NHKテレビの朝ドラ『エール』を不熱心に見ている。熱心になれないのは、演出があまりにも滑稽だからだ。最近のNHKのドラマは、なぜか笑いを取ろうとしているような気がする。若い人にアピールしたいのかも知れないが、年寄りの私には違和感が強い。
『エール』のモデルである古関裕而さんが気の毒になってくる。古関さんは明治42年生まれだから、私の母と同じ歳であり、父よりも2歳年上だが、ほぼ同時代を生きてきた人だ。しかも、手紙をもらった女性に会いに、福島から豊橋へ来てしまうのだから凄い行動力だ。
それだけではない。古関さんは20歳で、妻となる『エール』では音さん(18歳)と結婚する。私にはとても出来ない決断力だ。私はどうしても「生活」が頭にあったので、お金が入る手立てを考えずには出来なかった。両親が共働きだったということがあるかも知れないが、妻となる人は職を持つ女性と決めていた。
私の両親も恋愛して結婚したが、そういう時代になっていたようだ。父は2つ上の母に頼っていて、日本の統治下にあった朝鮮の大学を受験したと姉から聞いた。医者になって、小説を書こうとしていたようなので、医学部を受けたのだろう。けれど合格出来ずに師範へ進んだ。
何でもやってやろうという風潮があったのかも知れない。私の知っている父はいつも本を読んでいるか、小さなスケッチブックに鉛筆で何か描いていた。父が死んで、父が残した物は私が預かったが、何冊ものノートは詩や物語それに誰かに恋している日記だった。
『エール』のふたりがどのような人生を歩んでいくのか気になるが、あまりにドタバタ喜劇調の演出にはついていけないので、時々目と耳を背け、新聞を見入っている。