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“ナンバー2”が台湾訪問 チェコの中国離れ

2020-09-24 07:00:00 | 報道/ニュース

9月3日 NHKBS1「国際報道2020」


チェコの要人の台湾訪問に
世界が注目している。
(台湾 蔡英文総統)
「我々は圧迫に屈服せず
 勇敢に声をあげ
 国際社会により積極的に関与していく。」
(チェコ ビストルチル上院議長)
「台湾の友情に満ちたもてなしに感謝する。
 今回の訪問が各国にとっての前例になると信じている。」
チェコで大統領に次ぐナンバー2のビストルチル上院議長と蔡英文総統が会談。
(中国 王毅外相)
「チェコの議長は一線を越えた。」
中国は“台湾は中国の一部”とする「1つの中国」の原則に反するとして激しく反発。
国交を結ぶ国々に対して
台湾との政府高官の往来など政治的な交流を認めていない。
今回 チェコのビストルチル議長は90人規模の異例の訪問を行なったのである。
チェコは近年 中国との関係を重視する立場をとってきた。
たとえば2013年に就任したゼマン大統領。
“チェコは中国にとってのEUの玄関口になる”として関係を深めてきた。
それがなぜチェコの上院議長は中国の反発を承知の上で台湾訪問を決断したのか。

(9月1日 台北 チェコ ビストルチル上院議長)
「民主主義の原則を守り
 厳しい条件下で民主主義を築き上げる人々を指示するのは
 民主主義の義務だ。」
チェコの重鎮が中国へのけん制を繰り返すのはなぜなのか。
東西冷戦中
東側陣営の当時のチェコスロバキアでは
ソビエトの影響下で共産党の独裁体制が続いていた。
1968年 民主化運動「プラハの春」が起きると
ソビエトは“社会主義全体への脅威”としてこれを弾圧。
多くの市民が犠牲になった。
チェコ国内でかつてのソビエトと中国を重ね合わせる見方が出るなか
ビストルチル議長は台湾への連帯を示すこんな発言も。
(チェコ ビストルチル上院議長)
「台湾の自由の価値に対し支持を表明したい。
 『私は台湾人だ 我是台湾人』。
 独立した公正な将来を願っている。
 それはあなた方の手の中にある。」
今回の訪問団の中にはプラハ市のフジプ市長の姿もあった。
訪問に先立って取材に応じたフジプ市長は中国への批判を繰り返した。
(プラハ フジプ市長)
「共産主義が崩壊して以降
 チェコは人権とリベラルな価値を力強く支持してきた。
 中国の人権問題に対し沈黙することはできない。」
2016年 北京市と友好都市協定を結んだプラハ市。
一昨年就任したフジプ市長は
この協定に盛り込まれていた「1つの中国」に関する項目を削除するよう中国側に求めてきた。
「1つの中国」の原則を主張する中国は反発。
予定されていたプラハの管弦楽団の中国公演は中止に追い込まれ
友好都市の関係も解消された。
そして中国離れのもう1つの原因が。
(プラハ フジプ市長)
「中国の投資の約束は企業買収に過ぎなかった。
 新たな雇用を生み出すものではなかった。」
2016年 習近平国家主席は中国の国家主席として初めてチェコを公式に訪問。
ゼマン大統領はこの年だけで“4,400億円余の巨額投資が中国により行われることになる”と成果を強調した。
しかしそのほとんどは実現していない。
(プラハ フジプ市長)
「中国の約束は果たされず
 信頼できるビジネスパートナーでないのは明らかだ。」
さらに今回の台湾訪問を後押しする象徴的な動きもあった。
8月12日 チェコの議会の壇上に立ったのは
アメリカのポンペイオ国務長官。
上院議長の訪問に先立ち
共に中国に対抗するよう呼び掛けたのである。
(アメリカ ポンペイオ国務長官)
「中国共産党の脅威に対抗するのはさらに難しい問題だ。
 彼らは旧ソビエトとは違う形で
 我々の経済 政治 社会に深く入り込んでいる。」

ビストルチル議長の「我是台湾人」は
台湾を指示する姿勢を国内外にはっきりと示した発言だった。
実はこの発言は
ドイツが東西に分断されていた冷戦のさなか西ベルリンでアメリカのケネディ大統領が
「私はベルリン市民だ」とドイツ語でのべ
共産主義に対抗し市民に連帯を示した発言を引き合いにしたものである。
ビストルチル議長としては新冷戦とも言われるアメリカと中国の対立を念頭に
“民主主義と自由”という価値をより重視する姿勢を鮮明にしたといえる。
一方 今回の台湾訪問について中国との関係を重視するチェコの大統領や首相は
外交方針に反するとして反対していて
国内でも賛否が分かれている。
ビストルチル議長の台湾訪問は
ヨーロッパ各国の中国との関係のあり方に一定の影響を与えるという見方も出ている。
EUにとって中国は世界2位の貿易相手で重要な巨大市場である。
その一方で
香港国家安全維持法やウイグルやチベットの人権状況などをめぐり
中国への警戒感は強まっている。
今回のチェコの議長の台湾訪問についてもヨーロッパ議会の議員などから支持する声が上がっていて
中国情勢に詳しい現地の専門家は次のように指摘する。
(カレル大学 ロモバ教授)
「今回の訪問は
 中国側の要求に従うことが常に自分たちのためになるのか
 欧州の政治家たちが再考するきっかけになるのではないか。」
今回 中国がチェコに対して激しく反発したことについても
フランスやドイツなど複数の国が
“EUのメンバーの国への脅迫は受け入れられない”と非難していて
今後中国との向き合い方を問い直す動きが広がる可能性がある。
ビストルチル議長の訪問を台湾はどう受け止めているのか。
大きな外交成果という受け止めで
新聞の一面にビストルチル議長の「我是台湾人」という発言を大きく伝えている。
台湾は蔡英文政権のもと中国の外交攻勢を受けて
この4年余で外交関係を維持してきた7か国と断交に追い込まれるなど
苦しい状況が続いていた。
しかしアメリカのトランプ政権は8月
アザー厚生長官を1979年の断交以来最高位の高官として台湾に派遣。
そして今回チェコが国交のない国としては異例のナンバー2の上院議長が訪問した。
米中の対立やヨーロッパなどで広がる中国への警戒感が
台湾にとって追い風となっているのは間違いない。
中国にとって台湾は
絶対に譲ることができない革新的利益と位置づける問題である。
王毅外相が“14億人の敵だ”と述べてチェコの上院議長の訪問を強く非難しているように
今後台湾に対しても一層圧力を強めることは予想される。
これに対して台湾はアメリカをはじめ各国との連携をさらに強めたい考えである。
台湾では9月19日李登輝元総統の告別式があり
そこにアメリカなどからどのような弔問客が参加するかが次の焦点である。
“新冷戦”と呼ばれるほど米中の対立が激しさを増す中で
台湾をめぐる問題は大きな火種となっていて
各国の動きに目が離せない状況が続く。


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