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ブラジル ベーシックインカム「奇跡の町」

2020-09-30 07:00:00 | 報道/ニュース

9月8日 NHKBS1「国際報道2020」


新型コロナウィルスの感染拡大によって世界各地で失業する人が続出している。
今その危機を救うかもしれないと注目されているのが
(Basic Income)  BI である。
年収などに関わらず
政府が全ての人に生活に必要な一定額を無条件で支給する
新しい社会保障制度である。
この BI をいち早く導入したのが
感染者数が3番目に多いブラジルの小さな都市 マリカ。
周辺では雇用が失われていく中で
このマリカでは新規の雇用者数が失業者数を上回っていて
欧米のメディアなどからは「奇跡の街」と呼ばれている。

ブラジル リオデジャネイロの中心部から車で1時間ほどの場所にあるマリカ市。
人口 約16万。
富裕層が別荘などを持つ美しいビーチがあることでも知られている。
街の中心部は人であふれていた。
この市の経済を支えているのが「ベーシックインカム」として支給されている通貨である。
マリカでは街のいたるところで電子通貨「ムンブカ」の利用を知らせるポスターが貼られている。
住民は市から受け取る電子通貨「ムンブカ」をカードや携帯電話で使用する。
(利用者)
「マリカ市のこの試みはすばらしいです。」
マリカでは7年前から貧富の格差解消のため
ムンブカをベーシックインカムとして富裕層を除く人々に支給。
現在は貧困層を中心に人口の約4分の1が受け取っている。
支給額は新型コロナウィルスの感染拡大後に増額され
3人家族なら1か月あたり約1万9,000円である。
人口の半数以上が月2万、1000円以下で暮らすこの市では生活を支える大きな糧になっている。
ビア―ナさん(36)。
市内でネイリストとして働きながら3人の子どもを養ってきた。
しかし新型コロナウィルスの感染拡大以降収入は激減し
今はほぼ収入はない。
そのため食費や電気代などすべての出費をベーシックインカムのムンブカで賄っている。
(ビア―ナさん)
「子どもはおしゃれをしたがる年頃なんですが
 ムンブカで服を買えます。」
マリカ市がベーシックインカムを市が発行する独自の通貨で支給しているのには理由がある。
ブラジルの通貨レアルで渡すと
他の地域やインターネット通販で使われるケースも多くなってしまう。
しかしムンブカは地元でしか使えないため
地域の中でお金が回り
雇用の維持にも役立つのである。
市内にあるスーパーのチェーン店。
月に1度のムンブカの支給日には多くの人が日用品のまとめ買いをしたり
併設されたレストランで食事をしたりする。
同じ系列のリオデジャネイロの店では
売り上げの減少により従業員を3割解雇したが
マリカ市の店では雇用が守れているという。
(店長)
「店を維持するのに役立っています。
 お金が回るようになったんです。」
SNSを使って市民の反応を調査した専門家は
(ベーシックインカムの専門家 ウォルテンバーグ氏)
「市民の大半は肯定的な反応というのが分析結果である。
 ムンブカは地元の商店やサービス業を潤す。」
実はこうした手厚い支給ができるのは
近年 市内で見つかった油田のおかげである。
市ではマリカに拠点を置く石油会社からの税収が急増し
収入の75%を占めるようになった。
マリカ市のベーシックインカムの支給総額は月に約3億円。
市の税収の15%にあたる金額だが
今後さらに支給人数を増やし
2022年には富裕層を除くほぼすべての住民に支給したい としている。
(獨協大学経済学部 本田教授)
「コロナ危機での失業は完全に離職しているわけでない場合も多く
 働いているけれども労働時間がすごく減っているとか
 自営業で失業した人などはそもそも失業保険にすら入っていない。
 しかも失業給付は受け取るのにかなり時間がかかる。
 必然的にそれ以外の救済策が緊急に必要になっている。」
これまでの社会保障は
失業保険 生活保護 年金など
働けない人に支給するというのが基本的な考え方だった。
コロナ禍で収入源の人は失業保険では救済できていない。
ベーシックインカムは
働けるかにかかわらず一律に一定額を支給するため
収入源の人を救済できて経済を回し続けられる。
ベーシックインカムの考え方に基づいた個人への給付は
たとえばスペインやイタリアで低所得者を対象に始められる。
多くの先進国は企業年金が行き詰まっているケースも珍しくない。
そこで発想を変えて
最低限生活していけるお金を皆に支給する方法が
コロナ終息後も有効だという見方も出ている。
(獨協大学経済学部 本田教授)
「おしなべて先進国は長期停滞に陥っていて
 これまでの3%4%5%というような経済成長率はなかなか難しい。
 ベーシックインカムを主張するのは
 既存の社会保障制度では年金も生活保護も十分機能していない
 制度の限界に対する認識が強くあると思う。」
「個人と法人の資産課税 法人税を
 適切な形で引き上げることが求められる。
 さらに既存の予算の組み替え
 地方交付税 公共投資のお金など
 かなりのものがベーシックインカムに移せる。
 他の社会保障を全部ベーシックインカムに移して
 政府の役割を小さくしていくという考え方もある。
 けれども多くのベーシックインカムを主張する人はそうではなくて
 既存の制度を補完したり
 それと共存していくという考え方。」
「格差がどんどん大きくなってきて
 非正規とか外国人労働者とか何層にも分かれて
 不安定な層が増えてきた。
 そうすると賃金の格差もすごくなるし
 社会保障の格差もすごくなる。
 かなりの層がまともな年金まともな賃金を得られなくなってきた。
 国民年金と厚生年金という制度を
 別の形で下から月額数万円で支え底上げしていく。
 そういう形の制度がやっぱり必要なんじゃないかと考えている。」

 

 

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中国 食べ残し撲滅キャンペーン

2020-09-29 07:00:20 | 報道/ニュース

9月8日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」


売れ残りや食べ残しなどによって食品が廃棄される食品ロス。
世界各国で社会問題となっているが
客を豪華にもてなす習慣がある中国でも大きな問題となっている。
こうしたなか習近平国家主席の支持をきっかけに
食べ残し撲滅のキャンペーンが展開されている。

