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『勇気づけの方法:アドラー心理学を語る4』(読書メモ)

野田俊作『勇気づけの方法:アドラー心理学を語る4』創元社

日本におけるアドラー心理学の権威、野田先生による著書。

講演録を基にしているので、語りを聞いているようだ。

タイトルにもなっている「勇気づけ」であるが、原語はencouragement。「励まし」と訳さないところにセンスがある。

「大人でも子どもでもそうなんですけれど、健康に、建設的に暮らしていこうというときに、絶対必要な要素は「勇気」だと思う。「元気」と言ってもいいし、「生気」と言ってもいい。子どもが不登校になるとか、非行になるとか、あるいは反抗的になるとか、勉強しなくなるとか、大人が夫婦喧嘩をするとか離婚をするとか、精神病や神経症になるとかいうのは、結局全部、建設的に生きていく勇気がなくなっているからだと思う」(p. 10)

野田先生は、勇気づけのテクニックとして、次の9つを挙げている。

貢献に注目する(「とても助かった」)
過程を重視する(「努力したんだね」)
既に達成できている成果を指摘する(「ずいぶん進歩したね」)
失敗も受け入れる(「努力したのにね」)
成長を重視する(「ずいぶん上手になったね」)
相手に判断を委ねる(「あなたはどう思う?」)
肯定的に表現する(「反省しているんだね」)
⑧「私メッセージ」を使う(「私はそのやりかたは好きだな」)
⑨「意見言葉」を使う(「あなたは正しいと思うな」)

ちなみに、勇気をくじくメッセージは以下の通り。

勝敗や能力に注目する(「偉い、よくやった」)
成果を重視する(「いい成績だね」)
できていない部分を指摘する(「ここがダメだね」)
成功だけを評価する(「なぜ失敗したの?」)
他者と比較する(「あの人よりあなたが上だね」)
こちらが善悪良否を判断する(「こうしたほうがいい」)
否定的な表現を使う(「気が小さいね」)
⑧「あなたメッセージ」を使う(「あなたの考えは間違っている))
⑨「事実言葉」を使う(「あなたは正しい」)

とても微妙な違いである。何が違うのであろうか?

本書の後半において、「相手を尊敬する」ことの重要性が語られているのだが、そこがポイントになるようだ。

つまり、後半の勇気をくじくメッセージは、「自分は偉い」「上から目線」の言葉がけであることがわかる。

それに対し、前半の勇気づけのメッセージは、対等の人間として相手を尊重する言葉がけとなっている。

本書を読み、「相手との関係意識」に気をつけて「勇気づけ」の言葉を使いたい、と思った。


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