友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

人類の宿命

2008年09月18日 23時41分04秒 | Weblog
 今日は残された時間が無いので、ちょっと焦っている。名演で観た『東京原子核クラブ』の中に、気になるセリフがあった。『東京原子核クラブ』は原子の謎解きに挑戦する物理学者を主人公に描いた芝居だ。この世は分子の結合で出来ている。その分子は原子から成り立っている。それでは原子は何で成り立っているのか?

 物理学者は「到達した地点を消し去ることはできない」と言う。それは物理学だけではない、医学だってそうであるし、科学とはまた然りだろう。要するに人類は到達した時点から以前に戻ることはできない。それが人類の歩いてきた道であり、歴史の真実であろう。科学者は各自のテーマをそれぞれに解き明かすことに情熱を燃やすし、それを食い止めることは出来ないのだ。

 それは人間が背負っている宿命だと私は思う。人の智恵が人を滅びに追いやるであろう。それがこの地球で生命を得た人類の宿命であろう。『東京原子核クラブ』の中で、何かを発見することは、いや新しい発見を見出すことは、「何千人もの科学者がいてもたった一人がそのインスピレーションによって生まれる」というセリフがあった。何かを発見する人は、モヤモヤした中に一つの光を見ることが出来る人だと言う。

 その感覚は私も分かる。それは物理学や医学や化学といった科学の世界だけでなく、たとえば美術でもおそらく文学でも音楽でもあると思う。自分がテーマにしていたものが、はっきりと形として見えた時、人は多分偉大な作品を作り上げることが出来るのだ。

 科学は確かに人類の思惑を超えて進歩した。思惑を超えたからこそ、もう人の手ではコントロールできないものとなってしまったのだ。人類はそれでもなお、この世界をコントロールできると思い込んでいる。なぜなら自分たちが創り出したものなのだから、自分たちがコントロールできないはずはないと信じたいのだ。けれども科学者が自分たちの到達地点よりも常に先に行ってみたいという欲望を抱いているように、もう人類は自分たちの力でこれを食い止めることは出来ない。

 「人間は本能が壊れた動物である」という岸田秀氏の言葉に出会って、私はモヤモヤとした中に一つの光を見た気がした。それを私はいつか何かの形で明らかに出来たらなと思っている。
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