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『おとなになるってどんなこと?』(読書メモ)

吉本ばなな『おとなになるってどんなこと?』ちくまプリマー新書

吉本ばななさんの人生論である。ご自身の体験をもとに、成長、友人、生、死について語っている。

一番印象に残ったのは次の箇所。

「ある程度の年齢になると人間は得意なことに逃げるようになるんです。そうすると得意なことがだめになっていきます。上手くいかないことを得意なことで解消するというサイクルに陥ってしまうと、得意なことが得意でなくなっていくし、楽しくなくなってしまいます」(p.119)

一瞬「えっ!?」と思ってしまうが、次の説明を読み納得した。

「世の中があまりにも世知辛くて、外に行くと自信を失うから、自分の得意な枠の中で安心していたいという思いが一層強くなっていると思うんです。それは誰にでもある心理だからわかるけど、そういうふうにどんどん逃げて、依存するようになると、どんどん弱くなっていきます自分を甘やかすことにもなってしまいます。そうやって人生のバリエーションが、少なくなっていくのはつまらないことだと思います」(p.119-120)

自分の得意なことに逃げるとは、自分の「枠の中」「殻の中」「型の中」に入ってしまい、その中に安住することを意味しているのだろう。

得意なことをやり続けることは良いことだが、枠を広げたり、変えたり、壊したりすることが必要なのだ。経営学ではこれを「アンラーニング」という。

よく「得意なことを伸ばせ」というが、本書を読み、「狭い世界に閉じこもってしまう危険性」もあるな、と感じた。

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