テーブルに並んだ色とりどりの料理。
中国では大皿の料理を取り分けて食べるのが一般的である。
しかし宴会の席などでは頼みすぎる場合も少なくない。
中国の都市部では
1年間に飲食店から出る残飯は1,700万トン余と推定され
3,000~5,000万人の1年分の食料に相当すると言われている。
この問題にメスを入れようとしているのが習近平国家主席である。
習主席は8月
“浪費が深刻で心が痛む”として浪費を戒める重要指示を出した。
国営テレビも特集番組などで浪費に警鐘を鳴らしている。
(CCTV)
節約は個人の道徳
国の安定に大事なことです
湖南省のある都市では役所の食堂で巡回指導が行われ
改善しない人には浪費の様子をとらえた監視カメラの映像を公開するという。
さらに
中国の動画共有サイトで人気を集めていた大食いを自慢するサイトは
習主席の支持の後“浪費を助長するものだ”と批判され
一部は削除される事態になった。
飲食店も独自に対策を始めている。
北京市内にある任期の串焼き店。
食べきれるだけ注文するよう店員が客に個別に確認している。
「1セット4串
 2人ならまず1セット頼んで
 おいしかったら追加してください。」
(客)
「いま地球上では食べ物が不足しているので
 節約して浪費しないのは良いことです。」
(店長)
「以前は浪費も見られたけど
 最近は比較的少なくなってきました。」
お昼時のランチを中国ではスマートフォンを使って注文する人が増えている。
新型コロナウィルスの感染拡大で需要が増えたのが出前。
少なめの料理が人気を集めている。
去年改装オープンしたのに合わせてハーフサイズの料理も提供を始めた店。
売れ筋の“鶏とナッツの炒め物”。
ハーフサイズは通常サイズの7倍ほどの注文があるという。
料理の手間はかかるようになったものの
店の利益は増えたという。
(店のオーナー)
「小盛の料理ならばお客さんに全部食べてもらえて浪費もありません。
 お客さんはたくさんのメニューを注文できるので
 何度もうちの店に足を運んでくれる。
 だから皆がハッピーです。」
官民一体となって食品ロスの問題に取り組む一方
専門家は
より強制力を伴った対策をとるべきだと主張している。
(中国人民大学 鄭教授)
「中国人はたくさん料理を並べてもてなすので浪費がひどくなる。
 これは一種の文化的な問題です。
 節約意識の確立には長い時間がかかります。
 国が何度も呼びかけて
 立法や宣伝で正していくしかないでしょう。」

習近平国家主席が異例の重要指示まで出したのは
将来的に食糧危機が起きる可能性があると考えているからだと思われる。
とりわけ今年は食料の安定的供給を脅かすさまざまな要因が起きている。
まず新型コロナウィルスの感染拡大。
一部の国では自国の食糧供給を守ろうと農産物の輸出制限に乗り出している。
さらに中国ではこの夏
長江流域を中心にした豪雨災害で農業被害が出ていて
バッタの大量発生による被害が中国国内でも伝えられている。
こうした自然環境の問題に加えて
米中関係の悪化も食料の安定供給を脅かす要因である。
中国では
主食であるコメ・小麦・トウモロコシの自給率は去年は98%とほぼ自給できているものの
食料油や家畜のえさなどとして欠かせない大豆は消費量の85%を輸入に頼っていて
アメリカも主要な輸入国の1つなのである。
米中関係が今後さらに悪化し両国のつながりを切り離す
いわゆる「デカップリング」に陥れば
食料を輸入できなくなる事態も考えられる。
こうしたいわば最悪の事態を避けるためにも
中国としてはまず食べ残しの無駄を省くことで食料をできるだけ国内で自給できるようにしたい。
食べ残しがすぐに減るかどうかは不透明である。
実は習主席は2013年にも同じような重要指示を出して
国民に対し浪費を戒めるよう求めたが十分に徹底されなかった。
中国では大皿の料理を大勢で食べる場合は少し多めに注文することが多い。
またお客さんをもてなす場合も
もてなす側のメンツにかけて食べきれないほどふるまうといった感覚がある。
こうした人々の習慣を一気に変えることは難しい。
習近平指導部にとっては
仮に食糧不足が起き国民が満足に食事を食べられなくなれば
共産党一党支配の正当性をも失う深刻な事態に陥りかねないだけに
何としても防ぎたいはず。
今後はより強制力のある対策を行なう方針で
今回の支持を受けて全人代では
飲食の浪費を抑制するための法整備の検討を始めたと伝えられている。
14億の人口を擁する中国の食糧問題は世界の食糧問題に直結する。
日本としても無視できない問題である。

 

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焙煎方法を研究 コーヒー豆から新飲料

2020-09-28 07:00:00 | 報道/ニュース

9月8日 NHK「おはよう日本」


名古屋ではコーヒー豆を原料としながら見た目も味もこれまでとは全く違う飲み物が開発され注目されている。
お茶のような透明感。
でも原料はコーヒー豆。
独特の製法で作られた新しい飲み物である。
「ちょっとお茶っぽい苦みというか渋みも感じて
 でもすごく落ちつく味だな。」
「もう全く違いますね。
 今まで飲んだ近いものだと黒豆茶とか。」
この飲み物を開発したのは
コーヒー豆の研究を行なっている加藤さん。
もともとコーヒーに関心を持っていたわけではなかったそうである。
しかし8年前 姉の結婚相手の親族を訪ねてタイに行った時のこと。
一族が山岳地帯で経営するコーヒー農園でコーヒーの魅力に気づかされる。
(加藤さん)
「そもそも僕は
 コーヒーというものが黒くて苦いものという固定概念があったんですけれども
 原材料を見た時に赤い果実の種だったので
 黒くないんだと。」
コーヒーの奥深さを感じた加藤さん。
帰国後 それまでの仕事を辞めコーヒー豆の研究を始めることにした。
コーヒーは“コーヒーチェリー”と呼ばれる実の種が原料である。
これを洗って乾燥させたものを焙煎することで褐色になっていき
香ばしいコーヒーになる。
焙煎次第でコーヒー豆の可能性を広げることができる。
加藤さんは焙煎をする前と後の成分を検査機関に調べてもらった。
すると焙煎するの前の豆には
クロロゲン酸という抗酸化作用があるとされる成分が
焙煎した後のコーヒー豆には約4,800倍含まれていることが分かった。
(加藤さん)
「健康成分がすごくもったいないと分析結果で分かり
 1つの選択肢として
 緑茶と紅茶のように
 同じ原材料の茶葉で全く違う飲み物になっているものを
 コーヒー豆に置き換えた。」
健康にいい成分をできる限り残した飲み物を作ろうと
加藤さんは焙煎方法の研究を始めた。
じっくり火が通せる遠赤外線や
一気に温度を上げられるガスを使った焙煎機など
さまざまな方法で加熱を工夫。
温度や時間
焙煎機の回転速度などを変えながら実験を繰り返した。
(加藤さん)
「主な成分が分解されないように温度をコントロールするところですね。
 何百とおりとあったので
 ひとつひとつ潰していきながら
 何が有用なのか検討していった。」
加藤さんは愛知県の食品工業技術センターにも相談。
試作品の成分分析もしてもらいアドバイスを受けながら
焙煎方法を確立させていった。
そして7年の歳月をかけて完成させた。
県の研究センターで分析したところ
焙煎前の豆の約7割のクロロゲン酸を残っていることがわかった。
焙煎の温度が低いので豆に色がつかず透明感が出たのである。
さらにハーブティーや緑茶とブレンドするなど
これまでのコーヒーにはなかったの飲み方もできることも分かった。
加藤さんはこれからのもコーヒーの新しい可能性を切り開いていきたいと考えている。
(加藤さん)
「世界中でコーヒーというものは飲まれますから
 コーヒー豆飲料の新たな選択肢としてスタンダードにしていきたいと思っている。」
 

