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『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』(読書メモ)

会田由訳『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』岩波文庫

16世紀に書かれた作者不明の書である。世に現れるとまたたくまにスペインで流行したらしい。

本書には、家を追い出された少年ラーサロがさまざまな主人に仕え、苦労し、何とか安定した職につくまでの話が書かれている。

彼が仕える主人はとにかくとんでもない人ばかり。ケチな盲人、超ケチな神父、貧乏な従士、詐欺師の免罪符売りなどなど。

それでもラーサロはたくましく世の中を渡っていくのであるが、よく考えると、ここに書かれていることは会社勤めに似ているな、と感じた。従業員を搾取する会社、お金のない会社、詐欺まがいの商売をしている会社は世の中にあふれている。

はじめは受け身だったラーサロだが、少しずつ「自分」が育ちはじめ、主体的に行動するようになり、チャンスを手繰り寄せていく。

運命という波にもみくちゃにされながら、実は巧みに波乗りをしているラーサロは、世渡りの達人なのかもしれない。





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