仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

聯合艦隊司令長官 山本五十六

2017年07月24日 | ムービー
『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』(2011年/成島出監督)を見た。
物語は、「陸軍が2年前に起こした支那事変が泥沼化していた昭和14(1939)年。日本は不況のどん底にいた。新聞の煽動もあって、国民は景気が浮揚するからと戦争を望み、陸軍が主張する日独伊三国同盟を拒み続ける海軍を非難する世論も巻き起こっていた。米内光政海軍大臣(柄本明)、山本五十六海軍次官(役所広司)、井上成美軍務局長(柳葉敏郎)らは、日本がナチスドイツと手を組めば、日本の10倍の国力を持つアメリカとの戦争が避けられなくなると主張。その後、ドイツが日本の仮想敵国であるソビエトと不可侵条約を締結したことから、同盟締結は一時棚上げとなった。8月、山本は連合艦隊司令長官として旗艦"長門"に着任するが、ドイツがポーランドに進攻し、第2次世界大戦が勃発すると、日本国内では再び三国同盟締結を求める声が沸きあがり、次の海軍大臣・及川古志郎(佐々木勝彦)は、従来の方針を改め、同盟締結に賛成しようとする。あくまでも日米開戦を防ぐため、三国同盟締結に反対した山本長官だったが・・・」という内容。
国民を煽り続ける"東京日報"主幹・宗像景清(香川照之)と一緒に良く取材に訪れる真藤利一記者(玉木宏)に対し、「世界を良く見ることだ」と助言する山本長官。
日米開戦後は「世論がどうあろうと、この国を滅ぼしてはいけない」と言い、「戦闘の目的はあくまでも"講和"を目指すためだ」と信念を曲げない。
しかし、首都空襲の後、「どんなことがあっても、もう二度と日本の空に敵機を飛ばせてはならん」との強い思いは部下・南雲忠一第一航空艦隊司令長官兼第一航空戦隊司令官(中原丈雄)には伝わらなかったようで、南雲は山本長官を飛び越して、永野修身軍令部総長(伊武雅刀)の指示に従い、ミッドウェイ海戦での大敗を招いてしまったのは残念だ。
黒島亀人聯合艦隊先任参謀(椎名桔平)がいくら良い作戦を立てても、現場の司令官がこのようでは組織が成り立たない。
この作品は、あくまでも"史実を基にしたフィクション"であり、宗像や真藤、三宅義勇連合艦隊作戦参謀(吉田栄作)といった架空の人物も多く登場しているし、描かれているエピソードもすべてが真実ということでもなさそうだ。
ただ、日本海軍が使用していた暗号は、昭和18(1943)年4月当時、すでにアメリカ軍によって解読されていたというのは事実のようで、いかにフィクションとはいえ史実を基に展開させている以上、主要登場人物の生死を変更するわけにはいかないのだから、やはり最後は残念な結末を迎えざるを得ない物語。
山本家の質素な食事など生活ぶりの描写はとても興味深かったし、良くできた作品だったと思う。

憑神(つきがみ)

2014年08月03日 | ムービー
『憑神(つきがみ)』(2007年/降旗康男監督)を見た。
物語は、「幕末の江戸。下級武士ながらも代々将軍の影武者を務めてきた由緒ある家系の別所家。次男の彦四郎(妻夫木聡)は幼い頃から文武に秀でていたが、婿養子に入った井上家からは軍兵衛(石橋蓮司)の策略のため離縁され、怠け者の兄・左兵衛(佐々木蔵之介)のもとで肩身の狭い生活を送っていた。ある日、軍艦頭取にまで出世した昌平坂学問所でのライバル榎本武揚(本田大輔)と出くわし、自分のふがいなさに落ち込んでいると、蕎麦屋の店主・甚平(香川照之)から、榎本の出世のキッカケとなった向島の"三囲(みめぐり)稲荷"詣でを勧められる。帰り道、酔って転げ落ちた土手の下に偶然あった寂れた祠・"三巡(みめぐり)稲荷"を見つけ、これは分社に違いないと早速出世を神頼みしたのだが・・・」という内容。
"みめぐり神社"はそば屋との会話で聞いたことであり、文字で確認したわけではないので、"三囲"と"三巡"の違いに気がつかないのも仕方がないことだとは思うが、土手の草むらに放置されていたあの祠はやはり見るからに怪しい。
(^。^)
すぐに気づきそうなものとも思うのだが、ツキのない時というのは更なる不運を呼び込んでしまうものなのかもしれない。
いかに生真面目な努力家であったとしても、人生とはそういうものなのだろうか・・・。
(-_-;)
しかし、貧乏神(西田敏行)に本来の仕事をさせない彦四郎の愚直なまでの正直さはその上の次元を行ってしまうのだから、何事も諦めず突き詰めるということは大切なことかもしれない等とも思った。
原作は『鉄道員(ぽっぽや)』、『壬生義士伝』、『地下鉄に乗って』等の浅田次郎(1951年~)氏の小説。
これは、なかなかに面白い物語だった。