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「死生学」 デーケン神父

2020-09-27 07:00:00 | 編集手帳

9月8日 読売新聞「編集手帳」


妹パウラは重い病気を患い、
4歳で亡くなった。
「天国で、また会いましょう」と言い置いたという。

隣家の親友は「またあした」と言って別れたあと、
空襲で焼け死んだ。
自身も戦闘機の機銃掃射を受け、
間一髪で死を免れる――。
ドイツ出身の神父で上智大名誉教授、
アルフォンス・デーケンさんの少年時代である。
子供向けの絵本『人生の選択 デーケン少年のナチへの抵抗』(藤原書店)に描かれている。

妹や友人との別れが死を哲学的に考える土台になったという。
「死生学」を日本に定着させ、
終末期医療の改善やホスピス運動の発展に尽くしたデーケンさんが88歳で亡くなった。

死への考察は生を考えることでもある。
「よき死を迎えるには、
 よく生きること」とかつて本紙に語っている。
先の絵本は12歳にして人生の岐路に立たされた日々がつづられている。
成績優秀だった小学生のとき、
ナチのエリート養成校を薦められ恐怖をよぎらせながら断るのだが、
人生の選択は心で勇気を持って決める瞬間があるのだと子供たちに告げている。

よき死を迎えられたかどうか。
問うまでもない人が旅立った。



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王室改革を訴えるタイの若者たち

2020-09-26 07:00:00 | 報道/ニュース

9月7日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」


“微笑みの国” タイ。
学生などによる反政府デモが各地で起きている。
政権批判だけでなく
これまで絶対的な権威とされてきた王室の改革を求める声があがる異例の事態となっている。

タイでは今年7月以降 連日のように各地で抗議集会が開かれ
8月16日に行われた集会には1万人以上が参加し
6年前のクーデター以降最大規模となった。
この場で学生たちが訴えたことの1つが王室の改革である。
タイでは王室を中傷することは厳しく禁じられ
違反すると不敬罪に問われ
最長で禁錮14年が課される。
議論することすらタブー視されてきた王室のあり方に言及した今回の抗議活動。
その背景に何があるのか。

タイの国民にとって大きな存在なのが
2016年に亡くなったプミポン前国王である。
70年にわたって在位し
国民の絶大な尊敬を集めた。
(法政大学 浅見教授)
「1960年代 まだタイが貧しかった時に
 一番貧しい農村を積極的に訪問して
 農村の人たちの暮らしを改善できるようさまざまな開発プロジェクトを
 国王が直々に行ったと言われる。
 タイはこれまでにもクーデターとか大きな争いがあったが
 最終的には
 プミポン前国王が調停に出て軍人に自粛を求めて収めることがあった。
 そういったことから
 タイが混乱したら最後はプミポン前国王が収めてくださる。
 特に1990年代からプミポン国王をある意味“神格化”する動きが出て
 プミポン国王自身も
 それに合うような立ち居振る舞いをしていたこともあり
 非常にカリスマ性のある国王になった。」
プミポン前国王が亡くなり
ワチラロンコン国王が即位してから約4年。
若者たちの一部は
王室へのひぼう中傷を罰する不敬罪の廃止や
国王の神格化教育の禁止など
10項目にわたって王室の改革を訴えている。
なぜいま若者たちはタブーを起こしてまで変化を求めているのか。
(法政大学 浅見教授)
「特にこの時期高まった理由として新型コロナウィルスの問題がある。
 タイはもともと観光業が盛んな国で
 外国からの観光客が入ってこないのはタイ経済に大きなダメージを与える。
 高校生とか大学生がデモや集会の中心になっているが
 口々に自分たちの将来が心配だと言っている。
 タイ経済は新型コロナウィルスで非常に大変な状況なので
 有効な対策を打ち出すことができない政治指導者への憤り
 不満
 失望がある。
 それに重ねて
 たくさんの予算を無駄に使っているように見える国王への不満。
 そしてその国王に対して何も言えないプラユット首相への不満が重なってくる。
 2016年にプミポン前国王が死去してから
 新国王になったワチラロンコン国王はいろいろ言動に問題がある。
 よくあげられるのはタイ国内にいないということ。
 国王が多額のお金を海外で使い続けてることへの憤りが
 新型コロナウィルスの問題が出る以前よりさらに強くなっている。」
抗議活動は首都バンコクのみならず地方でも行われている。
若者たちはネット上で連携し活動を広げている。
(法政大学 浅見教授)
「夕方になって学校や会社が終わったら自発的に来て
 夜になったら次の日学校や会社があるから帰るというデモ。
 これまでよりも人数は今の時点では少ないが
 かなり自発的に
 しかも若い人たちが参加している。
 ツイッターのトレンドでは
 4~5日に1回は王様を揶揄する
 あるいは王室に対する不満を表すハッシュタグがトップ5に入る。
 これだけ一斉に言えば捕まらないということで
 集会の際に結構掲げるようになった。」
抗議活動が広がりを見せる一方
王室を擁護する人たちからは反発が起きている。
8月30日にはバンコクに数千人が集まり
“王制を破壊しようとする行為は許さない”と訴えた。
(法政大学 浅見教授)
「タイ国民が一致団結していま改革に向かっているのであれば
 改革は秒読み段階だが
 必ずしもそうではない。
 やはりこれまで自分の人生でずっと国王を崇拝してきたものを
 急に変えることに対する彼ら自身の心の問題として
 整理がつかない人の割合は少ないが絶対数はかなりいる。
 2016年にワチラロンコン国王が即位してから
 いまの3軍(陸海空)の上層部は
 国王に非常に忠誠心が強い人たちで固められている。
 これまでの対応策では生ぬるいと感じた国王や周辺の人たちが
 強硬策をとってもいい
 とるべきだと考える軍人に
 クーデターを起こさせることも可能性としてささやかれているため
 その辺が最悪のシナリオだろう。
 双方が自生しないと大変な事になるという危機感を
 タイ人が抱き始めている。」


