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ブラジル ベーシックインカム「奇跡の町」

2020-09-30 07:00:00 | 報道/ニュース

9月8日 NHKBS1「国際報道2020」


新型コロナウィルスの感染拡大によって世界各地で失業する人が続出している。
今その危機を救うかもしれないと注目されているのが
(Basic Income)  BI である。
年収などに関わらず
政府が全ての人に生活に必要な一定額を無条件で支給する
新しい社会保障制度である。
この BI をいち早く導入したのが
感染者数が3番目に多いブラジルの小さな都市 マリカ。
周辺では雇用が失われていく中で
このマリカでは新規の雇用者数が失業者数を上回っていて
欧米のメディアなどからは「奇跡の街」と呼ばれている。

ブラジル リオデジャネイロの中心部から車で1時間ほどの場所にあるマリカ市。
人口 約16万。
富裕層が別荘などを持つ美しいビーチがあることでも知られている。
街の中心部は人であふれていた。
この市の経済を支えているのが「ベーシックインカム」として支給されている通貨である。
マリカでは街のいたるところで電子通貨「ムンブカ」の利用を知らせるポスターが貼られている。
住民は市から受け取る電子通貨「ムンブカ」をカードや携帯電話で使用する。
(利用者)
「マリカ市のこの試みはすばらしいです。」
マリカでは7年前から貧富の格差解消のため
ムンブカをベーシックインカムとして富裕層を除く人々に支給。
現在は貧困層を中心に人口の約4分の1が受け取っている。
支給額は新型コロナウィルスの感染拡大後に増額され
3人家族なら1か月あたり約1万9,000円である。
人口の半数以上が月2万、1000円以下で暮らすこの市では生活を支える大きな糧になっている。
ビア―ナさん(36)。
市内でネイリストとして働きながら3人の子どもを養ってきた。
しかし新型コロナウィルスの感染拡大以降収入は激減し
今はほぼ収入はない。
そのため食費や電気代などすべての出費をベーシックインカムのムンブカで賄っている。
(ビア―ナさん)
「子どもはおしゃれをしたがる年頃なんですが
 ムンブカで服を買えます。」
マリカ市がベーシックインカムを市が発行する独自の通貨で支給しているのには理由がある。
ブラジルの通貨レアルで渡すと
他の地域やインターネット通販で使われるケースも多くなってしまう。
しかしムンブカは地元でしか使えないため
地域の中でお金が回り
雇用の維持にも役立つのである。
市内にあるスーパーのチェーン店。
月に1度のムンブカの支給日には多くの人が日用品のまとめ買いをしたり
併設されたレストランで食事をしたりする。
同じ系列のリオデジャネイロの店では
売り上げの減少により従業員を3割解雇したが
マリカ市の店では雇用が守れているという。
(店長)
「店を維持するのに役立っています。
 お金が回るようになったんです。」
SNSを使って市民の反応を調査した専門家は
(ベーシックインカムの専門家 ウォルテンバーグ氏)
「市民の大半は肯定的な反応というのが分析結果である。
 ムンブカは地元の商店やサービス業を潤す。」
実はこうした手厚い支給ができるのは
近年 市内で見つかった油田のおかげである。
市ではマリカに拠点を置く石油会社からの税収が急増し
収入の75%を占めるようになった。
マリカ市のベーシックインカムの支給総額は月に約3億円。
市の税収の15%にあたる金額だが
今後さらに支給人数を増やし
2022年には富裕層を除くほぼすべての住民に支給したい としている。
(獨協大学経済学部 本田教授)
「コロナ危機での失業は完全に離職しているわけでない場合も多く
 働いているけれども労働時間がすごく減っているとか
 自営業で失業した人などはそもそも失業保険にすら入っていない。
 しかも失業給付は受け取るのにかなり時間がかかる。
 必然的にそれ以外の救済策が緊急に必要になっている。」
これまでの社会保障は
失業保険 生活保護 年金など
働けない人に支給するというのが基本的な考え方だった。
コロナ禍で収入源の人は失業保険では救済できていない。
ベーシックインカムは
働けるかにかかわらず一律に一定額を支給するため
収入源の人を救済できて経済を回し続けられる。
ベーシックインカムの考え方に基づいた個人への給付は
たとえばスペインやイタリアで低所得者を対象に始められる。
多くの先進国は企業年金が行き詰まっているケースも珍しくない。
そこで発想を変えて
最低限生活していけるお金を皆に支給する方法が
コロナ終息後も有効だという見方も出ている。
(獨協大学経済学部 本田教授)
「おしなべて先進国は長期停滞に陥っていて
 これまでの3%4%5%というような経済成長率はなかなか難しい。
 ベーシックインカムを主張するのは
 既存の社会保障制度では年金も生活保護も十分機能していない
 制度の限界に対する認識が強くあると思う。」
「個人と法人の資産課税 法人税を
 適切な形で引き上げることが求められる。
 さらに既存の予算の組み替え
 地方交付税 公共投資のお金など
 かなりのものがベーシックインカムに移せる。
 他の社会保障を全部ベーシックインカムに移して
 政府の役割を小さくしていくという考え方もある。
 けれども多くのベーシックインカムを主張する人はそうではなくて
 既存の制度を補完したり
 それと共存していくという考え方。」
「格差がどんどん大きくなってきて
 非正規とか外国人労働者とか何層にも分かれて
 不安定な層が増えてきた。
 そうすると賃金の格差もすごくなるし
 社会保障の格差もすごくなる。
 かなりの層がまともな年金まともな賃金を得られなくなってきた。
 国民年金と厚生年金という制度を
 別の形で下から月額数万円で支え底上げしていく。
 そういう形の制度がやっぱり必要なんじゃないかと考えている。」

 

 

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