mimi-fuku通信

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ハイビジョン特集:【にっぽん心の仏像】 ~100選&50選。

2009-03-02 22:32:22 | 美術・芸術・創造

 
 ハイビジョン特集「にっぽん心の仏像」

 <にっぽん心の仏像100選>

 BShi :2009年3月2日:午後11時~翌0時50分 -前編-(放送終了)
 BShi :2009年3月3日:
午後11時~翌0時50分
-後編(放送終了)

 <知られざる仏・50選>

 BShi :2009年3月1日:午後7時~9時(放送終了)
 BShi :2009年3月9日:
午後2時~4時(放送終了)


 <mimifukuから、一言。>

 もう何度目の再放送になるのだろう?
 この番組は、美術彫刻としての仏像の価値ではなく、
 信仰と安らぎの対象として人々の心を捕えて離さない、
 日本全国の仏像を紹介する番組。
 
 私にとって仏像との出会いは、土門拳さんの写真集だったかも知れない。
 それよりも以前に、手塚治虫さんの名作『火の鳥(鳳凰編)』の中の、
 仏師:茜丸と我王が対峙(対決)する姿だったかも知れない。
 東大寺・戒壇(かいだん)堂:四天王立像が画中に描写される。

 私の心の中に存在する一番大切に思う仏像は、
 
東大寺・法華堂(三月堂)の不空羂索(ふくうけんさく)観音立像だ。
 1990年代、毎月関西方面に出張があったため折を見て立ち寄ったものだ。
 
 東大寺・法華堂内陣の厳粛な信仰空間には、
 京都・東寺の講堂(立体曼荼羅)と並ぶ、
 日本でも屈指の仏像空間が存在する。

 12体の国宝と4体の重要文化財
 ~内1体は秘仏・執金剛神像(しつこんごうしんぞう)
 特に人気の高いのは、
 塑像(そぞう)の(伝)日光菩薩と(伝)月光菩薩
 ~平成23
年10月以降、日光・月光菩薩、弁財天、吉祥天の塑像四躰は、
   東大寺総合文化センター内の「東大寺ミュージアム」に安置されます。
 
その中央に仰ぎ見る不空羂索観音像のお姿に見出す荘厳に、
 畏敬の念を持たずにはいられない。
 特に多くの他の仏像を拝する時、その姿に人の存在を感じざる得ないが、
 この不空羂索観音像だけは人の気配がまったく感じらることなく、
 その存在自体が私にとって奇跡の彫像として記憶に残っている。
 *2010年現在法華堂(三月堂)は修復工事のため不完全な形式で公開。
  http://www.todaiji.or.jp/contents/guidance/guidance5.html
 
 天平12年(740年)に創建された東大寺最古の仏教空間(法華堂)は、
 平安、江戸の戦火を逃れ、当時のままの空間(面影)を今に残している。
 1250年以上に渡って、一身に衆生(しゅじょう)の願いを聞き入れてきた仏達。
 この不空羂索観音像の背後には、
 秘仏・執金剛神像(しつこんごうしん)が厨子の中に安置されている。
 この秘仏は、年に一度12月16日に開扉され、
 彩色豊かなそのお姿をお披露目する。

 私は、この神像を2度拝観する事ができた。
 2002年4月~7月にかけて奈良国立博物館で開かれた、
 特別展覧会「東大寺のすべて」の会期中の僅かな期間、
 秘仏の扉は開かれた。
 年に一度の御開帳は多くの参拝客のため、
 立ち止まってみる事が困難なのだが、
 その日は平日との事もありゆっくりと拝見した。
 色彩の保存状態の良さにも感心するが、
 剥き出しになった針金に塑像の脆さを感じた。

 年月と共に失われていく創建時のお姿。
 しかし、
 年月と共に増していく存在感の大きさ。

 人々の思いや願いと共に生きてきた物質としての彫像が、
 何時(いつ)の世も人々の心(記憶)の中に生き続ける真実。
 人が人として必ず抱く孤独感を慰めてくれる真実の記憶(経験)。

 その真実として残る経験とは、
 ・人との親交であったり、
 ・自然との出会いであったり、
 ・仏との信仰であっても構わない。
 
 自分が生きていると言える記憶の積み重ね(自分が求める経験)こそが、
 人を孤独から救いだす手段のひとつであることに私は疑いを持たない。

 土門拳さんと並ぶ仏像写真の大家である、
 入江泰吉さんの写真集のタイトルに
 
邂逅(かいこう)がある。

 邂逅とは、思いがけない出あい、めぐり合い。
 と広辞苑には記述されている。

 もし、
 
<自分の身に孤独を感じたら邂逅を求めて一瞬を生きたらいい。>

 邂逅の出会いは、必ずしも人でなくても良い。
 ・旅に出て自然の中に身を置いてみたり、
 ・一本の映画や舞台公演を見に行ったり、
 ・一冊の本を手にとって見ることもよい。

 あるいは散歩で偶然見つけた生命を観察するのもよい。
 ・近所に咲く花の成長。
 ・花に群がる虫達。
 ・太陽の光と影の所在。

 また、人恋しさに、
 ・懐かしい人の消息を尋ねてもいいし、
 ・習い事に興味を持つこと、
 ・スポーツ・クラブや趣味のサークル。

 邂逅の意味は一つではない。
 

 もし、
 自分の中に存在しない『何か』に出会えたなら、
 そのこと(経験した事実)が強く記憶に残り、
 後の孤独を慰めてくれる。

 不空羂索観音像のお姿の前で、
 ぼんやりとそんな事を考えたりもした。

 奈良や京都で宗教空間の中に身を置く機会に恵まれれば、
 普段感じることのない宗教や思想について自問してみればいい。
 不思議なことに普段の生活とは違った答えに導かれることに驚かされる。