 

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インドネシア 高級魚養殖 コロナ禍で危機に

2020-09-25 07:00:01 | 報道/ニュース

9月4日 NHKBS1「国際報道2020」


ベラ科最大の魚 メガネモチノウオ。
一般的は「ナポレオンフィッシュ」の名称で知られている。
中国料理では高級魚として珍重されている。
ナポレオンフィッシュは主に熱帯の海に生息していて
インドネシアのナトゥナ諸島では養殖がおこなわれているが
今年は新型コロナウィルスの影響でピンチである。

150以上の島からなるインドネシアのナトゥナ諸島。
その1つ スダナウ島。
8200人が暮らすその小さな島では
約5万匹のナポレオンフィッシュが養殖されている。
インドネシアでは好んで食べる人がほとんどおらず
養殖された魚はすべて海外向けである。
行き先は香港。
香港では高級食材として中国料理には欠かせない。
値段は他の魚の4倍ほどで取り引きされるという。
(漁師 アセガフさん)
「通常は20日ごとに香港から船が来ます。
 1キロあたり80万ルピア(約6,000円)です。」
ナトゥナ諸島の人たちの平均月収は約2万2,000円。
ナポレオンフィッシュは養殖が始まった30年ほど前から島の人たちを支える貴重な収入源となってきた。
漁師のバサールさん(37)。
漁師になった当時は家に電気も水道も通っていなかった。
ナポレオンフィッシュの養殖を始めたことで収入は5倍に増え
いまでは3軒の家を持つようになった。
(漁師 バサールさん)
「ときには月に5,000万ルピア(約35万円)の利益が出ることもあります。」
高級魚として取引されるナポレオンフィッシュだが
絶滅のおそれがある魚として保護の対象にもなっている。
インドネシアでも一度に輸出できるのは島全体で200匹までと制限されている。
これが魚の価値を一層高める要因にもなっている。
しかし今年は状況が一変した。
新型コロナウィルスによる影響である。
輸出先の香港で感染が広がり
現地のレストランが営業停止に追い込まれたことが痛手となった。
取引業者が島を訪れたのは4月以降一度だけ。
現在も業者からの連絡が途絶えたままである。
(漁師 バサールさん)
「3か月以上 船が来ないと倒産します。
 子どもの学費も魚の売り上げから出しているので
 船が来ないとどうしようもない。」
漁をするためのボートに人を乗せたり
他の魚や貝を売ってしのいでいるが
先行きは見通せない。
(漁師 バサールさん)
「新型コロナの感染が早く収束して
 これまでどおり香港からの船が来てくれることを願うばかりです。」
高級魚によって維持されてきた島の生活。
ウィルスの感染拡大が暗い影を落としている。


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“ナンバー2”が台湾訪問 チェコの中国離れ

2020-09-24 07:00:00 | 報道/ニュース

9月3日 NHKBS1「国際報道2020」


チェコの要人の台湾訪問に
世界が注目している。
(台湾 蔡英文総統)
「我々は圧迫に屈服せず
 勇敢に声をあげ
 国際社会により積極的に関与していく。」
(チェコ ビストルチル上院議長)
「台湾の友情に満ちたもてなしに感謝する。
 今回の訪問が各国にとっての前例になると信じている。」
チェコで大統領に次ぐナンバー2のビストルチル上院議長と蔡英文総統が会談。
(中国 王毅外相)
「チェコの議長は一線を越えた。」
中国は“台湾は中国の一部”とする「1つの中国」の原則に反するとして激しく反発。
国交を結ぶ国々に対して
台湾との政府高官の往来など政治的な交流を認めていない。
今回 チェコのビストルチル議長は90人規模の異例の訪問を行なったのである。
チェコは近年 中国との関係を重視する立場をとってきた。
たとえば2013年に就任したゼマン大統領。
“チェコは中国にとってのEUの玄関口になる”として関係を深めてきた。
それがなぜチェコの上院議長は中国の反発を承知の上で台湾訪問を決断したのか。

