各種ミネラルの吸収はどこで? そもそもミネラルってなあに?
まず、ミネラルとは何でしょう。
生命活動を行う上で、必要となる元素のうち、有機物[炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)と水素(H)の化合物]を構成する元素以外の元素を言います。
働きが分かっているミネラルは、概ね次の20種類で、全部で103種類ある元素のうち、数十種類が何らかの形で生命活動に関わっていると考えられています。
第1族 ナトリウム(Na)、カリウム(K)
第2族 マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)
第5族 バナジウム(V)
第6族 クロム(Cr)、モリブデン(Mo)
第7族 マンガン(Mn)
第8族 鉄(Fe)
第9族 コバルト(Co)
第10族 ニッケル(Ni)
第11族 銅(Cu)
第12族 亜鉛(Zn)
第14族 珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)
第15族 リン(P)、砒素(As)
第16族 イオウ(S)、セレン(Se)
第17族 塩素(Cl)、ヨウ素(I)
(第〇族とは、元素の周期表の縦列の順番で、同じ族の元素は性質が似ています。
特に、第1族と第2族のそれぞれの2元素は、ペアになって働きます。)
なお、猛毒といわれる砒素ですが、生命活動には、ごく微量ですが、必要なものです。
そして、どれも皆、過剰に摂取すると、生命活動に支障をきたし、毒となります。
これらのミネラルは、通常、イオン(プラスの電荷を持つ第1~12族、マイナスの電荷を持つ第17族)の形で吸収されたり、酸化物の形でイオン化(第14~16族:マイナスの電荷)されて吸収されます。
イオンは酸性環境で水に溶けやすく、有機物としっかり化合しているもの以外は、胃酸によって、その多くが溶け出しますが、胃液が大量に分泌されますので、その流れに逆らって胃で吸収されることは基本的にありません。例外的に、銅の一部が吸収されるだけのようです。
胃でイオン化されたミネラルは、十二指腸に入って、中性環境に置かれます。
すると、第1族と第17族、そして第15~16族の酸化物の形でイオン化したものの一部は、イオン状態を保持できるのですが、他のミネラルは電荷を失い、互いにくっ付き合うか、酸化物の形でイオン化したものと化合して、小さな塊(コロイド)になってしまいます。
そうなると、そのままでは吸収されず、十二指腸や小腸内で、様々な仕組みでイオン化されて吸収されます。カルシウムについては、(Ca:No.1)と(Ca:No.2)の記事の中で詳細に説明したとおりです。
カルシウム以外のミネラルは、カルシウムとは違った仕組みで吸収されるようで、小生は詳細を知りませんが、例えば、マンガンは十二指腸と空腸で、鉄は小腸上部で、銅は先ほど言いました胃と腸で、マグネシウムは小腸と大腸で、といった具合です。
そして、ほとんどのミネラルは十二指腸や小腸で吸収されると言われており、例外は、銅の胃とマグネシウムの大腸だけのようです。
なお、第1族と第17族は、基本的に水と一緒に受動的に吸収されます。
これが、古典的なミネラル吸収の理論です。
しかし、カルシウムの吸収で説明しましたように、腸内環境が良くなると、腸内細菌の活発な働きによって各種有機酸が生成され、大腸は酸性環境に変わり、十二指腸や小腸で吸収されなかった、コロイド状態にあるミネラルが水に溶け出します。
その溶け出し方は、ミネラルによって異なり、また、酸度に大きく影響を受け、マグネシウムが大腸で吸収されるのは、弱い酸度であっても水に溶けやすいからです。
マグネシウムとカルシウムは第2族に属し、マグネシウムの方が原子量が小さいですから、イオン化傾向が高く、それだけ水に溶けやすいのは確かですからね。
そして、大腸の酸性度が高まれば、カルシウムも水に溶け、大腸で吸収されることになるのは、雨(二酸化炭素が水に溶けて弱酸性)で石灰岩(炭酸カルシウム)が侵食されることからも明らかなことです。
こうして、腸内環境が酸性に保たれれば、様々なミネラルがイオン化し、大腸における水分吸収のときに、受動的にミネラルが吸収され、血液に入り込むことになります。
小腸における吸収効率が悪いと言われるカルシウムや鉄であっても、ちゃんと大腸でかなり吸収されるのです。
これが、新しく追加されたミネラル吸収の理論です。
ただし、各種ミネラルが、どの程度の酸度でどの程度吸収されるのかは、まだ明らかになっていないようで、この方面での研究が期待されます。
さて、ミネラルってなんでしょうか。このことについては、別立てブログで説明していますので、下記をクリックして、ご覧になってください。
⇒ 各種ミネラルについて:各種ミネラルの働きを知って生活習慣病予防
ところで、貴兄がおっしゃる「カルシウムの吸収率に関係なく、カルシウムを沢山とると何故か骨からカルシウムが溶け出す。」という見解は初耳です。
例えばカルシウム剤に多く使われている沈降炭酸カルシウムの場合、溶かされなければ単なる“石っころ”であり、何ら化学作用を起こすことなく、排便されるでしょう。
胃や腸の中という体外においてイオン化され、それが体内に吸収されて、はじめてカルシウムが過剰か不足かということが言えるのではないでしょうか。
小生は、薬学ではなく化学の出ですから、ミネラル吸収については、pHに左右されるイオン化傾向に、どうしても着目してしまうのですが、炭酸カルシウムという固体の状態で吸収されることが果たしてあるのでしょうか。