 神仏と科学の狭間や、信仰と現実社会との狭間の中で、
 物事を判断(決断)しなければならない場面に遭遇した時、
 判断基準の中にかすめる信仰心や運を排除し、
 独自の経験に基づいて思考をすることが常の私が、
 不思議と啓示や刺激を受ける空間としての社寺仏閣の存在。
 それは、言葉で説明できない不思議な経験だ。

 不思議な話をもう一つ。
 2006年10月~12月。
 上野の東京国立博物館で開催された、
 「仏像:一木にこめられた祈り」展での出来事。

 この特別展に展示されていた、
 京都・宝菩提院願徳寺(ほうぼだいいんがんとくじ)
 <国宝・菩薩半跏
(ぼさつはんか)像(伝如意輪観音)>
 
 
を単眼鏡で丹念に観察すると光る一筋の線が…。
 一目で「蜘蛛(くも)の糸」と理解したのだが、
 会期が終わろうとしている、
 10月末(展示は10月3日~11月5日)になぜ蜘蛛の糸が?

 展示室に配置された係員の方に尋ねると、
 「宝菩提院願徳寺の蜘蛛が一緒にお見えになった。」
 
らしく(学芸員が)掃っても掃っても蜘蛛の巣を張るとの事で、
 蜘蛛の所在は分からぬとのこと。

 仏様に住みついた蜘蛛がいるんですね。
 餌もなく1ヵ月間も東京に移動させられ、
 辟易したことでしょう(笑)。

 この展覧会では後期11月7日~12月3日に、
 
滋賀・向源(こうげん)寺蔵<国宝・十一面観音菩薩立像>が、
 初めて地元を離れ注目を集めた展覧会だった。
 
 向源寺の十一面観音立像は、
 村人の知恵と寄進で守り抜いた、
 日本の仏像彫刻史上屈指の名作として、
 多くの謎を持つ観音様。

 昨今地方でも、
 仏像の盗難事件を多く耳にするが、
 仏像は、その土地、その場所にあってこそ、
 本来の信仰の目的が成就される。
 
 その土地の人々が守り抜き、
 その土地々々の信仰の証として、
 存在すべきもの。
 
 仏像ブームに火がついたことで、
 心無い人達の目にとまった仏像。
 
 盗難防止と転売防止の策として考えるべき、
 各地域での詳細なデジタル保存(映像・画像)と、
 一括して盗難物を公開するホーム・ページの作成。
 盗んでも転売することが不可能な所持社確認のシステムを
 国の文化財保護局は編纂公開すべきなのだろう。

 デジタル公開することで、
 購入(所持)した者も罪になる。
 そうした法改正も必要なのだろう。

 嫌な話題(金銭価値と盗難)になるが、
 美術品(の価値)としてではなく、
 “信仰としての仏像の意義”
 着目することが肝要に思える。

 テレビとは関係なく、
 今日は仏像の話を少しだけ。


 <関連記事:ブログ内リンク>

 
*巨匠たちの肖像:写真家・土門拳~仏を睨む目~
 → http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/2cd8159db9d06052202dbd9f7fef7a75

 *国宝:阿修羅像“~展覧会記録を塗り替えた仏”とNHKの番組。
 http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/60d45e137691a67eef349c794c33f8bb

 *法隆寺&東京国立博物館の名宝。
 → http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/b141d8dc46fc089b965a5c91851e1063

 
 ~下記、NHKホームページより転載。

 <にっぽん心の仏像100選:前編>

 「にっぽん心の仏像100選」を2回にわたって放送する。
 前編は、誰もが見たい仏像を中心に、
 視聴者から寄せられた手紙を読みながら、
 奈良、京都などの有名な仏像を紹介する。
 ・水面に映る九体阿弥陀如来像。
 ・夕日に染まる阿弥陀三尊像。
 等、仏像の至極の映像や人々の仏像への、
 
さまざまな思いも描いていく。
 なぜ日本人は仏像にひかれるのか? 
 日本人の心を癒やし続ける
 “にっぽんの仏像”の完全保存版。
 
 
【語り】長谷川勝彦
 
【朗読】高橋 美鈴

 <にっぽん心の仏像100選:後編>

 「にっぽん心の仏像100選」を2回にわたって放送する。
 後編は、視聴者から寄せられたお便りから新たにわかった、
 全国の知られざる仏像を紹介する。
 ・集落存続のためのより所となっている仏像。
 ・歴史にほんろうされた仏像。
 ・命がけで守りぬいた仏像。
 等、その土地土地で代々大切にされてきた仏像には、
 日本人の心を打つ物語がある。
 地域の土着の仏像信仰や数奇な運命をたどった奇跡の仏像など、
 京都・奈良だけでない全国各地を網羅した、
 “知られざる仏像”の完全保存版。 
 
 【朗読】高橋 美鈴

 
<知られざる仏50選>

 2008年11月に放送した3時間番組、
 「にっぽん心の仏像」を再編集。

 「地方の知られざる仏」に焦点を当て、
 地域や暮らしと仏像の結びつきを描き、
 “日本人の心の原風景”に迫る。

 

コメント (1)
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