(9月1日 台北 チェコ ビストルチル上院議長)
「民主主義の原則を守り
 厳しい条件下で民主主義を築き上げる人々を指示するのは
 民主主義の義務だ。」
チェコの重鎮が中国へのけん制を繰り返すのはなぜなのか。
東西冷戦中
東側陣営の当時のチェコスロバキアでは
ソビエトの影響下で共産党の独裁体制が続いていた。
1968年 民主化運動「プラハの春」が起きると
ソビエトは“社会主義全体への脅威”としてこれを弾圧。
多くの市民が犠牲になった。
チェコ国内でかつてのソビエトと中国を重ね合わせる見方が出るなか
ビストルチル議長は台湾への連帯を示すこんな発言も。
(チェコ ビストルチル上院議長)
「台湾の自由の価値に対し支持を表明したい。
 『私は台湾人だ 我是台湾人』。
 独立した公正な将来を願っている。
 それはあなた方の手の中にある。」
今回の訪問団の中にはプラハ市のフジプ市長の姿もあった。
訪問に先立って取材に応じたフジプ市長は中国への批判を繰り返した。
(プラハ フジプ市長)
「共産主義が崩壊して以降
 チェコは人権とリベラルな価値を力強く支持してきた。
 中国の人権問題に対し沈黙することはできない。」
2016年 北京市と友好都市協定を結んだプラハ市。
一昨年就任したフジプ市長は
この協定に盛り込まれていた「1つの中国」に関する項目を削除するよう中国側に求めてきた。
「1つの中国」の原則を主張する中国は反発。
予定されていたプラハの管弦楽団の中国公演は中止に追い込まれ
友好都市の関係も解消された。
そして中国離れのもう1つの原因が。
(プラハ フジプ市長)
「中国の投資の約束は企業買収に過ぎなかった。
 新たな雇用を生み出すものではなかった。」
2016年 習近平国家主席は中国の国家主席として初めてチェコを公式に訪問。
ゼマン大統領はこの年だけで“4,400億円余の巨額投資が中国により行われることになる”と成果を強調した。
しかしそのほとんどは実現していない。
(プラハ フジプ市長)
「中国の約束は果たされず
 信頼できるビジネスパートナーでないのは明らかだ。」
さらに今回の台湾訪問を後押しする象徴的な動きもあった。
8月12日 チェコの議会の壇上に立ったのは
アメリカのポンペイオ国務長官。
上院議長の訪問に先立ち
共に中国に対抗するよう呼び掛けたのである。
(アメリカ ポンペイオ国務長官)
「中国共産党の脅威に対抗するのはさらに難しい問題だ。
 彼らは旧ソビエトとは違う形で
 我々の経済 政治 社会に深く入り込んでいる。」

ビストルチル議長の「我是台湾人」は
台湾を指示する姿勢を国内外にはっきりと示した発言だった。
実はこの発言は
ドイツが東西に分断されていた冷戦のさなか西ベルリンでアメリカのケネディ大統領が
「私はベルリン市民だ」とドイツ語でのべ
共産主義に対抗し市民に連帯を示した発言を引き合いにしたものである。
ビストルチル議長としては新冷戦とも言われるアメリカと中国の対立を念頭に
“民主主義と自由”という価値をより重視する姿勢を鮮明にしたといえる。
一方 今回の台湾訪問について中国との関係を重視するチェコの大統領や首相は
外交方針に反するとして反対していて
国内でも賛否が分かれている。
ビストルチル議長の台湾訪問は
ヨーロッパ各国の中国との関係のあり方に一定の影響を与えるという見方も出ている。
EUにとって中国は世界2位の貿易相手で重要な巨大市場である。
その一方で
香港国家安全維持法やウイグルやチベットの人権状況などをめぐり
中国への警戒感は強まっている。
今回のチェコの議長の台湾訪問についてもヨーロッパ議会の議員などから支持する声が上がっていて
中国情勢に詳しい現地の専門家は次のように指摘する。
(カレル大学 ロモバ教授)
「今回の訪問は
 中国側の要求に従うことが常に自分たちのためになるのか
 欧州の政治家たちが再考するきっかけになるのではないか。」
今回 中国がチェコに対して激しく反発したことについても
フランスやドイツなど複数の国が
“EUのメンバーの国への脅迫は受け入れられない”と非難していて
今後中国との向き合い方を問い直す動きが広がる可能性がある。
ビストルチル議長の訪問を台湾はどう受け止めているのか。
大きな外交成果という受け止めで
新聞の一面にビストルチル議長の「我是台湾人」という発言を大きく伝えている。
台湾は蔡英文政権のもと中国の外交攻勢を受けて
この4年余で外交関係を維持してきた7か国と断交に追い込まれるなど
苦しい状況が続いていた。
しかしアメリカのトランプ政権は8月
アザー厚生長官を1979年の断交以来最高位の高官として台湾に派遣。
そして今回チェコが国交のない国としては異例のナンバー2の上院議長が訪問した。
米中の対立やヨーロッパなどで広がる中国への警戒感が
台湾にとって追い風となっているのは間違いない。
中国にとって台湾は
絶対に譲ることができない革新的利益と位置づける問題である。
王毅外相が“14億人の敵だ”と述べてチェコの上院議長の訪問を強く非難しているように
今後台湾に対しても一層圧力を強めることは予想される。
これに対して台湾はアメリカをはじめ各国との連携をさらに強めたい考えである。
台湾では9月19日李登輝元総統の告別式があり
そこにアメリカなどからどのような弔問客が参加するかが次の焦点である。
“新冷戦”と呼ばれるほど米中の対立が激しさを増す中で
台湾をめぐる問題は大きな火種となっていて
各国の動きに目が離せない状況が続く。


