おこった月/再話:ウィリアム・スリーター 絵:ブレア・レント 訳:はるみ こうへい/童話館出版/2006年
本文に、訳者の注として、「むかし、北アメリカの大陸の、さらに北のほうにすむ先住民の村」とありますから、インディアンの昔話のようです。
ラポウィンザという女の子が、「おこった月」につかまって、いなくなります。
なかのよかったルーバンという男の子が、ラポウィンザを助けにでかけます。
ルーバンが月に向かって次々に矢を射ると、その矢が鎖となって、やがて太陽の最初の光が矢をてらすと、鎖はたちまち空にかかるはしごにかわります。
はしごを登るのですが、風に大きく揺れたり、雨にぬれたり、はしごで眠ったりと、長い道のり。長い道のりで食料といえば、髪の毛にさした枝に実った実です。
あっという間に目的地に到着するのが昔話ですが、このへんは再話でしょうか。
やがてあったのはおばあさんの国。ルーバンが空にやってくるのを助けたのは、このおばあさんでした。
おばあさんからもらった、みどりの松ぼっくり、魚の目、ばらの花、ちいさな石のかけらをもって月のところへいくのですが、月から逃げるとき、ラポウインザとそっくりになきはじめ、大きな湖になり、ばらのしげみになり、小さな石はとてつもなく高い山になります。
「おこった月」が悪者になっていますが、ラポウィンザが月につかまったのは、「顔じゅう あばただらけだわ。なんて みっともないんでししょ」と侮辱したのが原因ですから、もともとは悪者ではなかったようです。
それにしても表紙の月の顔、こわいです。
トーテムポールのような絵があちこちにでてくるのですが、トーテムポールは、北アメリカ大陸の太平洋に面した北西沿岸部に住む先住民の多くが、彼らの家の中、家の前、あるいは墓地などに立ててきた、柱状の木の彫刻で、人々の出自、家系に関わる紋章や、彼らが伝えてきて、かつ「所有する」伝説、物語の登場者などを彫刻したもののようです。