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苦境に立つ イランのキャビア

2020-09-21 16:39:40 | 報道/ニュース

9月1日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」


チョウザメの卵を塩漬けにして作るキャビア。
カスピ海産のキャビアは世界的にも高級品として知られてきた。
しかし近年
世界各地で養殖がおこなわれ
国際的な競争が激化。
イランのキャビアを取り巻く状況は大きく変わった。

イランの北に広がるカスピ海。
ロシアやアゼルバイジャンなど5つの国に囲まれ
面積は日本の国土とほぼ同じである。
カスピ海沿岸の港町。
地元の市場にはボラなどカスピ海でとれる豊富な魚介類が並んでいる。
(住民)
「とてもおいしいです。
 カスピ海はイランにとって貴重なものです。」
しかしキャビアがとれるチョウザメは店頭には見られない。
かつて世界の漁獲量の90%を占めたともいわれるカスピ海のチョウザメは
1990年代以降
乱獲や環境汚染などの影響で激減。
IUCN(国際自然保護連合)から絶滅危惧種に指定されたオオチョウザメを始め
カスピ海のチョウザメは2010年以降 漁が禁止されたのである。
天然のチョウザメの減少を受け
イランをはじめ世界各地で2000年代以降 養殖が広がった。
世界保護基金の報告書によれば
キャビアの世界の取引も2015年には90%以上が養殖のものに取って代わったという。
「20年前 ここでは約300人がキャビアのために働いていました。」
元漁師のバハシャイさん。
かつてカスピ海でチョウザメをとっていたが
15年余前から養殖に取り組んでいる。
バハシャイさんが育てているのは
成長すると体重400キロほどにもなるチョウザメ1万2,000匹。
かつての生息域と同じ環境を作り出そうと
カスピ海から水を引き込んでいる。
ただキャビアとなる卵を取り出すまでには10年以上かかるという。
(養殖業者 バハシャイさん)
「10年間は稼ぎを銀行の返済に回さないといけません。」
ようやく生産できるようになったものの
キャビア市場には巨大なライバルが出現していた。
近年 キャビアの要職を急速に拡大している中国である。
価格の手ごろな中国製のキャビアは世界を席巻。
今ではシェアの4分の3を占めるまでになっているといわれている。
(養殖業者 バハシャイさん)
「競争相手の中国は大量生産しています。
 同じやり方では勝てません。」
そのためにバハシャイさんが進めているのが高級路線である。
バハシャイさんが育てているのはいずれも
「ベルーガ」と呼ばれるオオチョウザメである。
このチョウザメからとれる最高級のキャビアは
世界市場で1%余しか出回っていないといわれている。
世界各地で大量のキャビア生産が進むなか
質の良い高級品の特化する戦略で
名産品を守りたいと考えている。
(養殖業者 バハシャイさん)
「高級で質の良いキャビアを生産することで
 世界と戦えます。
 イランのキャビアを世界市場で再び有名にしたいです。」

かつてはカスピ海など特定の場所でしか生息していなかったチョウザメが
今では世界各地で養殖されるようになったことで
状況は劇的に変わった。
特に中国では
大規模な投資を行ない
数十万匹の単位のチョウザメを育てている施設もあり
規模の上ではイランの養殖業者は太刀打ちできない。
バハシャイさんは
「カスピ海で以前のようにチョウザメをとれるようになってくれたら」
と語っていて
キャビアの希少価値が高かった時代を懐かしんでいるようだった。
この状況に追い打ちをかけてイランの業者を苦しめているのが
アメリカによる経済制裁である。
イランのキャビアはほとんどが海外向けだが
制裁によって海外のバイヤーと銀行を通じた決済ができず
取引に大きな支障が出ていると専門家は指摘する。
(漁業専門家 ケイハンプール氏)
「イランは最悪の制裁を受け
 海外と金融取引ができません。
 どの国もイランに投資はできず
 キャビアの輸出も妨げています。」
経済制裁に加えて新型コロナウィルスの影響もあって
イランではキャビアだけでなく経済全体が大きなダメージを受けている。
かつてない厳しい時期を迎え
イランのロウハニ大統領はイラン経済の状況に危機感を示している。
2018年にトランプ政権がイランに対する制裁を再開させて以降
通貨暴落と深刻なインフレが続いている。
数年前に比べ家賃は3倍になったことはイランではよく聞く話である。
新型コロナウィルスもイランでは中東で最多の感染者が出ている。
ただ感染拡大防止のために経済活動を大幅に制限すれば
400万人が失業する恐れがあるとして
政府は経済を動かさざるを得ない状況である。
この厳しいイラン経済を大きく左右するのは
11月に迫ったアメリカの大統領選挙である。
野党民主党候補バイデン氏は
トランプ政権は離脱したイランの核合意に復帰する姿勢を示している。
イランは
選挙結果次第でアメリカとの対立関係が緩和するのではないかと期待する人もいて
経済界を中心にその行方を見守っている。

 

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