こうすれば骨粗鬆症は防げる(Ca:No.4)
骨からカルシウムが溶け出して、骨がスカスカになり、骨折しやすくなる骨粗鬆症は、圧倒的に女性が多いです。これは、閉経に伴って女性ホルモンが出なくなり、骨吸収(骨からのカルシウムの溶け出し)が多くなるからです。
つまり、骨の新陳代謝のバランスが崩れるのです。
先日の記事(Ca:No.1)で書きましたように、骨は5年で入れ替わります。
1日にカルシウム量で500mgの骨が壊されて溶け出し、同量が集められて造骨細胞によって新しい骨を造り、カルシウム出納をプラスマイナスゼロにして、健常な骨を維持しているのです。
しかし、女性の場合、思春期以降、そのバランスに女性ホルモンが関与していたのが、閉経に伴って女性ホルモンが出なくなれば、バランスが崩れるのは必然で、骨のカルシウム出納は、当然にマイナスになってしまいます。
そこで、骨粗鬆症の恐れがある人には、骨吸収を抑制する薬や骨形成を促進する薬が処方されます。その代表的なものは、次のとおりです。
<骨吸収を抑制する薬>
ビスフォスフォネート、女性ホルモン(エストロゲン)、ラロキシフェン(女性ホルモン類似作用)、カルシトニン(注射液)
<骨形成を促進する薬>
ビタミンD3、ビタミンK2(ともに栄養剤)
理論的には、これで効くはずなのですが、たいした効果がないのが実態です。
どうしてでしょうか。
極論すれば、骨粗鬆症は老化現象であって、若返りの秘薬はないから、となります。
年を取れば皮膚が縮んでしわくちゃになり、化粧品を塗りたくってもどれほどの効果もないのと同様に、骨がスカスカになるのは防ぎようがない、ということです。
じゃあ、あきらめるしかないか、となりますが、そうでもありません。
骨粗鬆症が非常に少ない地域があります。そこの生活習慣を見習えば良いのです。
その地域とは、小さな漁師町です。そこの女性は、まず骨粗鬆症にかかりません。
皆さん骨太でがっしりした体格をしておられます。
これは、若い頃から小魚を丸ごと食べ、カルシウム補給が十分になされているからとも説明されますが、原因は別のところにあります。
男どもは漁に出かけますから、男手なしで畑仕事など力仕事をせねばなりません。加えて、畑は家並みを登った山の斜面で、坂の上り下りが日課となります。
つまり、毎日、骨に負荷をかけ、骨を鍛えているのです。
ですから、骨太になるのです。加えて、閉経後も同様の生活を続けますから、それ以降は骨吸収が進むものの、毎日骨に大きな負荷をかけ続けることによって骨形成が落ちることはないでしょうから、カルシウム出納は、どれだけもマイナスにならないのです。
こうして、小さな漁師町の女性は骨粗鬆症にかからないのです。
使わないものは退化するしかないですが、使うものはちゃんと維持されるのです。
骨に負荷がかかれば、造骨細胞が刺激されて、新たな骨を再生する速度が増すのです。逆に、骨に負荷がかからない生活、宇宙飛行士や寝たきりの病人の場合は、見る見る骨が痩せてきます。よって、長期滞在の宇宙飛行士は、毎日、骨に負荷をかける運動が必須となっているのです。
なお、造骨に必須のビタミンD3は、直射日光に当たれば簡単にできます(2018.4.7挿入追記:ビタミンDは直射日光で、そう易々と生成されるものではないことが判明。冬季は欠乏の恐れがあります。→冬はお日様に当たって健康づくり その点を訂正し、お詫びします。)し、ビタミンKは腸内環境が正常なら腸内細菌が作ってくれますので、欠乏することはありません。
家の中に閉じこもりっ放しの生活ですと、骨に負荷もかからず、骨形成に必要なビタミンDも欠乏しますから、やがて骨粗鬆症になってしまうのは必然のことなのです。
小さな漁師町の女性が骨粗鬆症にならない理由のもう一つがコラーゲンの補給です。
骨は、鉄筋コンクリートと構造が良く似ていて、鉄筋に相当するのがコラーゲンで、コンクリートに相当するのがカルシウムです。
鉄筋コンクリートを造ろうとするとき、コンクリートを流し込むだけでは無理で、鉄筋が必須です。骨も、カルシウムを補給したり、ビタミンDやKを補給しても、これはコンクリート造りのためのもので、鉄筋に相当するコラーゲンを補給しないことには、新たな骨は造りようがありません。
コラーゲンはタンパク質で、各種アミノ酸を化合させて作るのですが、加齢とともに体内生産力が落ちてきます。このコラーゲンは魚の皮(皮下を含む)に多く、“煮こごり”はコラーゲンそのもので、これを毎日食べれば、コラーゲンは十分に補給され、骨造りに大いに役立つのです。もっとも、コラーゲンは高分子のタンパク質ですから、胃と小腸内で消化され、ペプチド(アミノ酸が数個程度つながったもの)やアミノ酸の状態で吸収されますが、コラーゲンの原料が揃っているのですから、容易に体内再合成されるのです。
なお、コラーゲンを補給することによって骨量が増大することは、臨床的に証明されていますので、良質のコラーゲンを補給することが、骨粗鬆症の改善、予防に必須のものとなります。
以上、まとめますと、小さな漁師町の女性を見習って、屋外で骨に負荷をかける運動を毎日行い、コラーゲンを補給すれば、骨粗鬆症にはならない、ということになります。
なお、骨のコンクリートに相当する部分は、カルシウムだけではなく、リンとマグネシウムも多く含まれています。リンは過剰摂取ですが、マグネシウムは不足気味です。
そのマグネシウムは、腸内環境が良好であれば、大腸でかなり吸収されますから、努めて野菜食を心がけたいものです。
肉食すると、肉にリンが異常に多いですし、また、腸内環境を悪くしますから、カルシウムもマグネシウムも吸収効率が落ちてしまいます。くれぐれも、ご注意ください。
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