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「死生学」 デーケン神父

2020-09-27 07:00:00 | 編集手帳

9月8日 読売新聞「編集手帳」


妹パウラは重い病気を患い、
4歳で亡くなった。
「天国で、また会いましょう」と言い置いたという。

隣家の親友は「またあした」と言って別れたあと、
空襲で焼け死んだ。
自身も戦闘機の機銃掃射を受け、
間一髪で死を免れる――。
ドイツ出身の神父で上智大名誉教授、
アルフォンス・デーケンさんの少年時代である。
子供向けの絵本『人生の選択 デーケン少年のナチへの抵抗』(藤原書店)に描かれている。

妹や友人との別れが死を哲学的に考える土台になったという。
「死生学」を日本に定着させ、
終末期医療の改善やホスピス運動の発展に尽くしたデーケンさんが88歳で亡くなった。

死への考察は生を考えることでもある。
「よき死を迎えるには、
 よく生きること」とかつて本紙に語っている。
先の絵本は12歳にして人生の岐路に立たされた日々がつづられている。
成績優秀だった小学生のとき、
ナチのエリート養成校を薦められ恐怖をよぎらせながら断るのだが、
人生の選択は心で勇気を持って決める瞬間があるのだと子供たちに告げている。

よき死を迎えられたかどうか。
問うまでもない人が旅立った。



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