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フランス コロナ禍から“映画文化”を守る

2020-09-23 07:00:00 | 報道/ニュース

9月2日 NHKBS1「国際報道2020」


6月下旬
映画館の営業が許可されたフランス。
6月22日午前0時のパリ。
日付が変わるのに合わせて映画館には100人を超える映画ファンが詰めかけた。
(観客)
「3か月間 心待ちにしてきました。
 家で見るのとは全く違う雰囲気です。」
出演者も会場に駆け付けた。
(俳優 エマニュエル・ドゥボスさん)
「静寂を乱すポップコーンの音さえ
 今はいとおしい。」
映画館を家族とともに経営する ルイ・メルルさん。
(映画館 共同経営者 ルイ・メルルさん)
「営業ができず本当に苦しい時間を過ごしました。
 大勢の観客とともに再会できてうれしいです。」
フランス政府が管轄する国立映画センターは
映画文化を絶やしてはいけないと
外出制限が始まった直後に映画館に対して日本円で約20億円の支援を前倒しで開始。
ほとんどの映画館が6月
政府の営業許可を受けて再開することができた。
(国立映画センター)
「映画産業全体を支え
 企業の倒産を防ぐことが支援の狙いです。
 最大の困難は
 観客との絆を回復し再び映画館に来てもらうことなんです。」
映画館が再開された後も客足はなかなか戻らず
全国の映画館の入場者数は前年よりも約7割減っている。
営業を続けても採算がとれないとして
夏の間休館した映画館も相次いだ。
メルルさんたちの映画館でも利用客は以前より3割以上減少した。
それでも営業を続けるのは
“伝統を絶やしたくない”という思いがあるからである。
(メルルさん)
「この通りに曽祖父の最初の映画館があったんです。」
映画館は1937年
旧ソビエトからフランスに移住したひいおじいさんのボリス・グルビッチさんがはじめ
メルルさんで4代目である。
1940年ナチス・ドイツがフランスを占領すると
ユダヤ人だったひいおじいさんはアメリカに亡命。
そこで目にした複数の映画スクリーンを持つ映画館に魅了され
戦後パリに戻り
パリで初めての複合型の映画館を起ち上げた。
(メルルさん)
「当時は映画の隆盛期
 テレビもなく
 映像を見ようと思ったら映画館しかなかったのです。
 映画という“遺産”を継承していきたいです。
 金儲けではなく情熱が駆り立てるのです。」
時代が移り変わり
インターネットでも手軽に映画を見られるようになるなか
メルルさんの映画館では
大きなスクリーンで上映する意味がある作品を厳選しているという。
(父親)
「芸術作品は没頭する必要がある。
 テレビ画面より映画館の暗闇がふさわしい。」
新しい客層を取り込もうと
経営が厳しいなかでも若者割り引きを導入。
外出制限中はフェイスブック上での発信にも力を入れた。
さらに感染防止のため対面での会話が敬遠されるなかでも
大切にしているのが観客との交流である。
(メルルさん)
「ステキな作品ですね。」
(観客)
「ええ とっても。」
(メルルさん)
「作品について質問したり議論する。
 若者向けの上映会に力を入れています。
 作品をただ消費するのではなく考えを深めてほしいんです。」
見ず知らずの人が同じ場所に集い
作品を通してつながり合う。
メルルさんは
それがひいおじいさんの時代から続くフランスの伝統だと考えている。
(メルルさん)
「映画の喜びが戻りつつあります。
 映画館は感動を分かち合う場なのです。
 映画館を信じていなかったらやめています。
 再び活気が戻ると確信しています。」



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パキスタンの小児科医 ポリオ根絶への思い

2020-09-22 07:00:29 | 報道/ニュース

9月1日 NHKBS1「国際報道2020」


パキスタンの小児科医
ナディア・アタさん(32)。
ナディアさんはポリオを根絶するためにワクチンの接種活動にあたっている。
ポリオは幼い子どもがかかることが多い感染症で
発症すると手や足に麻痺が残ったり死に至るケースもある。
確実な治療法というのはないが
ワクチンの接種で予防できるとされている。
8月25日にはWHO(世界保健機関)が
“ポリオがアフリカから根絶された”と宣言した。
これで世界でポリオの感染が続くのは
アフガニスタンとパキスタンの2か国だけとなっている。
そのパキスタンで新型コロナウィルスの感染拡大の影響で医療現場がひっ迫するなか
ナディアさんは子どもたちをポリオから守ろうと懸命に活動を続けている。

パキスタン東部の都市 ラホール。
町の公立病院で小児科医をしているナディアさん。
ナディアさん自身も生まれて9か月の時にポリオウィルスに感染。
発症後 左足に麻痺が残った。
治療を受ける日々の中でいつしか
「自分のように苦しむ子どもたちをなくしたい」と考えるようになったという。
(小児科医 ナディア・アタさん)
「足が麻痺し幼い頃は何度もお医者さんに診てもらいました。
 パキスタンからポリオを根絶しようと決意しました。」
リハビリを続け
その後医師となったナディアさん。
10年以上にわたりポリオワクチンの接種活動を続けている。
ところが新型コロナウィルスの影響で外出制限が行われた3月以降
PCR検査などの業務が優先され
ポリオワクチンの接種活動は余儀なくされた。
(小児科医 ナディア・アタさん)
「新型コロナウィルスの感染者が急増し
 住民の命を守ることが最優先でした。
 ポリオワクチンの接種活動は中断するしかありませんでした。」
ワクチン接種が滞る中
ポリオの発症が続いている。
特に深刻なのはパキスタン北西部のペシャワール郊外である。
1歳6か月になる女の子は7月にポリオウィルスに感染したことが判明。
右足に麻痺の症状が現れた。
(娘がポリオに感染)
「外出制限が行われて以降ワクチンの接種活動は止まりました。
 娘が足を動かせず痛みを抱える姿を見るととても悲しくなります。」
予防接種を求める声が日増しに高まるなか
ナディアさんは自らの判断で活動の再開に向けた準備を進めた。
州や各地区の保健担当者から聞き取りを行い
ワクチンを希望する子どもの家庭を特定。
速やかに摂取できる体制を整えていった。
「他の地域からスタッフは送れますか?」
ワクチンを投与を行なう“ポリオマーカー”と呼ばれる女性たちに対しては
新型コロナウィルスの感染防止対策の指導も行った。
「マスクはこのように指で押さえ
 頭を布で覆ってください。」
活動再開の準備が進むなか
ナディアさんに政府からうれしい知らせが届いた。
新型コロナウィルスの感染が抑えられた地域に限定し
小規模ながら予防接種の活動再開が認められたのである。
迎えた活動再開当日。
ナディアさんがポリオワーカーの女性たちの先頭に立って1軒ずつ家庭を回る。
イスラム過激派などに襲撃される恐れがあるため警察官も同行する。
1時間に10軒ほどの家庭を訪問しワクチンを投与することができた。
(ワクチンの投与が行われた家庭)
「活動が再開し良かったです。
 子どもた接種できてホッとしました。」
「子どもがポリオに感染しないか心配でした。
 ワクチンは必要不可欠です。」
約5か月ぶりに活動の再開にこぎつけたナディアさん。
ポリオの根絶に向けて今後
他の州のNGOなどとも連携し
より多くの子どもたちにワクチンを接種していきたいという。
(小児科医 ナディア・アタさん)
「ポリオは子どもからすべてを奪うウィルスです。
 子どもたちの未来を守るためにも
 ポリオの根絶に向けて努力を続けていきます。」



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苦境に立つ イランのキャビア

2020-09-21 16:39:40 | 報道/ニュース

9月1日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」


チョウザメの卵を塩漬けにして作るキャビア。
カスピ海産のキャビアは世界的にも高級品として知られてきた。
しかし近年
世界各地で養殖がおこなわれ
国際的な競争が激化。
イランのキャビアを取り巻く状況は大きく変わった。