任侠ヘルパー

2013年12月06日 | ムービー
『任侠ヘルパー』(2012年/西谷弘監督)を見た。
物語は、「コンビニでアルバイトをしている翼彦一(草剛)はヤクザの世界から足を洗った男。ある夜、店に入ったコンビニ強盗・蔦井雄三(堺正章)を哀れみ逃がしたことで、犯人と仲間ではないかと疑った警察官に腹を立てて暴行。逮捕されてしまった。刑務所で再会した蔦井に極鵬会の組長・朝比奈道俊(宇崎竜童)を教えられ、おしかけ舎弟・山際成次(風間俊介)と共に訪ねていく。まんまと客人として迎えられることに成功した彦一は、再び極道の世界に足を踏み入れ、闇金融や老人の公的年金・生活保護を奪い取る詐欺を始めるのだが・・・」という内容。
これは、2009(平成21)年にテレビで放送された連続ドラマ(全11話)と2011(平成23)年に放送された続編のスペシャルドラマのさらなる続きとして作られた物語のようなのだが、以前の話をマッタク知らなかった仁左衛門でも充分に楽しめる、しっかりと独立した物語になっていたようだ。
母親の介護に悩んでいる元恋人・蔦井葉子(安田成美)のため、業者に口利きをする市会議員の八代照生(香川照之)。
「大丈夫。蓄えはある」と言いながらも、係わりを持ちたくないと思っていた闇金融・彦一から融資を受けざるを得ない、その蔦井葉子。
随分と切ない人間模様だ。
また、老人介護施設とは名ばかりの建物に押し込まれた老人達の姿は哀れだった。
そこに"生活"と呼べるものはなく、極鵬会若頭・日吉雄喜(杉本哲太)は、老人達を「倉庫の在庫」と言い切る。
シノギに励んでいた彦一が変わったのは、塀の隙間から施設を抜け出そうとしていた一人の老人の背中に触れた時だろう。
ほんの少しだが身体が触れ合ったことで言葉を聞き入れてくれた。
この小さな体験がきっかけになって、物語がまた動き始めた。
「本物」という言葉に弱い彦一だったが、その単純さが良い方向に向かってさえ行けば無敵だ。
(^。^)
これはなかなかに面白い物語だった。

ゆれる

2009年10月31日 | ムービー
『ゆれる』(2006年/西川美和監督)を見た。
物語は、「母の法事のため久しぶりに帰省したカメラマンの早川猛(オダギリジョー)は、兄・稔(香川照之)が仕切っている実家のガソリンスタンドで、従業員として働いている川端智恵子(真木よう子)と再会する。2人が関係を持った翌日、幼馴染の3人は道見渓谷に出掛けるが、智恵子が吊り橋から転落死。警察の捜査結果で事故死と認定されたものの、後になって稔が・・・」という内容。
仲が良い筈の兄弟でも、心のどこかには相手に対する何か別の思いがあるものなのか。
その小さかったものが物語の進行と共にゆれる心の中でとても大きくなっていく。
疑いや思い込みや嘘が自分の心を惑わせていくので、実際に目で見ている筈のものも見えなくなってしまうのだろう。
登場人物はあまり多くないのだが、スタンドの従業員岡島(新井浩文)が終盤になって活躍する設定とは予想できなかった。
また、実は吊り橋がいろいろな意味で重要な存在になっていたのが面白い。
派手な内容ではないが、これは良くできた物語だった。
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キサラギ

2009年09月09日 | ムービー
『キサラギ』(2007年/佐藤祐市監督)を見た。
物語は、「アイドルタレント如月ミキ(酒井香奈子)の突然の死から1年。インターネット上のファンサイトで知り合った家元(小栗旬)、安男(塚地武雅)、スネーク(小出恵介)、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)、いちご娘(香川照之)の5人が家元の仕切りで初めて一堂に会した。思い出話に浸って彼女を懐かしむのが当初の目的だったが、熱烈なファンを自認する彼らゆえ、"本当にあれは自殺だったのか!?"と、話題は予期せぬ方向へと進んでいくのだった」という内容。
回想シーン以外の場面転換がほとんど無い密室劇であり、登場人物も少ないことから、演技者の技量の差がより大きく伝わってきた。
ただ、ユースケ・サンタマリアは演技力云々よりカツゼツの悪さが際立っているので、それ以前の問題ではあるのだが・・・。
(-_-;)
スポーツの世界では、"ファインプレーが目立つ選手は真の素晴らしい選手では無い"ということらしいが、そういう意味からすると、可も無く不可も無く見える香川照之という俳優の素晴らしさが際立っていた作品ということになる。
また、安男役の塚地武雅も良かった。
元々はお笑いタレントだが、個性的なキャラクターを持っているし、充分俳優として活躍していけるのではないだろうか。
さて、このオフ会を仕切った家元の背景について、他の登場人物と比べるとさほど詳しく描かれていなく、一言二言で片付けられていたような気がした。
編集の段階で尺が足りなくなったのか、「自分だけ身内じゃないのか・・・」という彼の落胆を際だたせるため敢えて使わなかったのか。
家元の職場ロッカーの内部が映し出された場面が(ほんの一瞬)見えたことから、多少気になったのだった。