アトピーの方であれば、タンパク質が消化されることなく吸収され、アレルギーを起こすのですから、炭酸カルシウムという個体が吸収されることも考えられましょう。しかし、健常な腸の持ち主であれば、これらのものは全てブロックされて吸収されないと考えてしかるべきと思うのですが、いかがなものでしょうか。
次に、貴兄は「何を食べてもカルシウムはいくらかあります」と、おっしゃいますが、これはこれで正しいと言えるでしょう。
専業農家の生まれである小生は、今も少々畑仕事をしているのですが、戦後の化成肥料の常用により、直ぐに土壌が酸性化し、作付け前には石灰を撒くようになりましたから、土壌が火山性でカルシウムが少なくても石灰により補給され、農産物に、カルシウムは、まあまあ含まれていることでしょう。といっても、カルシウムが日本の数倍多い欧州の土壌で育った野菜と比べ、日本の野菜のカルシウム量は概ね半分程度になっているようですが。
これと関連する、貴兄の「大切なのはマグネシウムです。」とのご意見についても、戦後農業と密接な関係があります。
30年前には、農作物にマグネシウムが多過ぎて、摂取過剰であり、控えるべきだとの学説がありました。これは土壌中にマグネシウムが十分にあったからでしょう。
しかし、その後、化成肥料しか使わない農業になって、土壌中のマグネシウムが不足するようになり、葉緑素が十分作れない野菜になってしまいました。そこで、石灰に代えて苦土石灰(マグネシウムとカルシウム)を使うようになり、マグネシウムが充足した農産物になったのです。
こうして、農産物にはマグネシウムがまあまあ含まれていることでしょう。と言うより、イオン化傾向が高いマグネシウムですから、苦土石灰を使えば、マグネシウムが充足された野菜になっていると、小生には思われます。
ですから、小生は、格別に「大切なのはマグネシウムです。」とは考えていません。
ここまで、ブログにおいても個々のミネラル吸収について述べてきましたが、一番困った問題は、リンの過剰摂取により、必要なミネラルが排泄されてしまうことです。これについては、機会を捉えて記事にしようと思っています。
次に、カルシウム摂取不足により、カルシウムパラドックスが起きるということについては、これは、貴兄のおっしゃるとおり、誤りとしても良いかもしれません。
と言いますのは、日本人のカルシウム摂取不足が騒がれだしたのは、そもそも戦後GHQが言い出したことで、それに追従して農林省が酪農振興を進め、日本人に合いもしない牛乳をどんどん飲ませ、まだまだ飲み足りないと、御用学者をしてPRさせ、今日に至っている事実からして、捏造された論とも言えるからです。
で、カルシウムパラドックスについては、論外におくとし、カルシウムそしてマグネシウムが日本人に不足しているのか否か、また、そのバランスは整っているのか否かについて、考えて見ましょう。
牛乳を毎日たくさん飲み、それがよく吸収される方は(貴兄の考えに従えば、吸収率に関係なく)、カルシウム摂取過剰となり、マグネシウム摂取量とのバランスが崩れ、生体内における両者のイオンの共役関係からして望ましくないでしょう。
それ以外の大多数の方にあっては、カルシウムが突出して多い小松菜やドジョウを毎日のようにもりもり食べることは考えられず、マグネシウムとのバランスは概ね整っていると考えて良いでしょう。
また、小松菜などカルシウムが突出した食品を摂ることなく、逆にマグネシウムが突出して多い食品を多食することも、まず考えられません。もっとも、食品分析表を持っていない小生ですから、素人判断ではありますが。
さて、摂取したカルシウムが十分に吸収されるのであれば、摂取したマグネシウムも十分に吸収されるでしょう。
そうなれば、ともに必要量は充足されることになるのですが、現実は異なります。
カルシウム摂取量が不足すると精神不安になることは、人体実験でもはっきりしており、また、精神科医は、カルシウム剤(最近では医師によりマグネシウムも配合)が精神安定剤になると言っているのはブログで記事にしたとおりで、カルシウムの働きは重要です。
また、カルシウム剤は腺病質に効果があって(当店では例が少ないですが薬局によっては多くの改善例をお持ちの所があります)、これもカルシウムの働きによるものでしょう。
これらの病気の場合は、カルシウムの摂取不足というよりは排泄過剰の疑いがありますが、摂取不足の可能性も捨て切れません。
さて、小生が言いたいのは、カルシウムもマグネシウムも摂取不足(小生が考えるには吸収量の不足)の方が往々にしてあり、この2つがそうであれば、その他のミネラルも同様の可能性が高いということです。
例えば、足がつるという方にはマグネシウム剤(カルシウムも配合)がけっこう効くという実績から、そうしたお客様には、今は、総合ミネラル剤を飲んでいただいているのですが、体のだるさが解消したとか、肩こりが楽になったとか、風邪を引きにくくなったとか、鉄なり亜鉛なりが不足して起きる症状までが改善されるのです。
こうしたことから、今の日本人の中には、各種ミネラルが何らかの形で不足気味になっている方がけっこういらっしゃるのではなかろうかと、思われるのです。
なお、参考までに述べておきますが、総合ミネラル剤がちっとも効かないという方がお見えです。そうした方は、腸内環境が悪い傾向にあります。
つまり、大腸が酸性環境になっていないために、ミネラルがイオン化せず、吸収されないと思われるのです。
摂取という観点からは、カルシウムもマグネシウムも充足していることでしょう。
これとは別に、生理学的観点から、細胞外液のミネラルイオン濃度の恒常性維持機能がどう働いているかという問題があります。
健常者にあっては、この問題を乗り切れるでしょうが、現代人の多くが果たして健常者と言えるかどうか、これは大いに疑問です。
そこで、この問題について、タイトルの記事を11月2日に起こしました。
ご意見が賜れれば幸いです。