イランの北に広がるカスピ海。
ロシアやアゼルバイジャンなど5つの国に囲まれ
面積は日本の国土とほぼ同じである。
カスピ海沿岸の港町。
地元の市場にはボラなどカスピ海でとれる豊富な魚介類が並んでいる。
(住民)
「とてもおいしいです。
 カスピ海はイランにとって貴重なものです。」
しかしキャビアがとれるチョウザメは店頭には見られない。
かつて世界の漁獲量の90%を占めたともいわれるカスピ海のチョウザメは
1990年代以降
乱獲や環境汚染などの影響で激減。
IUCN(国際自然保護連合)から絶滅危惧種に指定されたオオチョウザメを始め
カスピ海のチョウザメは2010年以降 漁が禁止されたのである。
天然のチョウザメの減少を受け
イランをはじめ世界各地で2000年代以降 養殖が広がった。
世界保護基金の報告書によれば
キャビアの世界の取引も2015年には90%以上が養殖のものに取って代わったという。
「20年前 ここでは約300人がキャビアのために働いていました。」
元漁師のバハシャイさん。
かつてカスピ海でチョウザメをとっていたが
15年余前から養殖に取り組んでいる。
バハシャイさんが育てているのは
成長すると体重400キロほどにもなるチョウザメ1万2,000匹。
かつての生息域と同じ環境を作り出そうと
カスピ海から水を引き込んでいる。
ただキャビアとなる卵を取り出すまでには10年以上かかるという。
(養殖業者 バハシャイさん)
「10年間は稼ぎを銀行の返済に回さないといけません。」
ようやく生産できるようになったものの
キャビア市場には巨大なライバルが出現していた。
近年 キャビアの要職を急速に拡大している中国である。
価格の手ごろな中国製のキャビアは世界を席巻。
今ではシェアの4分の3を占めるまでになっているといわれている。
(養殖業者 バハシャイさん)
「競争相手の中国は大量生産しています。
 同じやり方では勝てません。」
そのためにバハシャイさんが進めているのが高級路線である。
バハシャイさんが育てているのはいずれも
「ベルーガ」と呼ばれるオオチョウザメである。
このチョウザメからとれる最高級のキャビアは
世界市場で1%余しか出回っていないといわれている。
世界各地で大量のキャビア生産が進むなか
質の良い高級品の特化する戦略で
名産品を守りたいと考えている。
(養殖業者 バハシャイさん)
「高級で質の良いキャビアを生産することで
 世界と戦えます。
 イランのキャビアを世界市場で再び有名にしたいです。」

かつてはカスピ海など特定の場所でしか生息していなかったチョウザメが
今では世界各地で養殖されるようになったことで
状況は劇的に変わった。
特に中国では
大規模な投資を行ない
数十万匹の単位のチョウザメを育てている施設もあり
規模の上ではイランの養殖業者は太刀打ちできない。
バハシャイさんは
「カスピ海で以前のようにチョウザメをとれるようになってくれたら」
と語っていて
キャビアの希少価値が高かった時代を懐かしんでいるようだった。
この状況に追い打ちをかけてイランの業者を苦しめているのが
アメリカによる経済制裁である。
イランのキャビアはほとんどが海外向けだが
制裁によって海外のバイヤーと銀行を通じた決済ができず
取引に大きな支障が出ていると専門家は指摘する。
(漁業専門家 ケイハンプール氏)
「イランは最悪の制裁を受け
 海外と金融取引ができません。
 どの国もイランに投資はできず
 キャビアの輸出も妨げています。」
経済制裁に加えて新型コロナウィルスの影響もあって
イランではキャビアだけでなく経済全体が大きなダメージを受けている。
かつてない厳しい時期を迎え
イランのロウハニ大統領はイラン経済の状況に危機感を示している。
2018年にトランプ政権がイランに対する制裁を再開させて以降
通貨暴落と深刻なインフレが続いている。
数年前に比べ家賃は3倍になったことはイランではよく聞く話である。
新型コロナウィルスもイランでは中東で最多の感染者が出ている。
ただ感染拡大防止のために経済活動を大幅に制限すれば
400万人が失業する恐れがあるとして
政府は経済を動かさざるを得ない状況である。
この厳しいイラン経済を大きく左右するのは
11月に迫ったアメリカの大統領選挙である。
野党民主党候補バイデン氏は
トランプ政権は離脱したイランの核合意に復帰する姿勢を示している。
イランは
選挙結果次第でアメリカとの対立関係が緩和するのではないかと期待する人もいて
経済界を中心にその行方を見守っている。

 

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論語の普及か、地球規模の下心か

2020-09-20 05:05:31 | 編集手帳

8月31日 読売新聞「編集手帳」


<論語で一生を貫いてみせる>。
日本の資本主義の父、
渋沢栄一は30代でそう誓いをたてたという。
(『現代語訳 論語と算盤』ちくま新書)

91歳で他界するまでに起こした会社は数知れない。
<四十、五十は洟垂(はなた)れ小僧、
 六十、七十は働き盛り、
 九十になって迎えが来たら、
 百まで待てと追い返せ>と語ったと伝えられる。
<十五にして学に志し>で始まる孔子の教えに似ていなくもない。

とはいえ「論語読みの論語知らず」という警鐘も昔からある。
気を付けたいところだが、
そう言われかねない評判がよりによって世界に論語の普及を図る中国の事業を包んでいる。

この15年で160か国の大学などに作られた「孔子学院」である。
日本でも15の大学に設けられている。
中国政府が講師派遣など運営を後押しし、
講座のような形で中国文化に触れる学生をどんどん増やしてきた。

ただこのところ、
地球規模の親中派育成という下心が露骨に見えてきたらしい。
政治宣伝や影響力拡大の拠点になるとの警戒が強まり、
欧米で閉鎖が相次いでいる。
論語には敬意をもたれない国作りのことはさて、
何て書いてあったろう。

 

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茅野市蓼科 欧風料理アンファミーユ

2020-09-19 19:24:41 | グルメ

  

                    (食べログより)

  

 

 

東急リゾートタウン内

 http://www.lcv.ne.jp/~enfamill/

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山梨県清里 そば処さと

2020-09-19 19:24:07 | グルメ

  
                      (食べログより)

  

 

