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フランス コロナ禍から“映画文化”を守る

2020-09-23 07:00:00 | 報道/ニュース

9月2日 NHKBS1「国際報道2020」


6月下旬
映画館の営業が許可されたフランス。
6月22日午前0時のパリ。
日付が変わるのに合わせて映画館には100人を超える映画ファンが詰めかけた。
(観客)
「3か月間 心待ちにしてきました。
 家で見るのとは全く違う雰囲気です。」
出演者も会場に駆け付けた。
(俳優 エマニュエル・ドゥボスさん)
「静寂を乱すポップコーンの音さえ
 今はいとおしい。」
映画館を家族とともに経営する ルイ・メルルさん。
(映画館 共同経営者 ルイ・メルルさん)
「営業ができず本当に苦しい時間を過ごしました。
 大勢の観客とともに再会できてうれしいです。」
フランス政府が管轄する国立映画センターは
映画文化を絶やしてはいけないと
外出制限が始まった直後に映画館に対して日本円で約20億円の支援を前倒しで開始。
ほとんどの映画館が6月
政府の営業許可を受けて再開することができた。
(国立映画センター)
「映画産業全体を支え
 企業の倒産を防ぐことが支援の狙いです。
 最大の困難は
 観客との絆を回復し再び映画館に来てもらうことなんです。」
映画館が再開された後も客足はなかなか戻らず
全国の映画館の入場者数は前年よりも約7割減っている。
営業を続けても採算がとれないとして
夏の間休館した映画館も相次いだ。
メルルさんたちの映画館でも利用客は以前より3割以上減少した。
それでも営業を続けるのは
“伝統を絶やしたくない”という思いがあるからである。
(メルルさん)
「この通りに曽祖父の最初の映画館があったんです。」
映画館は1937年
旧ソビエトからフランスに移住したひいおじいさんのボリス・グルビッチさんがはじめ
メルルさんで4代目である。
1940年ナチス・ドイツがフランスを占領すると
ユダヤ人だったひいおじいさんはアメリカに亡命。
そこで目にした複数の映画スクリーンを持つ映画館に魅了され
戦後パリに戻り
パリで初めての複合型の映画館を起ち上げた。
(メルルさん)
「当時は映画の隆盛期
 テレビもなく
 映像を見ようと思ったら映画館しかなかったのです。
 映画という“遺産”を継承していきたいです。
 金儲けではなく情熱が駆り立てるのです。」
時代が移り変わり
インターネットでも手軽に映画を見られるようになるなか
メルルさんの映画館では
大きなスクリーンで上映する意味がある作品を厳選しているという。
(父親)
「芸術作品は没頭する必要がある。
 テレビ画面より映画館の暗闇がふさわしい。」
新しい客層を取り込もうと
経営が厳しいなかでも若者割り引きを導入。
外出制限中はフェイスブック上での発信にも力を入れた。
さらに感染防止のため対面での会話が敬遠されるなかでも
大切にしているのが観客との交流である。
(メルルさん)
「ステキな作品ですね。」
(観客)
「ええ とっても。」
(メルルさん)
「作品について質問したり議論する。
 若者向けの上映会に力を入れています。
 作品をただ消費するのではなく考えを深めてほしいんです。」
見ず知らずの人が同じ場所に集い
作品を通してつながり合う。
メルルさんは
それがひいおじいさんの時代から続くフランスの伝統だと考えている。
(メルルさん)
「映画の喜びが戻りつつあります。
 映画館は感動を分かち合う場なのです。
 映画館を信じていなかったらやめています。
 再び活気が戻ると確信しています。」



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