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中国 食べ残し撲滅キャンペーン

2020-09-29 07:00:20 | 報道/ニュース

9月8日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」


売れ残りや食べ残しなどによって食品が廃棄される食品ロス。
世界各国で社会問題となっているが
客を豪華にもてなす習慣がある中国でも大きな問題となっている。
こうしたなか習近平国家主席の支持をきっかけに
食べ残し撲滅のキャンペーンが展開されている。

テーブルに並んだ色とりどりの料理。
中国では大皿の料理を取り分けて食べるのが一般的である。
しかし宴会の席などでは頼みすぎる場合も少なくない。
中国の都市部では
1年間に飲食店から出る残飯は1,700万トン余と推定され
3,000~5,000万人の1年分の食料に相当すると言われている。
この問題にメスを入れようとしているのが習近平国家主席である。
習主席は8月
“浪費が深刻で心が痛む”として浪費を戒める重要指示を出した。
国営テレビも特集番組などで浪費に警鐘を鳴らしている。
(CCTV)
節約は個人の道徳
国の安定に大事なことです
湖南省のある都市では役所の食堂で巡回指導が行われ
改善しない人には浪費の様子をとらえた監視カメラの映像を公開するという。
さらに
中国の動画共有サイトで人気を集めていた大食いを自慢するサイトは
習主席の支持の後“浪費を助長するものだ”と批判され
一部は削除される事態になった。
飲食店も独自に対策を始めている。
北京市内にある任期の串焼き店。
食べきれるだけ注文するよう店員が客に個別に確認している。
「1セット4串
 2人ならまず1セット頼んで
 おいしかったら追加してください。」
(客)
「いま地球上では食べ物が不足しているので
 節約して浪費しないのは良いことです。」
(店長)
「以前は浪費も見られたけど
 最近は比較的少なくなってきました。」
お昼時のランチを中国ではスマートフォンを使って注文する人が増えている。
新型コロナウィルスの感染拡大で需要が増えたのが出前。
少なめの料理が人気を集めている。
去年改装オープンしたのに合わせてハーフサイズの料理も提供を始めた店。
売れ筋の“鶏とナッツの炒め物”。
ハーフサイズは通常サイズの7倍ほどの注文があるという。
料理の手間はかかるようになったものの
店の利益は増えたという。
(店のオーナー)
「小盛の料理ならばお客さんに全部食べてもらえて浪費もありません。
 お客さんはたくさんのメニューを注文できるので
 何度もうちの店に足を運んでくれる。
 だから皆がハッピーです。」
官民一体となって食品ロスの問題に取り組む一方
専門家は
より強制力を伴った対策をとるべきだと主張している。
(中国人民大学 鄭教授)
「中国人はたくさん料理を並べてもてなすので浪費がひどくなる。
 これは一種の文化的な問題です。
 節約意識の確立には長い時間がかかります。
 国が何度も呼びかけて
 立法や宣伝で正していくしかないでしょう。」

習近平国家主席が異例の重要指示まで出したのは
将来的に食糧危機が起きる可能性があると考えているからだと思われる。
とりわけ今年は食料の安定的供給を脅かすさまざまな要因が起きている。
まず新型コロナウィルスの感染拡大。
一部の国では自国の食糧供給を守ろうと農産物の輸出制限に乗り出している。
さらに中国ではこの夏
長江流域を中心にした豪雨災害で農業被害が出ていて
バッタの大量発生による被害が中国国内でも伝えられている。
こうした自然環境の問題に加えて
米中関係の悪化も食料の安定供給を脅かす要因である。
中国では
主食であるコメ・小麦・トウモロコシの自給率は去年は98%とほぼ自給できているものの
食料油や家畜のえさなどとして欠かせない大豆は消費量の85%を輸入に頼っていて
アメリカも主要な輸入国の1つなのである。
米中関係が今後さらに悪化し両国のつながりを切り離す
いわゆる「デカップリング」に陥れば
食料を輸入できなくなる事態も考えられる。
こうしたいわば最悪の事態を避けるためにも
中国としてはまず食べ残しの無駄を省くことで食料をできるだけ国内で自給できるようにしたい。
食べ残しがすぐに減るかどうかは不透明である。
実は習主席は2013年にも同じような重要指示を出して
国民に対し浪費を戒めるよう求めたが十分に徹底されなかった。
中国では大皿の料理を大勢で食べる場合は少し多めに注文することが多い。
またお客さんをもてなす場合も
もてなす側のメンツにかけて食べきれないほどふるまうといった感覚がある。
こうした人々の習慣を一気に変えることは難しい。
習近平指導部にとっては
仮に食糧不足が起き国民が満足に食事を食べられなくなれば
共産党一党支配の正当性をも失う深刻な事態に陥りかねないだけに
何としても防ぎたいはず。
今後はより強制力のある対策を行なう方針で
今回の支持を受けて全人代では
飲食の浪費を抑制するための法整備の検討を始めたと伝えられている。
14億の人口を擁する中国の食糧問題は世界の食糧問題に直結する。
日本としても無視できない問題である。

 

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