です。




徹底的なリアリズムの中に、巨大な虚構をドンと置くことによって、その虚構は単なる虚構を超えて、大いなる神話性を帯びて我々の前に立ち現れた。


あくまでもSF的に捉えようとする考えもあるようで、それはそれで意義あることだとは思います。しかしそれだけでは、ゴジラのもつ「深さ」の全容は見えてこないような気がします。




庵野総監督は、あえて生物的なリアリズムを求めませんでした。

CG制作者が、ゴジラに筋肉の動きを加えようとしたところ、「そんなものはいらない」と庵野監督にバッサリ切り捨てられたとか。それは昭和29年の第1作『ゴジラ』の、ゴム製の重い着ぐるみをイメージしていたからだそうですが、やはり「生物」としてのゴジラなど、最初から描こうとはしていなかったのではないでしょうか。


以前にも書きましたが、劇中のゴジラは、まるで巨大な岩がそのまま動き出したようであり、赤い光はマグマのようにも見えます。

そして、どこか苦し気です。


つまり、やはりゴジラとは、人類によって汚され、死に瀕している、苦しんでいる地球そのもの、大地そのもの、大自然そのものなんです。

大地の精霊が、本来肉体を持たない精霊が、無理矢理物質的な鎧を纏ってこの世に立ち現れた。樋口監督によれば、あのゴジラの肉体は常に崩壊と再生を繰り返しているのだとか。

だから、どんなに攻撃を受けても、一瞬崩壊したのちに、すぐに再生してしまう。


元々肉体なんて「不便」なものを持たなかった精霊が、無理矢理肉体めいたものを持ってしまった。しかもその肉体は何度「殺され」てもすぐに復活する。


こんな苦しいことはない。


その苦しみを与えたのは誰だ!?








日本人は太古の昔より、大自然の中に八百万の神々を見てきました。

その感性は現代までも途切れることなく、日本人の日常生活の中に、そのDNAに、脈々と受け継がれてきました。


だから、理屈としては分からずとも、直観的に日本人にはわかるのです。

ゴジラが「何者」であるかを。


それは理屈を超え、日本人の感性そのもの、DNAそのものに訴えかけてくるのです。


日本人共通のDNA、それは言葉を換えれば、


「神話」です。



『シン・ゴジラ』とは、現代の日本人が共有すべき「神話」なのです。



表面的にはわからないかもしれない、でも心の奥底では、みんなわかっているんですよ日本人は。きっとね。



だからこその、この大ヒット、なのだと私は解したい。




ゴジラとは、嘆き、悲しみ、怒り、苦しむ大自然の精霊、荒ぶる「神」なのです。


しかもその「神」は、人間のDNAを取り込むことによって、人類の犯し続けた「罪(sin)」をも背負い、体現する存在となった。




『シン・ゴジラ』とは「神・ゴジラ』であり、『sin・ゴジラ』である。





『シン・ゴジラ』に関する記事は、これで一旦筆を置きたいと思います。


ありがとうございました。














大戸島に出現したゴジラ。(昭和29年の第1作『ゴジラ』より)


『シン・ゴジラ』では無かったことになっていますが、この第1作がなければ、『シン・ゴジラ』もなかった。


大地の荒ぶる神、ゴジラを生み出した田中友幸、本多猪四郎、伊福部昭、そして円谷英二の四大人に、改めて感謝を捧げます。

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2 コメント

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Unknown (美樹枝)
2016-08-18 18:03:04
わたしはゴジラが愛おしい、、もぉ苦しめたくないな、無理やり腹の底から胃の腑から吐き出さんばかりの熱風、憤怒、寂寥、、の放射させたくないよ~。   おまえらはな~っ!なにしとんじゃ~!ええかげんにせんか~い!あんぎゃ~!         反省します精霊様、素晴らしい作品有り難うございます。 蛇足、一作目のゴジ写真、恐いケド可愛いですネ。 
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Unknown (薫風亭奥大道)
2016-08-18 18:32:30
美樹枝さん、あの第一作の画像のゴジラは、ギニョールといって、手袋のように手にはめて動かしているんです。
だから妙に可愛らしいのかも(笑)
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