みみずのしゃっくり

みみずのしゃっくりのように役に立たないことを不定期に書き込むブログ。
専属スターはいませんが、猫っぽい内容です。

人間的状況

2015-05-06 | おきにいり

アラビア語コースの主催者、アラブ女性協会の会長さん(シリア出身)が短編集を出版しました(エジプトの出版社)


タイトルは「灰色の地帯」


原語発音は「ミンタカトゥ・ラマディーヤ」・・・「グレーゾーン」とも訳せます。(ミンタカ=地方、ラマディ=灰色の)


裏表紙



一度にドーッと読むのはしんどいので、最初の短編を読んでみました。
タイトルは「スゥリアーリーヤ」。シュールリアルとシリアを混ぜたもののようです。
あらすじは・・・

ダマスカスの2人の若者が芸術家を夢見て、なんと言っても芸術を知るためにはパリへ行かねばならないと考えます。
やっと何とかお金を工面して、憧れのパリへやって来ました。
安宿に泊まり、食べ物は、朝から晩まで一番安いバナナばかり。
そして遂にオペラ座のチケットを手に入れました。とても良い席でした。
幕が上がりオペラが始まって少しすると、バナナの食べすぎか、ひとりのお腹の具合が悪くなりました。
必死で我慢したのですが「もう限界」となって、大勢の観客を次々席から立たせてトイレへ・・・何たる不運

結局、幕が下りてから、もうひとりの友達のところへ戻って「舞台はどうだった?」
友達いわく「フランス人の発想は違うんだよ、何だか分からなかった。」



      


これを読んで「何と人間的状況!」と思いました
恥ずかしい、残念だ、辛い、苦しい・・・でも、日常生活で起こりそうな事態です。
同時に、数々のアラブ人作家を思い出しました。
その代表的な作家は、例えばザカリア・ターミルガッサーン・カナファーニラフィク・シャミなど・・・
彼らは、長編も書いていますが、ピリッと辛口でユーモラスでホロリとさせる短編が得意です(時にはシュールです)。
そして、その元祖・教祖とも言えるのが「千夜一夜物語」を語るシェヘラザードです(架空の人物だけど)。

「千夜一夜物語」は、いわゆる枠物語で、この潮流の中にウィルヘルム・ハウフの「隊商」もあります。

ラフィク・シャミの「夜の語り部」は「千夜一夜物語」の正当な後継者とも言うべき見事な枠物語です。
アマゾンで日本語訳や原書を扱っています


「灰色の地帯」からも又ご紹介したいと思っています

タイトルとなっている「灰色の地帯」は、ダマスカスのどこかにある恐ろしい監獄を扱ったものです






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2 コメント

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Unknown (めんまねえちゃん)
2015-05-07 16:27:58
うわあ、つらそうな状況。
分からない言語でかかれた小説とか、
ものすごく面白い物がたくさんあるんだろうな. . . と思います。グルッ. . . っていうのとは違うけど、
コンサートやバレエ観賞のとき、静かな場面に限ってのどがイガイガするのを思い出しました。
毎回あめを持って行くんです。
(でも包み紙がぺりぺりいうからドキドキするという)
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めんまねえちゃんさん (ななみみず)
2015-05-08 02:59:34
以前に見たイランの映画が美しくてロマンチックでヒューマニズムに溢れ、忘れられません。
でも、こういう映画普通には見られないんですよね
私も、私たちの知らない原語で、沢山名作があると思います。
コンサートの最中に咳が出始めて止まらない、って恐怖の状況ですよね
時々、そういう人がいますが、きっと、どうしても聴きたいコンサートなんだろうなと思います。
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