仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

起きて転んでまた起きて

2016年10月31日 | ムービー
『起きて転んでまた起きて』(1971年/前田陽一監督)を見た。
物語は、「辺山修(なべおさみ)、桜井正明(堺正章)、清水マリ子(安倍律子)の3人は幼馴染。今も同じ大学に通い、ボーリング部に所属している。正明の家の商売(かつら店)が不振なのに対して、修の父はアメリカンクラッカーの販売が大成功して羽振りが良かった。ところが、友達を誘って芸者遊びをしている時に修の父が急死した。しかも、マリ子の父・清水金太(若宮大祐)への2000万円の借金のため家屋を明け渡し、母・はる(野村昭子)は昔していた着付け髪結いの仕事を再開し、修はタクシー運転手となり、残った1,000万円の借金返済のために・・・」という内容。
「くよくよしないでさ、思いっきり笑って初めからやり直そうよ」と言う母親は、修よりも潔いが、笑い声がいつしか泣き声に変わってしまうのが少しばかり切ないのだった。
また、毎日借金取りにやって来る専務の大松(小松政夫)の態度に腹を立て、「落ちぶれたって乞食じゃないぞ!!」と小銭を玄関に投げつける修に、「ならぬ堪忍、するが堪忍って言うんだよ。返すまでの辛抱だから」と、やはり母親が修に言って聞かせる。
そして、2人で小銭を拾う姿は、やはりどうにも切なく思えてくる描写だ。
そのうち、正明の家はかつらの輸出が軌道に乗り、"セフテイ美容センター"として大成功。
2人の立場がすっかり逆転してしまったのだが、修もマリ子に思いを寄せていることを知っている正明は、修が借金の返済を完了するまでマリ子への告白を封印すると約束する。
だが、これは修と正明の2人の世界が狭すぎた。
伊賀山骨董店の若旦那(和田浩治)が登場してくるのだ。
(^。^)
修はなかなか良い人間関係を持っているようで、芸者の〆香(大原麗子)や正明、若旦那などから助けられるのだが、マリ子だけはすっかりお嬢様をしているので、友人達の苦境を知ってか知らずか、一人、別世界にいるように幸せを享受しているのが面白かった。
まぁ人生いろいろだ。
(^_^)

喜劇 昨日の敵は今日も敵

2016年09月27日 | ムービー
『喜劇 昨日の敵は今日も敵』(1971年/前田陽一監督)を見た。
物語は、「城南大学の応援団長・鍋山修(なべおさみ)は、軟弱な軽音楽部ハッスルズのヤスオ(田辺靖雄)らを毛嫌いしていたが、新入団員にと思った逆田正章(堺正章)がハッスルズに入ってしまい、ますます腹を立てていた。しばらく経って、丸田(小松政夫)、ひげ(朝倉宏二)ら応援団員全員は練習を兼ねたボーイのアルバイトのために箱根のホテルに出掛けたが、バンド演奏のアルバイトに来たハッスルズの面々と鉢合わせをして一悶着。さらに、湖畔でさゆり(范文雀)率いる西北大学空手部の女性達と揉めて長田巡査(いかりや長介)に取り調べされたり、鍋山にはさっぱり良いことがなかったのだが、大学のOBだという客の五十嵐伸介(平田昭彦)、佐藤栄(大泉滉)、池田隼夫と意気投合する。一方、逆田は彼らの連れのひとみ(紀比呂子)に夢中になってしまい・・・」という内容。
素性も分からないのに、五十嵐という男の(たぶん)見た目だけで大宴会の予約を受けてしまうホテルの藤山支配人(藤村有弘)。
翌日になって警察に相談したところで後の祭りだろう。
おそらく莫大な額になる宴会料金の回収などはできやしないはずだ。
「ここに泊まっているすべての人を招待する」だなんて、何かおかしいと思わないのかね。
(^_^;)
そして、大学の先輩だというだけですっかり五十嵐を信用してしまう鍋山。
"自称同窓生"というだけなのにマッタク困ったものなのだが、これは五十嵐という男を演じているのが、平田昭彦という俳優であることがミソだ。
きっと観客も、見ていて何故かうさん臭さを感じないことだろう。
俳優のイメージというのはそれだけで、作品の演出に(良くも悪くも)影響を与えるものなのだなぁと思った。
(^_^)

任侠ヘルパー

2013年12月06日 | ムービー
『任侠ヘルパー』(2012年/西谷弘監督)を見た。
物語は、「コンビニでアルバイトをしている翼彦一(草剛)はヤクザの世界から足を洗った男。ある夜、店に入ったコンビニ強盗・蔦井雄三(堺正章)を哀れみ逃がしたことで、犯人と仲間ではないかと疑った警察官に腹を立てて暴行。逮捕されてしまった。刑務所で再会した蔦井に極鵬会の組長・朝比奈道俊(宇崎竜童)を教えられ、おしかけ舎弟・山際成次(風間俊介)と共に訪ねていく。まんまと客人として迎えられることに成功した彦一は、再び極道の世界に足を踏み入れ、闇金融や老人の公的年金・生活保護を奪い取る詐欺を始めるのだが・・・」という内容。
これは、2009(平成21)年にテレビで放送された連続ドラマ(全11話)と2011(平成23)年に放送された続編のスペシャルドラマのさらなる続きとして作られた物語のようなのだが、以前の話をマッタク知らなかった仁左衛門でも充分に楽しめる、しっかりと独立した物語になっていたようだ。
母親の介護に悩んでいる元恋人・蔦井葉子(安田成美)のため、業者に口利きをする市会議員の八代照生(香川照之)。
「大丈夫。蓄えはある」と言いながらも、係わりを持ちたくないと思っていた闇金融・彦一から融資を受けざるを得ない、その蔦井葉子。
随分と切ない人間模様だ。
また、老人介護施設とは名ばかりの建物に押し込まれた老人達の姿は哀れだった。
そこに"生活"と呼べるものはなく、極鵬会若頭・日吉雄喜(杉本哲太)は、老人達を「倉庫の在庫」と言い切る。
シノギに励んでいた彦一が変わったのは、塀の隙間から施設を抜け出そうとしていた一人の老人の背中に触れた時だろう。
ほんの少しだが身体が触れ合ったことで言葉を聞き入れてくれた。
この小さな体験がきっかけになって、物語がまた動き始めた。
「本物」という言葉に弱い彦一だったが、その単純さが良い方向に向かってさえ行けば無敵だ。
(^。^)
これはなかなかに面白い物語だった。