JR小海線清里駅から徒歩5分
清里駅から331m


http://jingen.co.jp/index.html

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「ファクトフルネス」 コロナ禍で読まれる理由は

2020-09-18 07:00:00 | 報道/ニュース

8月28日 NHKBS「国際報道2020」


世界的なベストセラーとなっている本
「FACT FULNESS」。
世界の状況について私たちがどれだけ間違った認識を持っているかを考えさせる内容である。
FACT (ファクト) FULNERSS(フルネス)
事実やデータをもとに世界を正しく捉えることで
さまざまな問題により冷静に対応できるというものである。
この本が2年前に出版されてから日本をはじめ世界中で大ヒットしているが
コロナの感染拡大とともにさらに売れ行きを伸ばしている。

都内の書店にずらっと並んだ「FACT FULNESS」。
1万部売れれば成功とされる外国の翻訳書だが
今年に入ってさらに売り上げを伸ばし
累計92万部を突破している。
(八重洲ブックセンター)
「短期間でこれだけの部数を伸ばすというのは
 非常にすごいことだと思います。」
この本は
貧困・格差・環境問題など世界の状況について
私たちがいかに誤解しがちかを示したうえで
その原因は“人間が抱える10の本能“にあると指摘している。
・分断本能
・“世界はどんどん悪くなっている”ととらえるネガティブ本能
・直線本能
・危険でないことを恐ろしいと思い込む恐怖本能
・目の前の数字が一番重要だと考えてしまう過大視本能
・パターン化本能
・宿命本能
・単純化本能
・犯人捜し本能
・焦り本能
かつて人類の祖先が危険から身を守るために身につけた“脳の性質”により
世界を現実以上にネガティブに捉える傾向があるという。
この本を執筆したのは
医師のハンス・ロスリング(2年前に他界)さんと
データ分析の専門家である息子のオーラさん
その妻のアンナさんの3人である。
(著者 アンナ・ロスリングさん)
「人間は常に分かりやすい派手なストーリーを求めていて
 ゆっくりとして地味な変化よりも
 極端で劇的なことが記憶に残りやすい。
 私たちはこの本を通して
 人々が自分の力で情報を正しく捉える方法を教えたいと思った。」
なぜ事実を正しく把握しなければいけないのか。
本には医師としてアフリカ モザンビークで働いていたハンスさんの苦い経験が書かれている。
あるとき海沿いの集落を訪れたところ
数百人が足の麻痺や目が見えなくなるなど原因不明の症状に苦しんでいた。
“もし感染症だったら
 一刻も早く手を打たないと
 都市部に広がり大変な事になる”と焦る市長。
ハンスさんは市長に集落に通じる道路を封鎖すべきか相談され
とっさに賛同した。
すると翌日
市場に向かうためボートでの移動を余儀なくされた住民たち20人が
波にさらわれ亡くなったのである。
その後の調査で
症状は感染症ではなく食中毒によるものだったことが分かり
ハンスさんは大きな後悔を抱えることになった。
しばらく私はショックで茫然としていた
恐れに支配され時間に追われて最悪のケースが頭に浮かぶと
人は愚かな判断をしてしまう
一刻も早く手を打たなければという焦りから
冷静に分析する力が失われてしまうのだ
新型コロナウィルスに関するさまざまな数字が飛び交う今
不安に苛まれデマに振り回される人も少なくない。
アンナさんは
今こそこうした本能を自覚し
データを冷静に捉えることが大切だという。
(著者 アンナ・ロスリングさん)
「例えばコロナの感染者数の多さを見ると怖くなります。
 でもさまざまな関連情報を見てみないと
 その数を多いとみるべきか少ないとみるべきか判断できません。
 パンデミックに直面すると私たちは恐怖にとらわれてしまい
 極端すぎるものの見方をしてしまいがちです。
 事実を正しく見られるようにすることで
 人々が現実的にスピーディーに対応できるようにしているんです。」
ネット上には
“この本を読んで見方が変わった”という声が数多くあがっている。
“コロナの重症者数にしても読み返すと色々と思う節ばかり”
“ファクトフルネスには
 グラフを正しく見ることや自分で調べる大切さが書いてあった”
“コロナも正しく恐れるべし”
アンナさんたちは今
世界に関する様々なデータを正しく把握する手助けにしてほしいと
独自のサイトで発信を続けている。
新型コロナウィルスについても現状をどう捉えればいいのか
夫のオーラさんとともにSNSで分かりやすく伝えている。
(夫で著者 オーラ・ロスリングさん)
「“今週亡くなった人”の数を
 “前の週に亡くなった人”の数で割るといいんです。
 それが1以上ならウィルスの勝ち(感染が広がっている)
 1より少なければ私たちの勝ちです(感染が抑えられている)」
次々と立ちはだかるグローバルな問題に向き合うために
アンナさんは
ファクトに基づいて世界を見る力を社会全体で育てていく必要があると
考えている。
(著者 アンナ・ロスリングさん)
「時間はかかると思いますが
 教育システムを変えなければなりません。
 授業で教えるデータや統計の使い方をアップグレードしなければならないんです。
 同時に
 人間の脳は情報を扱うのが苦手だと学ぶ必要があります。
 謙虚になり
 好奇心を持つことが大事なのです。」

 

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ラグビー日本代表の年内活動休止

2020-09-17 07:00:00 | 報道/ニュース

8月28日 読売新聞「編集手帳」


米ミュージカル映画『七人の愚連隊』は、
大物歌手フランク・シナトラが主演した名作である。
だが映画通として知られたイラストレーター、
和田誠さんが著書に書き留めたのは別の出演者の歌声だった。

刑事コロンボ役で有名なピーター・フォークがギャングの親分に扮して歌っていたという。
その歌の題は
「オール・フォー・ワン アンド ワン・フォー・オール
 (全員は一人のために。
  一人は全員のために)」

むろんジョークである。
このフレーズがギャングの団結に使われておかしみを覚えるのは、
本家本元であるラグビーの精神の輝きがあってのことだろう。

日本ラグビー協会が感染リスクを考慮し、
日本代表の年内の活動を休止する方針を固めた。
しかたないのだろうなと思いつつ、
昨秋の感動的なワールドカップ(W杯)を振り返ると、
少しさみしくなる。

W杯はスクラムで勝利をたぐり寄せた試合があった。
8人が体を“密”にし相手をぐいぐい押し込む場面を思い出すと、
こうも人との接触に気を使わねばならない今が信じ難くなる。
密に数字をくっつけて呼ぶのは辟易(へきえき)だけど、
“8密”はいい。

 

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